1/7
ガウディ・リスト
印税生活に憧れている。
はじまりは些細なことだった。。。
-10年前-始めりの街「サイゼータウン」
「君も印税生活を始めてみないか?」
ガウディ・リストは俺にそう言った。
ガウディとは、さっき知り合ったばかりの老紳士だ。まるで魔法使いのような髭を蓄えているが、何故かアロハシャツを着ている。
先ほどトラックに轢かれそうになっているのを助けたのだが、お礼をしたいと言われたため、飯を奢らせているところだ。
「印税生活?」
あまり聞き慣れない言葉だ。俺は聞き返した。
「そう、印税生活。いわゆる権利収入と言うやつだ。イメージしやすいのは、例えば、アーティストの音楽収入とかだな。何もしないでもお金が入ってくる。」
「なるほど。だが、俺には大した才能はないし、そんなものを貰えるような立場じゃないな。」
俺はそっけなく答えた。
「そうか。じゃぁこの話は忘れてくれ。」
ガウディはそう言うと席を立ち、そのまま店を出ていった。
「印税生活か…。」
俺はガウディの言ったことを反復し、
「俺には関係ないな。」
呟いたあと、ガウディが会計をしていないことに気付き、バレないように店を出た。