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あの日の誓いを忘れない  作者: 青空顎門
第三話 夕星那由多は恐れがない
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「一番上の兄上が、間もなくこの世界の視察に来るそうだ」


 テレジアのやや強張った物言いにゲベットとアンナは言葉を失った。

 それ故、少しの間ヴェルトラウム城謁見の間を沈黙が支配し、それはゲベットが何とか自失状態から脱して口を開くまで続いた。


「つ、ついに、その時が?」

「ああ。さっき、爺から連絡があった」


 テレジアは目を閉じて感情を排するように淡々と告げる。


「と言うことは――」

「うむ。その結果如何では……父上が来る」


 しかし、それを口にしたテレジアの表情は強張っていた。


「知っての通り、父上は厳格という言葉では言い表せない程強硬的な実力主義者だ。弱者は強者に従うべしという理念を貫き、それに従って数多ある異世界を侵略している」

「はい。存じています」


 ゲベットは心を無理矢理に落ち着かせて静かに頷いた。

 対して、アンナは未だに呆然としつつ無意識にゲベットに寄り添っていた。


「とは言え、それこそ無数にある世界に対する侵略だ。父上一人では手が足りん。故に主に自らの子供に、つまりは我が兄弟姉妹を送り込み、その足がかりとしている訳だ」

「〈魔導界ヴェルタール〉の名に相応しく、魔法の力を用いて、ですね」

「そうだ。しかし、世界を繋げば〈ヴェルタール〉の特色たるマナが流入する。結果として本来魔法のない世界に魔法が生まれ、〈ヴェルタール〉の者への反抗の力となる訳だ」


 この地球の現状に鑑みながらゲベットは首を縦に振った。


「となれば、中には反乱を起こされ、討ち取られる者もいるし、侵略が容易に進まないといったことも往々にしてある。当然、兄弟姉妹同じ人間ではないからな。能力そのものの差、相性、運、様々な要因がある。しかし――」


 テレジアはそこで一呼吸置き、さらに硬い口調で続けた。


「父上は実力主義者であると同時に、結果が全てという人間だ。いかなる理由であれ、侵略を速やかに遂行できない者は実力がないと判断され、容易く処分されてしまう」

「自分の子供なのに?」


 アンナが小さく問う。理解できないからではない。親が無条件に子を愛するとは限らないことぐらいは、彼女自身も身を以って知っている。

 それは、だからこその両親への侮蔑を含めた確認の問いだった。


「あるいは、自分の子供だからこそ、なのかもしれないがな」

「どういうこと?」

「我が兄弟姉妹がどれ程苦戦していた世界であろうと、父上が自ら出張ればほとんど一瞬にして片がつく。実力主義は正に己の力に裏づけされている訳だが、だからこそ、そんな自身の血を引く者は力があって然るべきと考えているのだろう」


 つまり、それが果たせない者は己の子ではない、ということだ。


「力こそ全て。それは確かに世の理だが、父上の考えは少しばかり窮屈だ」

「……だからと言って、徹夜でゲームは奔放が過ぎますけどね」


 テレジアはゲベットのからかいに一瞬だけ表情を緩めたが、すぐさま引き締め直した。


「それも今日までだ。父上に現状が伝われば、どう判断されるかは分かり切っている」

遊び(Das Spiel)は終(ist)わり(aus)

「そうだな。もはやモラトリアムは終わりだ」


 そう固く告げたテレジアにゲベットとアンナは深く頷いた。


「テレジア様のため、そして、己自身のために」

「何があろうともお兄様と共に、テレジア様と共に」


 自身の心を真っ直ぐに告げる二人に対し、テレジアもまたゆったりと頷き返した。


「私と、私の大切なお前達のために、私もまた身命を賭そう」


 そして、万感の思いと共に静かでありながら、力強い声で告げる。

 それは普段のテレジアとは大きく異なり、世間一般が持つ彼女に対するイメージに少し近い、威厳に満ちたヴェルトラウム城の主としての姿だった。


「さあ。私達の本気というものを、見せてやろう」

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