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玉祈征示は決して忘れない。初めて誰かに必要とされた、あの日のことを。
「お前、私の家来になれ」
その言葉は光だった。
それは心を闇に閉ざしつつあった征示を照らし、今尚照らし続けている。そして、これから先何があろうとも、その輝きが消えることは決してないだろう。
「お前には才能がある。だと言うのに、見る目のない連中の言葉に惑わされ、自分で自分の才能を摘み取ろうとしている。分かり易い多数決の価値観に囚われるな」
彼女の存在は道標だった。
目の前の道が途切れ、途方に暮れていた征示に数多の道があることを教えてくれた。
別の道を行くことで途切れた道の先に辿り着ける可能性があることもまた。
「もう一度言うぞ。私の家来になれ。私にはお前が必要だ」
その言葉にどう答えたかは少し忘れたい。
喜びの気持ちが涙となって溢れ、言葉も声もグチャグチャだったから。
「ならば、私の名に誓え。二度と自分を卑下したりしないと。そして、その力を私とお前自身のために使うとな」
玉祈征示はこの日の誓いを忘れない。
誓いを立てた征示を見詰める彼女の優しい微笑みもまた、いつまでも忘れない。
