みんな強奪系スキルだったので協力して生きていこうとおもふ
はい、死んだー
転生だー
どれでも好きなの選べー
チートスキルじゃー!
当然俺はあれだー、スキル強奪能力貰っとくわー
おいしく育ったスキルを有り難く頂戴する
そんなイージーモードがしたいんじゃー。
小悪党を無力化して感謝されまくるんや!
おお、そうかそうか。
では頑張って異世界で生きて行くんだな。
あいやー、ありがとさん。
・・・あの時の俺に言ってやりたい。
それは軽率であったと。
最初は森の中であった。
「お?トリッパー発見」
躊躇いなくスキル発動。
よこせ、お前のチカラを・・・
― ビービッ!
【取得出来るスキルを所持しておりません】
それは俺の目の前で表示されていた。
「あー、なんだよ。
こいつスキル持ってねえじゃん」
生意気そうな子供が背後で喚き散らしていた。
「あーあ、つまんな。
他の奴からもらおーっと」
俺が怒気を上げるよりも早くソイツは茂みの奥へと消えていった。
するとその間、先ほどの声に反応してか、
俺が背後を取っていた男がいつの間にか目の前に立っていて・・・
「―ッ、しまった?!」
そして男はこう唱えた!
「強奪、発動!」
― ビービッ!
【取得出来るスキルを所持しておりません】
・・・お前も強奪スキル選んだんかいっ!
どうやらいきなりスキルが被ったらしい。
しかも二人。
「あ、あれ?どうして??」
目の前の気が弱そうな男はうろたえている。
メンチを切ると素っ頓狂な声を上げて林の奥へと消えていった。
「ふんっ、他愛ない…」
幸先が悪いが俺とあいつらを除きあと27人もいるんだ。
焦らずにほかのトリッパー を探すとしよう・・・
― しかし、その予定はすぐさま崩れ去る。
森の中で男たちは声を荒げて争っていた。
「どういうことだよ!?」
一人の青年が中年の男の襟に掴みかかる。
「落ち着けよ、おい」
「これが落ち着いていられるかよ!」
顔を合わせて1時間ばかりの、未だ初対面と言ってもいい集団の連中は
しかし共通する問題に頭を悩ませていがみ合っていた。
「強奪スキル持ちしかいないとか、この先どうやってやっていけばいいんだよ?」
そう、転移者の中には強奪スキルを持った者しかいなかったのだ。
強奪スキルは強奪不能・・・
たとえ強奪できたところで相手の優位をそぐ以外には、己のスキルスロットの肥やしにしかならない。
だからこそ、男たちは強奪以外で有効なスキルを探し求めていた、だというのに―ッ
「いいか、もう言い争っている場合ではない。
既に8人死んでいるんだ、俺たちは強力してこの森を抜け出すべきだ」
別に強奪対象は転移者に限らない。
だが、強奪しか持たぬ地球基準の非力な男たちは異世界ではあまりに脆く、儚かった。
ある少年はスライムに強奪を仕掛けたが、瞬く間に飲み込まれて消えてナクナッタ。
ある中年はマンキーに強奪を仕掛けたが、成す術なく弄ばれてミソをブチマケタ。
ある壮年はヤンキーに強奪を仕掛けていたが、転んで頭をぶつけウゴカナクナッタ。
そんな感じで転移者数名は既に異世界から退場している。
彼らは使い道のないスキルを抱えているだけの烏合の衆にすぎない。
このままでは夢にまで見た異世界生活は夢のまま、誰もが露と消える運命だろう。
どうしてもそれだけは避けたかった。
・・・だが、それは叶わない。
「うるせぇ、自分可愛さで強奪を選ぶような連中と一緒に行動できるかよ!
俺は一人でこの森を出る!」
そうだ、この森で集まったこの集団の誰もが同じ穴の貉。
いつ寝首を掻かれるかも分からぬ状況で、利己主義な連中を脇に抱えておけるほど
寛容な連中はこの場にいない。
だからこその強奪スキルの選択だったと言える。
だからこそ誰も信じていけぬ。
故に青年は森の中に姿を消していった。
俺はただ異世界で活躍できることを夢見ていただけなのに、どうしてこうなってしまったのだろう。
ああ、こんなことなら強奪以外の、なんでもいい。
武芸でも文芸でも、何か役に立つスキルを選んでおくべきだった。
― ほどなくして青年は、森の中で虫に刺され、疫病にて息を引き取った。