誰もが望む恋の始まり方とその後
霞台……朝霞台
僕の降りるべき駅のアナウンスが流れ慌てて僕は起きた。そして寝ぼけながらも立ち上がり、電車から降りた。この時の僕には乗り換える、としか頭が働いてなかった。ぼくはその脳の指示通り電車を乗り換えようと人混みを掻き分け移動した。
あと少しでホームへとつながる階段というところで足が止まった。誰かに肩を叩かれたのだ。突然のことであまり動いてなかった脳が完全に止まってしまった。
「落としましたよ。」
その声は早口だったが彼女がとても落ち着いている性格だとわかるもので大人の余裕を感じた。そして後ろを振り返ると声のとおりで見た目は20歳ぐらいだがスーツをしっかり着こなし何事にもぶれないという意思が奥底にあるような雰囲気があり真っ直ぐにぼくをみてなにかを渡してくれた。
ぼくはその何かより彼女の方が気になってしまっていた。長く艶のある髪を後ろで束ね、整った顔立ちで特徴的な大きな目をしていた。その特徴的な目で見られたら間違いなく男性は一瞬で恋に落ちるだろう。それは僕も例外ではない。そう、僕は恋に落ちてしまったのだ。しかし恥ずかしさで目を逸らしている間に彼女はいなくなっていた。僕には手に残った定期券と礼を言えなかった後悔を忘れることができずその後通学毎に彼女を探した。しかし見つかるわけがなかった。