表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕はまだ、3日前に食べさせられたシャーベットがニガウリ味だった理由を君に教えてもらっていない。

作者: LOKI

小説の題名だけ考えてから、ランダムでジャンルを決めて書いてみました。

面白い題名にするということだけ考えて作った題名なので、特に深い意味はないです。

「なあなあ、メリーさんの呪文って知ってるか?」


「まぁたオカルト話?」


 本日も彼女の部屋で彼女と話す彼。相も変わらず彼女は辛辣な口調だが、いつものこと。家が隣で赤ん坊のころから幼馴染の二人は互いの扱いなどもう慣れたものだ。


「そんなに一刀両断してくれなくてもいいじゃないか……」


「私がキョーミあるのは2次元だけなの!2次元は正義!!」


 少しショックを受けたような口調で彼は言葉を発するが彼女は知らぬ顔。むしろ自分の愛を身振り手振りまでして伝えている。


「お前はいつもそれだな。嫁はもう3ケタいったんじゃないか?どう考えても多すぎだろ」


「失礼な!嫁は星の数だけいるのよ、数えられるワケないじゃない!でも今はメイクリスが一番なのよ、なんてったってツンデレは正義だからね!」


「確か、今日が誕生日だったか?」


「そうよ!記憶力の悪いアンタが覚えてるなんてやっぱりメイたんは天使ね!!」


 感極まったかのように頬を染め、彼女は液晶の向こうに住む嫁に思いをはせている。


「お前がここ一か月、毎日毎日ゲテモノの苦かったり酸っぱかったりするシャーベットをメイたんのための味見だなんだと称してオレに食わせてるからだろーが!なんだよ納豆シャーベットって!3日前のニガウリシャーベットもひどい味だったしさ!」


「え?美味しかったでしょ」


「……液晶のカレが出てこないことを祈ってやるよ」


「えー?なんでなんでー」


 なんでーと言いながら彼女は彼の肩をガクガク揺らす。笑いながら受け流す彼。


「世の中には知らない方がいいこともあるんだよー」


「なんか口調がムカつくのですがー」


 揺らされながらも軽い口調の彼だがそういえば、と話していたことの路線を元に戻す。


「そういえば、さっき言おうとしてたことだけどさ」


「いつものオカルト話でしょ。メリーさんだっけ?」


 彼の手から肩を離し、彼女も聞く体制に入った。それを確認してから彼は話し出す。


「そうそう、メリーさんの呪文。ほら、『もしもし。あたしメリー今○○にいるの』って電話が何回もかかってきて、メリーさんがだんだん近づいてくるやつ」


「んー、なんか聞いたことある気がする。でも呪文って?」


「メリーさんの標的になれる呪文で、電話口で3回『あくえいるめりー』って言ってから適当にボタンを押せばいいんだって」


「なにそれイミフ」


 彼の説明に冷たい声と目で返す彼女。標的になるなんてどんなM発言をしてるんだとでも言いたそうな顔だ。


「でもちょっと面白そうじゃん?ま、やらないけどさ」


 少し照れたように笑う彼。


「はぁ…てゆーか、そもそもそんな話誰から聞いたの?」


 彼女は小さなため息を吐くと、疑問を舌に乗せた。


「先輩だよ先輩」


「あぁ、あのオカルト部の先輩?」


「そう。いつも妖怪とかの萌え系同人誌ってのを書いてる先輩。最近は部室に来ては死に物狂いで書いてるよ。なんでも、イベントが近いんだって」


「さすがクールジャパンね」


「え、クール?」


「あんたは知らない方がいい世界よ」


 彼女は少し遠い目をすると、これ以上追及されるのを避けるように話を戻した。


「でもさー、あく……なんだっけ?」


「あくえいるめりー、なんでもフランス語でメリーさんいらっしゃいって意味らしいよ」


「いらっしゃい……ねぇ。新婚を呼ぶ番組じゃないんだから」


 あきれた声を出しながら自分の携帯電話を取り出す彼女。青色のガラケーに付けられたクマのストラップが揺れる。


「いや、世の中でいらっしゃいと言うのがあの落語家の人だけではないから……って何してるの?」


「え?そんなの決まってるじゃない。試すのよ、ちゃんとメリーさんから電話が掛かってくるかどうか」


「はあぁっ!?ダメに決まってるだろ!」


「怪談は噂だからこそ美しい、でしょ?もう耳たこなの!度胸がないから試さないだけでしょーが。えーと、あくえいるめりーあくえいるめりーあくえいるめりー」


 必死に止める彼を無視して、彼女は先ほど彼に教わった呪文を携帯電話を耳に当てて口にするとボタンをめちゃくちゃに押した。


「……何も起きないじゃない」


 しばらくすると彼女は飽きたように携帯電話から耳を離し、そばに放り投げると彼女自身も後ろのクッションに身を投げる。


「あぁーオレのロマンがぁ……」


 彼曰く怪談は噂だからこそ美しいなので、本人からしてみれば自分の中の理念を壊されたような気分なのだろう。彼はガクリとこうべを垂れた。


「なーにがロマンよ残念男子めが」


 彼女が軽い悪態をついたが彼は顔を上げない。少し言い過ぎたかもしれないと彼女は彼の顔を覗き込もうと起き上がる。

と、そこへ音楽が鳴り響いた。


「!」


 二人は同時に近くに放り投げられた彼女の携帯電話へ目を向けた。携帯電話からは人気声優が歌うアニメの主題歌が鳴り響いている。

着信がきているのは明らかで、普段は気にしないものの先ほど呪文を唱えたのもあってか彼女の目は驚きの表情で彩られていた。


「もうビックリするじゃない。誰よ、こんなタイミングで電話よこしてんのは……」


「お、おい!」


 そう言いつつ、彼が止めるのも構わず非通知と表示された電話を取り通話ボタンを押す。


「もしもし?」


『もしもし。わたしメリー今あなたの家の最寄駅にいるの』


それだけを伝えるとガチャリと切られる電話。


「うわーすごい、ホントに掛かってきたよ。メリーさんから」


「いやいやいや、あれ最後は被害者の後ろまで現れてくるんだぞ!殺されたらどうするんだ!」


「どうすると言われてもねー。どうしようもないかなぁ」


「オレだって対処法知らないぞ!危ないのはお前なんだから、逃げた方がいいって」


「えぇーでも、さっき最寄駅まで来てるって言われちゃったし」


「えっ!?最寄駅って歩いてもここから5分くらいしかからない場所じゃないか!」


「メリーさん仕事が早いねー」


「なんで危険に晒されてる張本人が一番気楽そうなんだよ……」


 焦る彼に比べて狙われている本人は慌てた様子もなく素知らぬ顔。ゲームでも始めそうなくらいだ。


 そこへまた着信。彼女はまた迷わずに取った。


「もしもし、メリーさん?」


『もしもし。わたしメリー今あなたの家のg…「ちょっと待って」』


 電話の相手の言葉を彼女は遮る。


「まさか土足で上がるわけないよね」


『え?』


「家に入るのは構わないけど、土足なんてダメよ。外国製だからって許されるわけじゃないからね。あとキッチンに行っても冷蔵庫のシャーベット食べないでよ、あれはメイたんにあげるんだから!」


 言いきると彼女は容赦なく通話終了ボタンを押した。


「つ、つえぇ……」


 おとことはこのことをいうのか、とでも言いたげな尊敬の目で彼女を見つめる彼。

その視線に気付き、彼女は少し尖った口調で声を発した。


「なに?なにか文句があるの」


「いいえ、別に。ただそこまで言えるのが純粋にすごいと思っただけです」


「だって土足なんて、絶対に許せるわけにいかないでしょ!?この部屋に入ってきたときにメイたんグッズ汚されたら大変じゃない!シャーベットだってメイたんのためのものなのよ!」


「1にも2にもそれなのな……」


 怪奇現象にまるで家でも土足でいる習慣がある外国人にするような対応だなんて、と彼は呆れたように声を出した。


「!」


 そこへ、また電話が掛かってくる。すぐに出る彼女。


『もしもし。わたしメr「あ、メリーさん?靴はちゃんと揃えたよね?」』


『え、あの、今キッチンに…「揃えたよね?」』


 ブツリと切られる電話。メリーさんに切られたようだ。


「メリーさんなんて言ってた?」


「なんかキッチンにいるらしいけど」


「もう室内なの!?」


「うん。さっきは玄関からだったけど」


「二階に来るのも時間の問題じゃないか!」


 二人が今いる彼女の部屋は二階に行ってすぐのところにある。彼の反応はまともなものだろう。


「ど、どうするんだ!?」


「どうするって……とりあえずいちいち言うのめんどいから、次掛かってきたときは横にいて聞いといてよ」


「お前なんでそこまで冷静なの!?」


 もはや彼の方がメリーさんの標的にされているのではないかと思えるほど、彼女は冷静だった。


「徹夜して描いた原稿に麦茶こぼした瞬間以上に恐ろしいものなんて存在しないわ」


 また彼女は遠い目。わけも分からず彼は困惑顔だ。


 そこへまた電話。彼女が取ると同時に彼もやはり興味があるのか、彼女の反対側から携帯電話に耳をあてる。


「もしもし?」


『もしもし。わたしメリー今あなたの家の玄関にいるの』


 また切れる電話。二人は携帯から耳を離した。


「さっきキッチンって言ってたんじゃなかったの?」


「うーん。もしかして靴ちゃんと揃えたか聞いたから、直しに行ったんじゃないの?」


「メリーさん律儀だな!?」


 驚いた顔で叫ぶ彼。


「あっ、そういえば言い忘れてた!」


「え、何を?」


 急に叫んだ彼女に彼は疑問の声を返す。


 そこへまた電話。


本日五回目のアニメ主題歌が鳴り響く。話を中断して二人は先ほどと同じように携帯電話に耳をあてる。


『もしm「メリーさん、さっき言い忘れてたけど家上がる前に埃はらっておいて。花粉すごいから」』


『いや今キッチンn「あとシャーベット食べたら許さないからね!」』


『……』


「ん?どうしたの」


 突然無言になるメリーさんに電話を聞いていた二人は顔を見合わせた。


『な……』


「な?」


『なんなのおぉ!?わたし怪異よ、怪異!』


「え?え?」


 電話口から怒りの声が聞こえてきた。彼女ですら少し面食らった顔で驚いている。


『それがやれ靴を脱げ、揃えろ、埃をはらえって…あなたわたしのお母さんかっ!もうちょっとこわがったりしなさいよぉ!!』


 後半は涙声になって聞こえてきた。


『もうおこった!あなたのだいじなシャーベット食べちゃうんだから!ぜったい許してあげないわ!!』


 バタリと冷蔵庫を開けた音がし、ひどく狼狽して彼女は電話口に叫ぶ。


「へあぁっっ!?まてまてまてまて!それだけはやめてえぇぇええ!!」


「なななななに言ってんだよメリーさんっっ!!ぜっっったい後悔するからやめろおおおおおおぉぉっ!」


 何故か阻止するように彼女と共に叫ぶ彼。

そして彼女が阻止するためキッチンに降りようと自室の扉に手を掛けた瞬間、


『ぐぽぁっ!!!』


 電話口から苦悶の声、それと同時に一階からガシャンと何かが落ちた音。


「「メリーさああああああああああああああああんっっ!!」」


 二人の叫び声が部屋の中に響いた。

 後日、キッチンで見つかった外国製の人形は(くだん)の先輩に参考資料としてプレゼントされた。


 きっと大切にされていることだろう…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ