フラワー症候群
「桜の樹のしたには肢体が埋まっているそうだよ」
怖いよね、でも納得できるよ。俺の幼馴染の愛花は、病室のベッドに座って、手鏡と仲良く睨めっこをしていた。
「桜って、あんなに綺麗じゃない。だから、その美しさには犠牲が伴っているんじゃないかって」
「そんなわけないだろ、実際に埋まってきたら犯罪だし、しかもそれ、梶井基次郎の詩だろ」
「夢がないなあ」
文系のくせに、と愛花。
理系のくせに非科学的なこと言うなよ、と俺。
「非科学的って……そもそも、今の流行病は医学的どころか生命科学的に、物理的にありえないものなんだけど」
愛花は手鏡を見ながら確認するかのように手で右頬に触った。
「ああ、もうこんなになっちゃったか」
そこに、人間の肌の柔らかさなどない。草花特有の硬さがあるだけだ。
愛花の身体は、病に侵されている。
いや、正確には、草花に侵されている。
愛花は右半身のほとんどが今、草花に覆われている。決して飾りではない。これは、愛花の身体から生えているのだ。
愛花のかかった病気。難病。奇病。正式名称はあった気もするが、いかんせん長い名前であり、そもそも根っからの文系である自分には医学の世界も知識も遠かったため、正確に覚えられなかった。長い名前のせいで世間には覚えられにくく、ほとんどの人がこの病名を俗称として「フラワー症候群」と呼んでいる。
フラワー症候群は三年ほど前に始めてその存在を確認されて以来、世界で爆発的に広まっている。
これにかかると、人は全身から花や草を生やし、それが生命活動を邪魔し、最終的には全身に転移する。体の表面には目に見えて緑が生い茂り、更には神経や内蔵なども侵す。そうなると肺に生い茂ってしまえば気管がつまったり、食道を侵せば食事ができなくなる。さらに、この花たちは発症した患者の、生命を養分とする。
愛花がフラワー症候群にかかってから半年ほど経つ。発症者にしては長く生きている方だ。其の間、草花はじわじわと愛花の肉体を蝕み続けているのも事実だが。
「ねえ、メーちゃん」
「メーちゃんって呼ぶな」
愛花は口元に弧を描いて笑ってみせた。
昔から、彼女は俺の名前を女みたいなあだ名で呼んでいる。
「命」と書いてミコト。それが俺の名前である。俺を産んでまもなくして死んだ体の弱かった母が、長く生きて命を尊重してほしい、という願いのもとつけたのだ。
「メーちゃんはノリが悪いなあ」
「ノリ以前に、プライドの問題だ」
「メーちゃん」
「おい」
いくら制しても、彼女は喉を鳴らして小さく笑っている。
昔はもっと大きな声で、女らしさのかけらもなくゲラゲラと笑うやつだった。花のせいで声を出すのもきついのか。
「メーちゃん、私、いつ死ぬかな?」
昔はこんな、残酷なことを言わないやつだった。
「メーちゃんは変わらないね」
「お前が変わったんだろ」
「ごめんってメーちゃん。そんなに怖い顔しないでよ」
「させたのはお前だろ」
「だから、ごめんって」
愛花は悪びれたように言った。
昔はこんな、顔をするやつじゃなかった。
愛花の手に花が咲いた。濃いピンク色の花だった。
たしか、これは、ハマナス。
父は普段家事を滅多にしない。いや、自分に関することに対して頓着がないというべきか。もともと母がいないからか、自分の身はすべて俺のため、生活のためにあててきた。仕事人といえばいいのか、しかし仕事人であっても俺の面倒を見ることを放棄しなかった。
それも、三年前に変わった。
ちょうど、フラワー症候群が流行り始めた頃だった。
父は滅多に家に帰らなくなった。
仕事にいつも以上に没頭していた。
前までは俺がしていたことも自分でするようになり、もとの雑さ故か、生活面は悪くなる一方だった。
なのに、部屋には似つかわしくない花が大量に飾ってある。世話もろくにしないのに枯れないのが不思議だった。たまに世話をしに近寄るが、腫れ物のように扱うだけだった。
「命」
父は独り言のようにいう。
仏壇にいつも父はブツブツと独り言を言うので不思議な光景ではない。
「生命ってのは……怖いもんさ」
だけど、
「美しいもんだと思う、思いたい」
同じことを入院してる愛花も言ってたぜ、と言ったが父には届いていなかったようで、何もなかったようにまたブツブツと何かを言っていた。早口で小声だったので聞き取ることはできなかった。
そういえば、愛花には小学生の時に妙な噂が付きまとっていた。霊感があるとかそんな感じだった気がする。本人に聞いてみたら、
「ある人はあるんじゃないかな?」
と咳払いをしながら言った。答えを明確にしなかったから、悟られたくない何かがあったのだろうと解釈し、何も言わなかった。
「仮に、あると言ったらメーちゃん、君は私に何を言った?」
「まあ、じゃあ今は幽霊はこの空間にいるのかとか、そういうことだろうな」
「いかにも小学生の言いそうなことだね、自分じゃ分かりもしない現象を一々言わせるなんてさ」
言わせたくせにこの言い草はひどいと思う。
「メーちゃんは変わらないね」
「頭が小学生レベルだってか?」
「私と同い年のメーちゃんなら、今頃は大学三年生だよね。なのに小学生って……」
やめろ哀れんだ用に俺を見るな。
「さて、冗談はさておき」
「冗談のつもりだったのか」
クスクス、と愛花は小さく笑ったあと、また咳払いをした。
入院のせいで大して手入れがされていないが、生来の漆黒の髪の毛が体の微々たる震えで、はらりと落ちる。
それと同時に体に生えていた草も数枚落ちた。
「メーちゃん。目に見えないものなんてね、どうやって証明していいのか分からないものだよ? むしろ証明なんてされたら、それこそこの世の均衡が崩れそうじゃないか」
「この世の均衡? なんだか壮大な言い方だな」
「考えてもみてよ。絶対当たる占いなんてあってほしいと思う?」
「なんだかいやだな。占いなんて運試しみたいなものだろ」
「そういうこと。それが政治経済に絡んでみてよ。国は運に任せてるんだよ?」
「そのうち滅びそうだ」
「世界史習っていると分かるけど、そういう国は昔はあったんだけどねえ」
「大昔のことだろ」
結果論だが、結局は滅んでいるんだ。
運なんて目に見えないものに頼ってしまうからそうなったのだと思っている。
愛花は咳払いをしてから話を続けた。
「大昔でいうなら、占いで政治を行っていたんだ。神権政治ってやつかな。だから壮大なのさ」
そう言い終わってからまた咳払い。
「メーちゃん。考えてもみなよ。目に見えるものがすべてではないだろ?」
まるでその言葉がすべてとでも言うように、満足そうに言った。
俺が嫌いな表情だった。
昔と変わった表情。
昔は浮かべなかった表情。
まるで、最期を悟ったような、諦めの表情。
愛花がうめき声をあげた。
何事かと思った次の瞬間、愛花は座っていられなくなり、ベッドの上で身を屈めた。そして、ミチミチミチッと何かを突き破るような音と、愛花を覆っていた草花の中から生えたひときわ大きい枝の姿が、耳に、目に入った。
愛花の口から叫びにならない悲鳴が漏れる。
「愛花!」
「触るな!」
愛花は息を荒くしながら怒鳴った。
その間にも枝は成長し、愛花の体を蝕んでいく。
止めようがなかった。止まりようがなかった。
愛花の手がナースコールに届いて、カチカチと必死にボタンを押した。
「やっぱり、さ、死ぬのは、さ、こわいよ」
愛花はなおも成長を続ける草花に悶えている。
「だって、さ、わ、私も、まだ、若いしさ、こ、な、病気、苦し、しさ」
「愛花……もう、いい」
「でも、ましかな、て、さびしく、なくなるかな、て」
「もういいから!」
「だ、て、花になるん、だし」
綺麗な花になるんだから。
「いのち、は、うつくしい、よ」
バタバタと急ぎ足で看護士や医者が駆け込んでくる。
愛花はなんとか蝕まれていなかったはずの半身が、今や左半分の顔面を残して殆どが草花に覆われてしまった。
こうなってしまえばもう、愛花は長くない。
あと数時間で死ぬ。
何人もそうだった。
「メーちゃん」
最後の言葉のように、愛花の言葉が俺の頭の中に入ってきた。
「メーちゃん、うつくしかったよ」
愛花の左胸に、赤い薔薇が咲いた。それを最後に、俺は病室を出て行った。
長年の幼馴染の死は、受け入れがたかった。
もう、あの病室に通うことはないだろう。
愛花は、死ぬ。
死を受け入れろというのか。
無理だ。
無理だ、できない。
どうしようもなくやるせなかった。
何もできない自分が嫌になった。
俺は結局なにもしてやれなかった。それどころか、拒まれた。
生命を糧にした花たちは確かに美しかった。
あの鮮やかな赤色の薔薇を見たことはなかったし、これからも見ることはない。
人体から生えた草花は生き生きと茂っていた。おそらく数年は枯れないだろう。土台が栄養豊富だから。
愛花。
愛花。愛花。
愛花。愛花。愛花。
「死ぬのかよ……」
ふらふらと病院内を彷徨う。
家に帰ろう。親父が帰ってきているか知らないけれど、愛花のことを話そう。
何かを吐きだしたい。
すべて出し切ってしまいたい。
その思いがまるで駆け巡るように体を支配していく。
「ねえ、あの女の子」
「ああ、愛花ちゃんね」
ナースステーションの近くで、愛花の名前が挙がっていたのを気にして看護士同士が、周りに誰もいないことをいいことに話をしていた。
思わず聞き耳を立てる。
「発症してから、進行具合からしてだいぶ持ったほうだったんだけどね」
「でも、いつ悪化してもおかしくないって話だったじゃない」
なんだよそれ、聞いてねえよ。
同情のように、憐みのように聞こえるその言葉にいらだちを覚える。まるで他人事のように言いやがって。流行病なんだ、いつ自分がかかったっておかしくないのに。明日は我が身だろう。
「最近はあの子、独り言増えていたじゃない」
「幻覚とか幻聴とかも出ていたっていう話よ。私、前あの子の部屋の前を通ったら、誰もいない部屋で笑い声をあげて誰かと会話するみたいに話しているの、聞こえたのよ」
「やだ、まるで幽霊が見えてたみたいじゃない」
「病院だからありえそうだけどね」
聞いていられなくてその場を去った。
その後、無我夢中で走ったことしか、覚えていなかった。
気づいたら自分の家の中だった。
愛花はどうなったんだろう。その思いだけで苦しくなる気がした。
時間も覚えていないから、愛花の容体が悪化してから何時間たったのかも覚えていない。
愛花の死。
幼馴染の死。
俺には大きいものだった。
守りたかった。守ってやりたかった。
家に飾られた花が綺麗に咲いている。
何の変哲もなかったはずの草花に、変化があった。
ぽつぽつと、小さな、紫色の花が、つぼみから開いていた。
「ミヤコワスレ……」
別れ、か。
こんなときに見たい花ではなかった。
涙は出なかった。悲しみはあった。喪失感もあった。しかしどこか懐かしいような、不思議な気持ちがした。変な感覚だった。
「……命」
いつの間にか親父が帰ってきた。
憔悴しきった顔だった。
「お前の幼馴染の、あの、愛花ちゃんが、いましがた、息を引き取った」
知っている。
彼女の急激な悪化を、見たばかりだ。
病院を出た時はまだ明るかった外が、今は真っ暗だ。
そんなに時間がたっていたのか。
「悲しいことだ……また、フラワー症候群の犠牲者が出てしまった」
部屋に飾ってあったあの花たちが一斉に変化した。
次々と、色とりどりの花々が咲き始めた。
白くて小さな百合の形のような花。あれはたしか、ハナニラ。
肉質を持った花をつけた、黄色や橙の花。あれはたしか、アロエ。
赤、橙、桃色、白の菊の花。あれはたしか、ガーベラ。
紅、紫、青、白の小さな花々。あれはたしか、クジャクソウ。
ああ、そうだ、あんな感じだ。
あんな感じで全身に花が咲いて、命を吸い尽くされた。
愛花のあの達観したような、どこか諦めたような、最期のあの目を思い出す。
あの目も、いまや草花の栄養分と成り果てた。
「命、それと、いまさらだがな、フラワー症候群について、わかったことがあった」
親父はさっきの、愛花が亡くなったと告げた時とは違った声色でそう言った。
なんだよ、それ、もう、手遅れだ。
愛花という感染者はもう、死んだ。
彼女だけはと思っていたのに、死んでしまったのだ。
「フラワー症候群はたしかに病気だ。流行病で、感染しやすい。でもな、未だに死者は出していないんだ」
は? と、俺は身が凍る思いをした。
「正確に死んだ状態がどういうものなのかはまだ分からない。が、今、立証されていることだ。体のありとあらゆる器官を植物が覆い、人間の体は生命活動を停止する。だがな、それでもまだ、未だに、三年前に初めて感染した人間の体からは、新しい花が咲き続けているんだ。その花や草や、時には木の枝はな、一度も枯れたことがないんだ」
うっそうとした森林の中で見られる光景なのだが、枯れて命が尽きた大木は、もちろん自然界で放置される。立ってもいられないから倒れている。生命活動もしていない大木はそのまま腐り果てていくのが運命なのだが、その大木の体から、新しい木が生えるのだ。その大木から栄養を取っているのだ。
この前愛花が言っていた、桜の木の下に肢体が埋まっている、という言葉を思い出した。
ただの迷信や嘘の言葉なのだろうが、そこから連想される、死体から生命のエネルギーを吸い取って美しい桜へと成長すること。
同じだ。
大木も、肢体も、フラワー症候群感染者も、同じだ。
「まあ、それでも思考は停止しているし生命活動もしていない。だから死んでいるも同然なんだがな、」
だけど、と親父は続けた。
「今、初めて、見たんだ。その栄養の土台となった感染者の体から出ている花が、しっかりした意味を持ったものなんだってことを」
は、は、は、と、親父は狂ったように口を吊り上げ音を漏らし、笑った。
「第一感染者の体から生えた花、ミヤコワスレ! 花言葉は『別れ』! 昨日までは咲いていなかった! そして今咲いたのは、ハナニラとアロエとガーベラとクジャクソウ! 共通する花言葉は『悲しみ』! これはつまり、お前の心を意味しているんだ! そうだろう、命! お前は、第一感染者であるお前は、親友の愛花ちゃんの死が悲しかったんだろう!? だからだ。そうだ、だからお前の肉体から感情と一致した花言葉の花が咲いているんだ! お前、母さんの書庫を覗いただろう? 母さんは花が大好きだったからな! お前が感染するちょっと前、お前は母さんの思い出の品がないか気まぐれで探していたときに花言葉図鑑があったのさ、それをずっとお前は読んでいた、だから花言葉をある程度知っていてもおかしくない! 命、命、今ここで立証された、お前はまだ、肉体は手遅れだが、そこにいるんだろう!? なあ、命!」
親父は感情が昂ぶっていて、両手を天に挙げていた。
手から、ひときわ小さな、ピンクの花がぽつぽつと咲いていた。
エリカ。ジャノメエリカ。孤独。
自分が死んで、三年後に愛花が死んで。次いで親父も感染して、見ていられなくなって町を去って。
あれから何年経っただろう。
あれから何十年経っただろう。
親父の言っていた感染者は死んでいないという言葉はある意味正解だったかもしれない。
人の心が死んでいなかったら死んだことにはならない、という宗教的な、哲学的な考えのもとで、なのだが。
しかし生物学的には、あれは死亡している以外の何物でもないし、結局死亡扱いでいいのだろう。
あれから世界は変わった。
思えば俺が住んでいた町は、都会の波に押し寄せられ、次々と高層ビルや地下街が作られ、工場が並び、人々のために住宅街が作られていた。その中に緑を見つけることは難しかった。
人間が、自然を破壊していた。
しかしいくら高層ビルや工場や家が作られ、地下に穴を空けられても、やはりここは地球という一つの自然なのだ。
これは所謂、人間が自然に帰った、という現象なのではないだろうか。
いやなにも、人間に限ってこんな、と思うのかもしれないし、俺だってそう思っているけれど、うん、やはりそう思っても仕方がないと思う。
どこかの科学者が、地球にも限界があると言っていた。
地球が限界を感じた結果、地球を限界に追い詰めている原因を抑えようとした行動なのではないだろうか。
実際食物連鎖の上では、どの層の動植物でも、一度一気に増えたって結局は元に戻るのだし。
そういう強制措置が人間になされたのではないだろうか。
今、地球は緑であふれかえっている。
人間は端の報でひっそりと暮らすように、居住区をまとめて住んでいる。
もと人間が住んでいた場所は、今や面白いくらいの植物が暴走しているのだ。
「桜の木の下には肢体が埋まっている」
隣にいる愛花はあの時の言葉をまた言った。
「肢体から栄養を吸い取りあの綺麗な花々を咲かせているのだ、と言いたいのか?」
「そうだねえ、少なくとも、この色とりどりの綺麗な花たちを見れば、そう思っても仕方なくはないかい?」
「そうだな、結局この草花って、政府が感染者があまりにもあふれて、しかも感染経路不明で困った結果、場所を決めて置いていった遺体から、咲いていた花が種を飛ばして植えつけて増えたものだろ」
「そう、生きる力は劇的なのだ」
人間にとっては酷な言葉だな、と俺は苦笑。
「君のお父さんも、この中にいるのかな」
「現在では感染はほぼ収まっているとはいえ、結局対抗策はほとんど練られなかったしな」
「悲しい?」
「我が家は全滅だ」
「我が家ではそうだね、どうだったんだろ」
「確認していないのか?」
「死んでしまってからの人生だ、生きている人間のことは、生きている人間に任せようではないか、と思ってね」
薄情だな、と思うと同時にそれでいいのだとも思う。
死んでから家族に会うのは、正直言うとつらい。
死んだ親父にはまだあっていないけれど、いつかどのみち会えるだろう。
目の前の花が咲き誇るこの自然界に足をつけ、思いっきり息を吸って、吐く。
死んでいるから何か感じることはない。
しかし、感覚的に、生きているんだ、と思った。
草花は生きている。
人間様から頂いている。
いつか自然から人間を崇拝しないだろうか、とも考えたりして愛花に笑われた。
「そんなこと起きたら怖いよ」
「ありえないことはもう十分起きただろ」
それもそうだね、とまた笑った。
とりあえず、このうっそうと茂りに茂りまくった自然を見て、これはやりすぎなのではとも感じざるを得ないが、しばらくはこのままでいてくれ、と人間の居住区に向かって祈った。
平和が続きますように。
なんつって。
「でもフラワー症候群騒ぎですっかり戦争無くなったね」
「他国の新兵器か!? とか言われても、その他国も感染者増大だったしな」
「平和だね」
「平和だな」
「花、綺麗だね」
「そうだな」
「草、綺麗だね」
「そうだな」
「自然、綺麗だね」
「そうだな」
愛花は満足そうに世界を見渡し、また笑って、
「命、綺麗だね」
消えた。
残ったのはアザミ。満足。
「……なんつー告白だ」
メーちゃん呼びはどこに行ったんだ。
あと愛花。
「お前も綺麗だよ」
なんつって。