アロハ・シャツ
状況を整理するために、近くのファミレスに入ることにした。
なぜか人数分のドリンクバーを準備させられた俺は、席に着いて一息ついた後、二人から話を聞くことにした。
黒髪を肩口で揃えたリクルートスーツの女【ピーチ・バレンタイン】(今はアロハ・ガウディに寄り添うように座席に座っている。)
魔法使いのような髭を蓄え、黒のシルクハットを被っているにも関わらず、不似合いなアロハシャツを着た老紳士【ガウディ・リスト】(どういうわけか同じ顔をした同名の人物がいるため、便宜的にアロハ・ガウディと呼んでいる。)
「で、あんたらは何者なんだ?」
俺は率直に尋ねることにした。
「ホントにてめぇは何にも知らないみてぇだな。別に説明してやる義理はねぇが、だ~りん(ハート)に免じて説明してやる。」
ピーチは、アロハ・ガウディに惚れているらしく、俺とアロハ・ガウディとで態度が圧倒的に違う。目つきまで変わっているから器用なもんだ。
「トーナメントが行われている。主催者は不明だが、目的ははっきりしている。主催者に選ばれた50人のマスターは「人造人間ガウディ」をパートナとし、自分の好みにカスタマイズを行う。あたしのガウディなら体の部位を切り離して発射するとかな。そして、このサイゼ―タウンを舞台に、最後の一組となるまで殺し合いをするんだ。」
「人造人間って。。。」
「信じられないのも無理はないが、実際に見ただろう?」
確かにロケットパンチだとか(不発だったが)ロケットヘッドとかを思い出すと否定ができなくなる。
「それで、主催者ってのの最終的な目的は何なんだ?」
「新兵器の開発だ。戦争に投入する兵隊として人造人間の研究が進んでいるが、その人造人間を殺戮マシーンにするために、どのカスタマイズが最も有効かを調べることだな。」
新兵器とか殺戮マシーンとか、にわかには信じられない。
「まぁこれはあくまで主催者側の都合だ。あたしたち参加者は、自分のカスタマイズが殺戮マシーンに採用されることによって、印税を受けることができる。殺戮マシーン1体につき500万円。最終的に何体製造されるかはわからないが、仮に100体製造されるだけで、5億円だ。魅力的だろう?……まぁあたしのガウディは破壊されちまったから、棄権するしかないがな。」
「その50人ってのはどうやって決められたんだ?あんたらの言い分じゃ俺も参加させられているようだが。。。」
「50人をどうやって選別したのかは知らねぇが、2週間くらい前にガウディが現れて、トーナメントの説明を受けた。参加するかしないかの選択権はあたしたちにあったが、まぁ不参加にする理由はないわな。」
「確かにガウディと接触はしたが、俺は昨日の話だ。しかもトーナメントのことなんて聞いていないぞ。」
俺はアロハ・ガウディに説明を求めるために視線を向けた。
「マスター。申し訳ございません。忘れていました。」
少しはにかんで(気のせいかもしれないが) アロハ・ガウディは答えた。
「もっとも、、、」とピーチが続けて話をする。
「てめぇにしろ、だ~りん(ハート)にしろ異質なんだ。本来なら2週間前からトーナメントが始まっているにも関わらず、今頃になって参加していることだけでもおかしいが、あたしのガウディはお前のことをNo.51と呼んだ。おかしいよな?参加者は50人のはずなのによぉ。」
「それに…、ガウディっていうのは、明確に服装が決まっているんだ。初期段階ではジャージだが、ほかのガウディを一体破壊するごとに、ポロシャツ、スーツ、スリーピース、マント…と進化していくんだが、アロハシャツなんて服装は存在しないんだ!!」
正直、俺にとってはアロハシャツはどうでもいいが、ピーチにとってはよっぽど重要なことらしい。
そのあともいろいろと説明をしてもらい(意外にもピーチは説明が好きなようだ。特にピーチが就活生で教師を目指していること、ガウディは参加者以外には見えないことなどを教えてもらった。)、いよいよ核心に迫る質問をする。
「それで、俺はどうしたらいいんだ?」