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去っていく深衣菜の後ろ姿を、慶隆はずっと見つめていた。
病院のロビーはいつもと変わりない様子だった。
深衣菜はエレベーターに乗りボタンを押す。
(そうだ、壱弥にあやまらなきゃ・・・やっぱりいくらなんでも悪いこと言ったし・・・)
5階に着くとドアが開く。
足を踏み出してエレベーターを降りる。
「深衣菜っっ!無事でよかった!!」
いきなり抱きしめられた。
「うわっ壱弥っ!?」
「さっき外がすごいことになってたから深衣菜の身に何かあったかと!また失ってしまうってっ・・・・・・」
「失うって・・・」
言葉を止めた。
壱弥の体が震えている事に気づく。
「な・・・そんなに心配するほど時間たってないじゃん・・・。さっきのはダイナミックな清掃だってば。それにちゃんと」
「けどっ!!」
「あのさ、さっきは言いすぎた。ごめん。」
「俺の方こそ悪かった。深衣菜の気持ちちゃんと考えてなかったな。」
壱弥は深衣菜を放す。
「それに誤解されたままは嫌だからな。」
「誤解?」
「俺って前世の姫の生まれかわりだからベタベタしてるじゃん。」
「あー・・うん。それ言っちゃうんだ・・・」
(やっぱり‘あたし’じゃなくて‘姫’だからだよな・・・。)
つまり、‘伊那瀬深衣菜’という人格はどうでもいい。そうハッキリと言われた気がした。
(別にあたしは壱弥が好きなわけじゃないからどうだっていいじゃないか。)
鬼を倒す力を持っているから守る、ただの契約の関係だと思う。
「最初に深衣菜に会ったときから気になってたんだ。確かに魂は姫だけどそれは過去のことだ。深衣菜は姫とは違う、性格全然違うもんな。俺だってあのときの白虎じゃなくて壱弥だし。」
「う、うん。」
(それって伊那瀬深衣菜って存在を認めてるってこと?じゃあ・・・・・)
「だからっ深衣菜として好きなんだっっ!!」
「なっっそういうこと大声で言わない!!」
と、叫んだ深衣菜と壱弥の頭に痛みが走った。
2人の間にまるで金剛力士像のような表情の裕が立っている。
「「いったぁーーっっ」」
「廊下のド真ん中で愛を叫んでるバカ者ども。飲み物買いに行くだけで何十分掛かってやがる?あぁ?」
裕は深衣菜の手から飲み物を全て奪い取る。
「だってさっき外で超能力でダイナミックな掃除見てたんだよ!中にはいれなかったから仕方ないじゃんっ」
「そうか、お前らはあれ初めて見たんだな。」
「兄貴知ってたの!?」
「当たり前だろ。有名だ。」
「うぁ・・・あのさ、ダイナミックな掃除って何?」
深衣菜は自分が外から見たことを説明する。
「へぇー・・凄いな。あれは人間の力・・・。まぁ四神ほどじゃないけどなかなかだったなぁ。」
「そうだな。あのチームは凄く強いぞ。で、壱弥君?さっきのは親戚として、親愛を込めての意味だよな?けして男目線のセリフじゃねぇよな?」
「そ、そそそそういうことですハイ」
裕のただならない迫力に負けてしまう。
「だよな?とりあえず仲直りして安心したぞ。ほら、あまり母さん待たせるなよ。」
裕はいつもの表情に戻って2人を数代の病室に向かわせる。
自分の最大の障害は裕かもしれないと、心の中で盛大にため息をつく壱弥であった。
そして・・・病院の庭園には、慶隆と、双子の付き人がいた。
怜チームは既に帰ったようだ。
「義隆様、姫殿には会えましたか?」
「うん。やっぱり白虎いない方が話しやすいな。また接触する機会を作ろうか。」
「「はっ」」
「姫・・・今度こそ・・・・・」
慶隆の表情が刹那そうになる。
「それにしても、僕たちの正体に気付かれずに関わるのが難しくなってきたな。」
「今の青龍殿は大丈夫だと思いますが」
「白虎殿だけならともかく朱雀殿までいると難しいですね。」
右京・左京の言葉に慶隆はため息をつく。
「手はある。いずれ動く。」
つづく。




