3
「ふっふっふっどこかのクソガキと違って無茶な運転はしないぜ。」
燎がひとりごとを言ったがよくわからない深衣菜たちは聞かなかったことにした。
これは誰のことを言ったかは後に語られる・・・ことはあるかもしれない。
どうやら燎は有名な超能力組織の社長の親戚らしい。
日常生活を送りながらも皇丘学園の能力者の安全と秩序を守る役割を持っているとのこと。
そして、燎のような役割の能力者は各学校に必ず一人はいるらしい。
「じゃああたし達の学校にもいるんですか?」
「いるよ。」
(あれ、社長の親戚ってことは・・・)
「もしかして火澄さんも能力者ですか?」
深衣菜と同じことを思ったのか遥が質問する。
「そうだよ。ただね俺が能力を使えることは一部の者しか知らないから内密にね。」
しばらく進むと高級住宅街に入っていく。
深衣菜たちはけして足を踏み入れない所である。
(そういえば兄貴の学校って一部の生徒を除いてセレブばかりだっけ。)
裕はその一部の生徒の一人である。
「コンビニとかスーパーとかないな~。」
「庶民的な要素あったら違和感あるだろ。」
助手席の裕が言うと深衣菜と壱弥と遥は「なるほど」と納得し、燎は苦笑いする。
「俺としてはコンビニくらいはあるといいけどなぁ。」
(そういえば火澄さんてあまりセレブらしくないかも。)
車は白い壁の車庫に入っていく。
エンジンを止めると、車庫のシャッターが下がっていく。
車から出ると、シャッターとは反対にあるドアを開け、中に入る。
「「うわ・・・」」
家に繋がっていて、長い廊下に思わず驚きの声を上げてしまう深衣菜たちであった。
「驚くだろ?俺も最初に来たときは驚いたぞ。」
「うん、けどなんでここに?」
「ここで特訓するんだよ。」
(特訓??)
「裕さん~いくらなんでもこんなきれいなとこ使えないよ。」
深衣菜と同じように考えた壱弥が文句を言う。
「まあまあ。」
「大丈夫。ついておいで。」
歩き出した燎にならって靴を脱ぐと、後をついていく。
燎はひとつのドアの前で止まると、開ける。
その先には下へと続く階段があった。
(地下室?)
電気をつけ、階段を下りていく。
下にたどりつくと、今度は頑丈そうな扉がある。
燎はゆっくりと開ける。
そこには、学校の体育館の半分ほどの大きさの空間が広がっていた。
「ここは訓練室さ。特別なつくりになってるからどんなに暴れても大丈夫さっ」
どうやら、燎が遠慮なく能力の練習が出来るようにと作られたらしい。
防音はもちろん、防炎、防水に優れていて、壁も相当頑丈にできているらしい。
「すげー。ん?もしかして誰かと獣化した俺が対戦するのか?」
「これから俺の式神としてもらうさ。」
その言葉に壱弥は不満そうな顔になる。
「あの子鬼どもじゃ獣化の必要ねぇよっ」
「誰があいつら呼ぶと言った?対壱弥君用の奴を呼ぶさ。」
裕は水性マジックを出すと、床になにやら書き始める。
「何してるのっっ!?すみません兄貴がっ!」
燎に謝ると、首を横に振られた。
「いいんだ。話は聞いてるからね。」
「そうか、格上の式神を呼び出すなら本来はあれくらい面倒なことやらなきゃならないもんなぁ・・・って裕さん!最初に説明しとけよっっ」
「すまん、忘れてた。」
深衣菜は複雑な召喚陣を描いていく裕をみる。
(あれ、あたしあんなの書かないで錫杖で召喚してたけど・・・それって実はすごいの?)
「裕さんの召喚、時間掛かりそうだから説明しとくぜ。」
壱弥の説明によれば、通常、式神の召喚には二つの方法があるらしい。
ひとつは人や物の形をした紙に気を送り込み、実体化させる。
もうひとつは呪文と印、場合によっては召喚陣によって召喚させる。
前者は簡易的なもの、後者はちからの大きいものを呼び出す場合に用いられる。
「あたしの場合は後の方?」
「どっちかと言うとそうだな。姫はそれの進化バージョンみたいなものだし、つまり、力が相当強いって証拠さ。」
(前世のあたし?ってかなりすごい人物じゃないか?)
「出来たっっ驚けよっ」
裕は陣の前に立つと、両手で印を組む。
「白銀の身を輝かせて麗しき姿を現せ!白虎っ召喚!!」
すると、召喚陣が光だし、光の中から何かが姿を現す。
(なに!?空間が圧迫されるような威圧感!!)
「白虎だって!?まさかっっ」
まぶしさに目を細め、緊張感が漂う。
(いったいどんな化け物がっっ!!)
とんでもなく禍々しい物が出てくると、誰もが身構える。
「裕ぃ~召喚だけでいいって言ってるじゃないか~恥ずかしいっす~~」
間抜けな声がこだました。
召喚陣から光と共に異形の者が姿を現したのだ。
裕と同じ位の長さのストレートな金髪
肌は白に黒の縞模様の毛並み
鎧をまとい、頑丈そうな筋肉質の好青年である。
そして、主である裕に顔を向ける。
(あれ?さっきの緊張感は?なにこの平和そうなヒト?)
「拓那じゃないか!!」
「その懐かしい声は師匠っすか!?」
壱弥に驚愕に表情を向け
「しぃしょぉぉぉぉっっ!会いたかったっすっっ!!」
「おぉぉう!立派に現役白虎やってるなぁ!!」
抱き合った。
(あれ?あの兄貴が呼び出したのが今の白虎で、壱弥も白虎になるから・・・ん?)
「壱弥、麗しい再会に水をさして悪いけどさ、そちらもお前も白虎?四神ってのは青龍と朱雀と白虎と玄武の四匹だけじゃないの?」
「あ、それだけどさ、俺たちの代の四神は世代交代したじゃん。だから正式には今の四神はこいつらの世代で、現役退いた俺たちは四神並みの力を特別に持った奴なんだ。」
「へ~・・ってなんで壱弥たちは特別に力持ってるの?」
「それはっまぁ・・・いろいろ事情あるってわけだ!」
壱弥に引っ付いたまま白虎は深衣菜をじっと見る。
(なんか、あの白虎に見つめられるとちょっと怖いな・・・)
「こらっ深衣菜をガン見すんな!怖がるだろっっ四神ってのはそこらの式神より迫力あるから気をつけろって言っただろっ!!」
「すまないっすっ。あ、けど姫殿も一緒っすね!もしや夫婦の「はいはぁいっ白虎ちゃん俺のご指名ってこと忘れんなよっっ!!」
裕は強引に壱弥から引き剥がすと、引っぱっていく。
「裕っ耳はやめて!いたいっすっっ!!」
「主のことすっぽかしてたのはどこのどいつだ!」
「ぎゃーーっっ許して欲しいっす!!」
(あれ?さっきの迫力ゼロ??)
「四神っつっても主には逆らえないみたいだねぇ。」
「ですね。」
登場時の迫力感が一掃された白虎をみながら遥がつぶやき、つい同意してしまう深衣菜であった。
(先輩このありえない状況について来てる!?)
順応性の高い遥に関心してしまう。
「裕さん、これって俺と拓、じゃなくて白虎が対戦するってことか?」
「そう。まぁ今のお前になんか寝てても勝てるけどなっ」
「ひひひっ裕っっ師匠になんてこと!!」
そこまで言われたら壱弥も黙っていられない。
裕をきつく睨む。
「その言葉後悔させてやる!!」
「兄貴っ調子に乗りすぎ!!」
余裕の笑みを浮かべる裕に焦る白虎。
それと向かい合うように二人を睨みつける深衣菜と壱弥。
「白虎召喚!!」
叫び声と共に変化していく壱弥。
そして、裕と深衣菜が互いの白虎から離れたのが合図であるように、壱弥が白虎へと向かう。
「それで、俺はここまでついてきてしまったけど何をすればいいのかな。」
「とりあえず俺と一緒に観戦しようぜ。」
いつの間にかパイプ椅子に座りポテトチップスをほおばっている燎。
「じゃ、お言葉に甘えて。ありがとうございます。」
ペットボトルのお茶を座ると同時に渡され、すっかりくつろぎモードになる遥と燎であった。
「壱弥っ!あたしらをなめたこと後悔させて!!」
「おうっっ!!拓那覚悟ぉぉぉぉぉっっ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
声だけを聞けば壱弥が押しているようだが、さすがに現役白虎も負けてない。
壱弥の攻撃を巧みにかわしている。
「さてと・・・遥君」
「へっ?」
竹刀を放り投げられて、座ったばかりの椅子から立って竹刀を掴む。
「兄貴?」
「そこに座るのは君じゃなくて深衣菜だ。」
「おいおいっ遥君は見ててもらうだけで関係ないんじゃなかったのか!?」
「ああ、そのつもりだったけどさぁ、本当に青龍か確かめさせてもらおうと思ってな。いけね、俺の分の武器忘れた。」
「竹刀とかならあの倉庫に置いてあるぜ。」
「ちょっと借りるぞ。」
裕は倉庫へと駆けて行く。
「まいったな・・・剣道なんてやったことないし・・・」
遥は言葉ではそういうものの楽しそうな表情をしている。
(兄貴ってば先輩に!あっけど剣道出来ないってわかれば変なこと巻き込んだりしない・・・かな?)
「遥君、アイツの道楽に巻き込んでしまったみたいだな。ごめん。誤解だって伊那瀬も気づけばムリさせないと思う」
「俺は楽しいですよ。たまにはこういう体験もいいですね。」
申し訳なさそうな燎に遥は笑顔で返す。
(先輩ってさ・・・わかってたけどタフだよねぇ・・・)
「おまたせぇぇ~」
「もうっ兄貴の気まぐれに・・なななっっ何ソレェェェェェェッッ!」
「お前ナニ持ってきてんのぉぉぉぉぉっっ!?」
裕の右手には刃を光らせた刀が握られている。
「なっなに間違えて本物持って来てるの~驚かさないでよーーっ」
「ほら戻してこいよっっ」
深衣菜と燎はそういうが、裕は全く動こうとしない。
「お前ら何言ってるんだ?俺はこの真剣で遥君としんけんに戦うぞ?」
「シャレいってねぇで戻してこい!!人んちを殺人現場にする気かーーっっ!!」
「なんだよ、お前んちちゃんと許可とって刀置いてあるんだろ?ってことは敷地内ならどう使おうと自由だろう?」
「ちがうちがーーう!そういうもんじゃねぇよ!!」
燎の言葉に裕は呆れた表情でため息をつく。
「あのな本物の青龍なら真剣ひとつでも足りないぜ?目覚めてないってことならなおさら刺激する必要があるだろ。」
「だからっって!じゃああたしも先輩と戦う!見てるだけだなんて冗談じゃない!」
「お前も?そうだな・・・・・・。」
裕は護符を一枚出すと深衣菜に握らせる。




