ドッジ・ボール
「は?」
俺は全く理解できなかったものの、かろうじてロケットパンチを躱していた。
学生時代ドッジボールで鍛えた反射神経が役に立ったようだ。
だが、思考がついてこないのは仕方ない。だって普通、老人の腕は飛ばないだろう?
ガウディの腕は肘から下が外れており、断面は(細かい描写は避けるが)ぐじゅぐじゅしている。
そしてピーチの「次弾装填」の言葉を受けて、ガウディの断面から、ぐじゅぐじゅがぐじゅっぐじゅっと腕の形に形成されていく。
相変わらず思考はついてこないものの、何かやばいことはわかる。
「なんじゃ、こりゃーーーーーーーーー!!!!!!」
叫びながら、逃げることにした。
「逃がすかよ!ガウディ、ロケットパンチ!」
二発目のロケットパンチは俺の足元を狙っていたが、うまく外れてくれた。しかし、地面にあたった腕はアスファルトを抉るように突き刺さっている。
「どんな威力だよ!!」
周りの通行人がパニックを起こしてくれたことで、2回目の「次弾装填」の前に交差点を曲がりビルの陰に隠れることができた。
「なんなんだ、あれは。。周りのやつらはいきなり地面が抉れたとか言ってたし、見えてないのか?」
「てめぇ、本当にマスターなのか?」
呼吸を整えるために止まっていたところをすぐに追いつかれてしまったようだ。
「マスターってのは何なんだよ!!」
何とか逃げる隙を作るために会話をすることにした。
「さっきからマスターとか呼ばれるし、周りにはガウディが見えていないようだし、わけわかんねぇよ!!」
「ガウディを知ってる時点で関係者だろうが!!てめぇのガウディはどこにいる?確かにマスターを殺すだけでもアピールにはなるが、やっぱり敵のガウディをぶっ潰すほうがポイントが高ぇはずだ!」
「だから、意味わかんねぇっつーの!俺は関係ないんだよ!頼むから見逃してくれ!」
「男のくせにがたがた言ってんじゃねぇ!あたしは弱い男が大っ嫌いなんだよ!!もうどうでもいいからぶっ殺してやる。ガウディ、ロケットパンチだ。」
ピーチの斜め後ろで待機していたガウディは右腕を挙げると俺に向けてロケットパンチを発射してきた。
「うわー!誰か助けてくれー!!!!!!!!」
恐怖のあまり目をつぶって叫んだ俺は、いつまでたっても「その瞬間」が来ないことに疑問を覚え、恐る恐る目を開けた。瞬間、信じられない光景を目の当たりにした。
「マスター。ご命令を。」
アロハシャツを着たガウディが、ロケットパンチを掴んで止めていたのだ。