リトルレジェンドの闇
王様は言った「彼に石を投げつけなさい」
「嘘をついたことのない人だけ」
民衆は黙っていたけど 僕だけは知っているんだ
本当の嘘つきは王様だってことに
女神は言った「彼に矛を突き立てなさい」
「真実の愛を知る者だけ」
人々は黙っていたけど 僕だけは知っているんだ
女神の口にする「愛」なんてチープだってことに
僕は本を読んで育った
社会を覗く窓は 古びた表紙の物語だけだったけれど
人を見る目は持っているつもりさ
その僕が言うんだ 間違いない
神様は嘘つきだ
スーパーヒーローは世界を救いやしないし
スーパーヒーローは弱い者のために戦いはしない
ヒロインはいつだって純情とは限らないし
自分の欲望だって持っているものさ
ただね
そうやって 斜に構えてみせたって 僕の胸は満たされないんだ
女王は言った「彼を槍で一突きにしなさい」
「悪口を言ったことのない者だけ」
聴衆は黙っていたけど 僕だけは知っているんだ
女王は陰で人の悪口ばかり言ってるってね
大統領は言った「彼を地獄へ突き落しなさい」
「自己犠牲の魂を持つ者だけ」
大衆は口をつぐんていたけれど 僕だけは知っているんだ
その自己犠牲とやらのお陰で 戦争は起こるってね
僕は音楽を聴いて育った
世界を映す鏡は ミュージシャンの汚れた背中だけだったけれど
人を見抜く目は持っているつもりさ
その僕が言うんだ 間違いない
神様は人を裏切る
スーパーヒーローは悪人をやっけやしないし
スーパーヒーローは貧しい者のために戦いやしない
ヒロインはいつだって純粋だとは限らないし
自分の欲望に忠実なだけかもしれない
ただね
そうやって 邪な目を持ったって 僕の魂は癒されないんだ
今夜 君に会いに行こう
街頭が照らす道は 必ずしも天国には続いていない
ロマンティストなのは 僕の悪い癖だけど
そう人を傷つけてもいないはずさ
今夜 君の笑顔を見に行く
コートが包む身は 必ずしも美しくはない
感傷的なのは 僕の悪い癖だけど
煙草の煙ほど 害にはならないはずさ
君を抱きしめた両手で 僕は世界の嘘を背負い
君に口づけをした唇で 僕は世界に愛を語る
救世主気取りでもないけれど
誰かが世界を変えなきゃね
君を抱き寄せた両腕で 僕は世界を裁く
君に接吻した唇で 僕は世界に愛を説く
救世主気取りでもないけれど
僕は世界を変えるつもりさ
そして そうやって そう口にしながらも
僕は知っているんだ 今この一瞬にも
僕は 闇へとただ堕ちていくってね