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翌朝の通学路、深衣菜と壱弥はいつになく真剣な表情で歩いている。
「いよいよ今日だね。」
「ああ。朱雀、かもしれないってコがくるんだよな。」
教室につくと、クラスじゅう落ち着きがない。
それもそのはず。
有名人が転校してくるかもしれないのだから。
朝のホームルームが始まるチャイムの音が鳴り響くと、生徒たちは素早く席に着く。
いつもより大人しい生徒たちに担任の教師は一瞬驚きの表情になるが、すぐにもとの表情になる。
「みんなの知っての通り、今日は転校生がいる。」
黒板に転校生の名前を書いていく。
書き終わると、教室はざわつきだす。
「静かにっっ!!」
教室が落ち着かない中、壱弥は深衣菜に小声で話しかける。
[なぁ、俺のときとなんかちがくない?]
[こまかいこと気にしない。あたしたちは有名人かどうかは問題じゃないでしょ]
深衣菜と壱弥だけが周りとは違う考えで転校生が入ってくるのを待っている。
教師の掛け声でドアが開かれる。
とたんに教室は静かになる。
そして、雑誌などで見掛ける女の子が入って来た。
「キャーーッッ本物よーーっっ!!」
「かっわいいーーーーーっっ!!」
いままでにないくらい一気に生徒たちが騒ぎ出す。
教壇に立ち、笑顔で挨拶をする。
「花園依都美です。みんなの知ってる通り読者モデルをやらせていただいてます。よろしくね。」
騒ぐ生徒たちをよそに、深衣菜は斜め後ろの席の壱弥を見る。
[どう?]
[あれ・・・違う。]
壱弥の返事に落胆の表情になる深衣菜。
(いくらなんでも朱雀までもっていうのは都合良すぎ?・・・でも、間違いないって言ったのに?)
依都美とはクラスメイトとして仲良くしていこうと思い、目を向ける。
(やっぱモデルやってるだけあって可愛いなぁ・・・)
ブラウンの髪はポニーテールにまとめ、パッチリとした目。
ピンク色のノースリーブワンピースを個性的に着て、濃いピンク色のトップスに紫のバルーンスカート。
長くて細い足を惜しみなく出し、ショートブーツを身につけている姿は派手というよりも華やかという言葉が似合う。
(ああいうコからみたらあたしなんて男そのものだろうな・・・)
ふと、深衣菜と目が合う。
すると、微笑みを浮かべ、教壇を降りる。
「あっ花園さんっあなたの席はそっちじゃなくてっ・・」
教師の言葉が聞えてないかのように歩みだす。
(あれ?あたしのこと見てる?)
依都美は深衣菜の前に立つ。
「やっとお会いできたわっ姫様ぁっっ!!」
気がついたら強制的に立たされて抱きつかれてる。
「へっっ!?」
(あれ?同じようなこと前にも!?)
そう思っていると後ろから壱弥の怒鳴り声が響いてきた。
「てめぇっっ深衣菜から離れろ!!」
「姫様ってばなんて凛々しいお姿に!依都美感激!」
壱弥の言葉、いや、存在を無視して深衣菜に抱きつく。
「今世では男と女だなんて恋愛も堂々とできますわっっ!」
「「ちょっとまて!!」」
深衣菜と壱弥の言葉がキレイにハモる。
3人以外のクラスメートたちは状況についていけず、呆然と見ている。
深衣菜は依都美をやや強引に引き離す。
「あのさっ見た目がこんなだから間違われやすいけどっ女だから!」
「えっでも・・・」
依都美は困惑の表情を浮かべるが・・・
「ひゃあっっ「なんて羨ましい!!深衣菜の胸を触っていいのは俺だけだ!!」
「黙れセクハラ!!」
真っ赤になって深衣菜は依都美から離れる。
「・・・わからないわ・・」
「失礼ね!中学でそんなに発育よいわけないじゃんっっ」
そう叫んだ直後依都美の発育の良い体に目が行く。
(同い年なのになんかずいぶん差があるような・・・)
「お前さっきから深衣菜に失礼だろ!例え胸がまな板だろうがっ言動や格好が男前だろうが深衣菜は女だぜ!!」
壱弥が堂々と言い放つ。
その直後、3人の周辺の生徒たちが一斉に離れ、いや、クラスメート全員が席を立ち、なるべく遠い教壇のあたりに固まる。
「壱弥ぁ・・・怪我したいみたいだねぇ~~。」
壱弥の悲鳴が教室内に響き、深衣菜による制裁が行われたのはいうまでもない。
その様子を依都美は目を輝かせながら眺めていた。
「さすが姫様!同性でもいいわ!惚れたわ!!」
「へっ?」
制裁が静まった後、席に生徒たちが戻る。
すると依都美は深衣菜の左隣の生徒に交渉して自分の席と代えてしまった。
「嬉しい、姫様とまた一緒にいられるのねっ」
そういって深衣菜に抱きつく。
「ちょっとっっ」
[姫様、私は朱雀よ。後で契約して下さいな。]
(変なヤツ・・・あー・・でも朱雀が来てくれるなんてラッキーってことだよね。)
お互い席に着く。
深衣菜は壱弥の視線が依都美に注がれていることに気づく。
殺気を放っているように感じられる。
(なんで違うだなんて・・・?)
休み時間になると、依都美はあっという間に生徒たちに囲まれる。
その様子を、壱弥は静かに眺めている。
「どうしたの?昔の仲間でしょ?」
「・・・・・どうだか。俺のカン鈍ったのか?」
いまいち納得できないという表情の壱弥。
「次の次の時間って体育じゃん。ほら、四神ならズバ抜けて運動神経いいでしょ?」
男子と女子は体育は別々となっている為、壱弥はわからないだろうと深衣菜が提案してきた。
まだ記憶がないとは言え、青龍である遥の運動神経は並みではないことは知っている。
だから、もし依都美の運動神経が並み以上であれば信じてもいいのではと。
(あたしのこと姫とか、懐かしがっているし、違わないと思うけどなぁ・・)
「うん・・・・・じゃあ頼む。」
チャイムが鳴り響き、生徒たちはそれぞれの席につく。
授業は休み時間の賑わいが嘘のように静かに進められる。
(依都美・・・・・朱雀なんだよね?)
いくら壱弥が自分に執着するとはいえ、ベタベタとしてくる依都美にあんなに鋭い目を向けるのだろうかと気になる。
(確かに最初に遥先輩に会ったときも喧嘩ごしだったけど・・・そうか!同じ四神っていうなら遥先輩に会えばいいじゃん!)
そして遥に依都美を連れてくるように言われてたことを思い出す。
(雑誌じゃわからなくても実際に会えば何か思うかもしれないし!)
壱弥に会ったときに遥が反応しなかったことを忘れている深衣菜である。
そして、後方では壱弥が不機嫌な表情で座っている。
そのことに気づく者はいない。




