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そのあと何気ない顔で部室へ行ったときには深衣菜も遥も帰り支度をしているところだった。
「依都美ちゃんは?」
「モデルの仕事だって。」
「2人だけで話しだなんて珍しいね。」
「ああ、四神関係のことさ。たいしたことじゃねぇよ。」
壱弥をジッと見つめてくる深衣菜。
「もしかして!やきも「そんなわけないでしょ」
壱弥の言葉をバッサリと切り捨てる。
「なんか元気ないなぁって思ったけど?」
「気のせい!もう帰るぞ。じゃあな青龍!」
「遥先輩だってば!先輩さよならっっ」
壱弥は不安をかき消すかのように深衣菜を引っ張って校舎を出る。
「放してっっ」
「はいは~い」
そういいながらも手を放す様子はない。
「壱弥っっ」
何度か深衣菜が文句言い続ける。
ふと、壱弥の足が止まる。
「壱弥?」
「なぁ・・・・・このまま俺とアメリカ行かねぇ?」
「へっ?何いきなり?」
「国外に出てしまえば鬼は追ってこない。過去の因縁だって関わらなくてすむ。」
「えっでも、あたしに姫のこと思い出して欲しいんじゃなかった?」
「どうだっていい!!!」
壱弥の手がきつく握られていく。
「壱弥・・・」
「ごめん。そうだよな・・・全然解決にならねぇな・・・・・」
深衣菜の手を放すが顔を向けようとはしない。
「何があったか知らないけどさ、あたしじゃ力にならない?」
「そんなことない。けど・・・」
「あたしと壱弥は切っても切れない縁でしょ?親戚だし、命預けてる身だからできることはするよ。」
「ありがとう。」
壱弥は弱く笑う。
そして深衣菜の手を握り、歩き出す。
(なんでまた手を!まぁいいや。壱弥が元気ないと調子狂うよね)
再び壱弥が立ち止まる。
「どうしたの?」
「深衣菜、帰り少し遅くなりそうだ。鬼が出た気配がする。」
「早く片付けて帰ろう。」
「ああっこっちだ!」
ビルの間を逃げていく人々。
それに逆らって駆けていく。
人、動物とは違う呻り声が聞こえてきた。
「あれは大嶽丸!!厄介だな」
「依都美にも来てもらうように伝えるよ!」
「頼む!!」
深衣菜は杖を目の前に出す。
「白虎召喚!!」
変化した壱弥は鬼に向かっていく。
(依都美っっ緊急事態!返事して!)
(深衣菜様!?鬼が出たのね!)
(壱弥が大嶽丸って鬼と戦ってるの!)
(なんですって!?場所を!急い行くから!)
「久しいなぁ?白虎よ?」
巨体からは考えられない素早さで壱弥の攻撃をかわす。
(壱弥の攻撃が当たらないなんてっっあの鬼凄い!!)
突然空が曇り出してきた。
(さっきまでいい天気だったのに?)
「雷鳴よ轟け!白虎を狙え!!」
空から稲妻が走り壱弥が居た地面を焦がした。
「まさか雷はあいつが起こしてるの!?」
「ああっあいつは天候を操作できる!」
(厄介!なんかいままでの鬼と違う!?強い!!)
壱弥は素早く雷を避けてはいるものの避けるだけで精いっぱいらしい。
「おや?四神の姫君か?」
大獄丸はニヤァァと不気味に笑う。
「深衣菜ぁぁぁぁぁっっ!!」
狙いを定めた稲妻が深衣菜に向かってきた!
「ひぃぃっっ!!」
杖を持つ手に力が入るが恐怖のせいか体が動かせない。
そもそも人間が向かってくる雷を避けるというのはムリに等しい。
雷は
深衣菜を庇うように飛び出してきた壱弥に直撃する。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ」
深衣菜の前で崩れていく壱弥。
しかし、大獄丸を睨みヨロヨロと立ち上がる。
「さすが白虎だ。しかしこれはどうかな?」
三筋の稲妻が襲い掛かる!
「くっっ土壁!!!」
「生ぬるいなぁ」
壱弥が出現させた土の壁は雷に砕かれ砂埃と共に壱弥に喰らいつく!!
「壱弥ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
悲鳴すらもあげる隙も与えられずに焼け焦げ、倒れていく壱弥。
(怖いっっ怖いぃぃぃぃぃぃっっっ)
恐怖で全身の震えが止められず地面に座りこむ深衣菜。
そこに近づいてきた大獄丸は、深衣菜を見下し手を伸ばしてくる。
「・・・めろ・・・・に・・・さわ・・るな・・・・」
「まだ息があるのか?大したもんだなぁっっ!」
動くこともままならない壱弥を蹴り飛ばす。
勢いよくビルに打ち付けられ、地面に転がる。
「い・・・・いち・・・・・」
言葉が出ない。
そんな深衣菜を見下す大獄丸。
「こんな小娘に怯えてたとはな。」
深衣菜の手から杖を奪う。
邪悪な笑みを浮かべ、手に力を込める。
パキッ
(な、なにを・・・)
目の前に真っ二つに折られた杖が投げ捨てられる。
「これで全て終わりだ。」
(なにが・・・・・)
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
目の前の鬼とは違う所から咆哮が聞こえてきた。
「お前が守ってきたものを自分で壊してしまえ。はははははっっ!!」
笑い声を残して大獄丸は消えた。
その後に残ったのは咆哮をあげながら建物を破壊する
白虎の姿の壱弥。
(なに?どうして?)
目の前で暴れている者が、ついさっきまで自分の手を引いていた者だとは信じられない。




