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家に帰ると、深衣菜の父親と兄が壱弥の荷物を1階から2階の空き部屋に移動させているところだった。
「すみません。いろいろやってもらって。」
「いいよ。学生は勉強が本業だからね。一日も早く学校に慣れるべきさ。」
「兄貴早かったね。部活いいの?」
「今日だけは特別さ。壱弥君が来るからな。」
(叔父さんも裕さんも俺のこと歓迎してくれるんだ!良かった。
だって俺第一印象って最悪だし、ワケあってだけど連絡とれてないし。)
少し前に壱弥の変わりようをみている深衣菜はいまいち浮かない表情のまま自室に荷物を置きに行った。
(深衣菜は・・・あんまり歓迎してなさそうだなぁ・・・)
壱弥はさっそく荷物から着替えを取り出していた。
「それにしてもジャージで帰宅だなんて喧嘩でもして返り血浴びたみたいだなぁ。」
(裕さんっそれシャレにならないぞっっ!!)
一瞬冷や汗をかきそうになったが、顔には出さないように気をつける。
「そんな武勇伝ないですよ~。校庭で派手に転んだだけですよ~」
着替えをしながら壱弥はへらへらと笑い、言葉を返す。
「そうそう!そのあと更に噴水に突っ込んでその数メートル先の花壇に足元狂わせてダイブしだんだよっっ!いやぁ見事な転びっぷりだったよ~」
荷物整理を手伝いに来た深衣菜が、自慢げに壱弥に笑顔を向ける。
(そこまで言わなくていいだろっっ)
喉元までそう出かかったが、グッと堪えて深衣菜を呆れた顔で見る。
「俺のことそんなにドジッ子にしたい?」
深衣菜は壱弥を部屋の隅に引っ張っていくと、小声で囁く。
[兄貴と父さんに本当の事いきなり言えないよっ]
[そうだけどさぁ・・・]
いまいち不満そうな壱弥。
「ぶぅーー・・・」
「壱弥君、簡単でいいから服洗ってこいよ。荷物の整理なら簡単にやっておくから。」
「すみませんっじゃあお言葉に甘えさせてもらいます。」
足早に洗面所へと向かう。
(俺・・・姫は賢かったって情報は消した方がいいかもな。)
壱弥が洗面台で服を洗っていると、階段を下りてくる足音が聞えて来た。
そして、深衣菜たちの父親が声をかけてきた。
「壱弥君、今日は僕が美味しいもの作るからね。出来たら呼ぶよ。」
「ありがとうございます。」
(おじさんは穏やかな人だって聞いてたけどそうみたいだな。)
少しすると、上の方から裕が深衣菜が荷物整理させるのを制止させる叫び声が聞えてきた。
(なんだ?)
壱弥は動きを止めて耳を澄ます。
聴力は常人よりも優れているので、少し離れている相手の声なら聞える。
(・・・・っって!裕さんんん!!?)
裕から発せられる言葉に青くなっていく。
(なんでそんな放送禁止用語連発してんだ!?洗い物してる場合じゃないっっ!!)
困惑し、赤面していく深衣菜が思い浮かぶ。
(深衣菜に誤解されるだろっっ!!)
ダダダダダダダダダダダダダダッッ
「んなもんあるかーーーーーーっっ!!」
高速で階段を駆け上がった壱弥がツッコミ叫ぶ。
「おっ階段を息を乱さずに駆け上がってツッコミだなんてやるじゃんっ。さっすが白虎殿っ。」
「「え」」
(おい・・・・いま・・・なんて・・・・)
突然、裕の口から意外な言葉が飛び出し、驚愕の表情になる2人。
直後、壱弥は警戒するように裕を睨む。
「そんな怖い顔しなくていいぜ。前世は姫の前に契約してただろ?」
「もしかして・・・晴昿か?」
「おうよっ驚いたろ?」
「なっなに?兄貴までっっ」
盛り上がろうとする2人に対して怒る深衣菜。
前世で因縁のある者が身近な人物に転生するとは知ってはいたが、あまりにも偶然過ぎて感心してしまう壱弥であった。
「うーむ・・・こいつの記憶は蘇ってない?」
「そうなんだよなぁ」
「だーかーらぁーっっなんなの!!」
裕と壱弥は顔を見合わせる。
「なるほど。詳しい説明が必要だな。まずは部屋の片付けだ。というわけでお前は出てけ。エロ本出てきたら困るだろ?」
「そんなもんない!!」
言い返す壱弥を裕は楽しそうに見る。
(晴昿の人をからかうクセがでたな。)
深衣菜はため息をつく。
「壱弥、洗濯まだ途中でしょ?あたしがやっておくよ。夕飯できたら声かけに来るから。」
裕のからかいの標的にならないうちにとっとと階段を降りていく。
その姿を見届けてから、裕はドアを閉めた。
「白虎殿、随分男前になったじゃないか。」
「壱弥でいいよ。」
裕は床に腰を下ろす。
壱弥も床に座る。
「日本に来た目的はなんだ?」
(さすが晴昿。勘がいいな。)
裕は鋭い目を向けてきた。
「日本人としては母国で暮らしてみたいって思っただけだ。」
「そうか?俺はてっきり今世も深衣菜に付きまといに、いや監視に来たかと思ったけどな。」
「はぁ?なんでだよっ」
「確かに姫の前世はとんでもねぇ者だったから四神が出てくるのは仕方ないと思ってる。けどなぁ四神全員が姫の近くにいるなんておかしいだろ。」
「念には念って事だ!それに鬼たちを封印するのは容易ではないことぐらいわかるだろっ」
「ふーん・・・・・そういうことにしといてやるよ。」




