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「面白くなってきたね。これは朱雀が現れる日も近そうじゃないか。」
「どうされますか?」
「僕は見てるだけさ。」
「姫殿の味方にはならないということですか?」
「そうだね。僕には関係ない。」
義隆はそういうと、ゴムボールを手にして校舎へと戻っていく遥をみる。
遥が部室に戻るころには空き教室にいた三人の姿は消えていた。
「じゃあさっそく入部届けを書いてくれるかい?」
まるでさっきの騒動がなかったかのようにもどってくるなりそう言った遥に、壱弥はパイプ椅子から思わずズリ落ちそうになる。
「おい・・・」
「先輩はマイペースなの。」
深衣菜の言葉にため息をつき、椅子に座り直す壱弥。
「そういう問題かよっ!?まっ深衣菜と一緒にいられるならなんだっていいか。」
そして入部届けに文字を書こうとした瞬間、届けの用紙が消えた。
いや、正確には白紙のまま深衣菜に取り上げられたのだ。
「入部はまて!っていうかあたしは認めないっっ」
「「ええーーーっっ!!」」
入る気満々の壱弥、入れる気満々の遥の双方から非難の声が上がる。
「ずっとこいつ一緒だなんてイヤっっ」
(だって抱きつかれる回数増えそうじゃん!先輩にも誤解されるのイヤだし!)
「う~ん・・・だったらテストするかい?今日はバスケ部の助っ人に、怪我してしまった人の代わりにとなり町中学と練習試合に出る予定だけど、壱弥君出てみない?」
「おっバスケなら得意だぞ!」
「じゃあ決まり!いいかな?」
「わかりましたよ・・・・・」
深衣菜は渋々というふうに頷く。
その数十分後、バスケの試合を見ながら、深衣菜は驚かされることとなる。
本人の言う通り、壱弥はバスケが得意らしい。
彼の手に渡るボールは相手チームに奪われることなくゴールへと向かう。
「ねっあの新しい人誰?」
「ほら転校生だよっ!かっこよくないっ!?」
そんな黄色い声もちらほらと聞える中、深衣菜たちの学校の圧勝で試合は終わる。
バスケ部の勧誘をかわしつつ壱弥は駆け寄ってくると遥とハイタッチ。
「壱弥君採用!」
「やった!」
そういいながら深衣菜に抱きつく。
「やめてってば!!」
(ああーっみんなに誤解される!!)
抵抗するが離さない。
そんな二人をみて黄色い声は落胆へと変わっていく。
(こいつ確信犯だっっ!!)
「何やらかしてんだっっっ」
そんな声が体育館の入り口の方から聞えてきた。
そこには制服姿の裕が般若の表情で立っていた。
どうやら今来たばかりらしい。
「あっ裕さんっ」
「兄貴っっ学校は関係者以外立ち入り禁止じゃん!」
「ふっ妹がいてここの卒業生が無関係なわけないだろ。で、壱弥君?この手っっこの身体っっなにやってたのかなぁぁ?」
「ぷぎゃぁぁぁぁぁぁぁ~~っっ」
数分前まではヒーローのようだった壱弥は奇妙な叫びを上げ、裕に両頬を力一杯ひっぱられている。
「うわぁ・・・深衣菜ちゃんのお兄さん厳しいねぇ。」
「ただのバカですっっ」
「おいおいそれはないだろ?ん?」
壱弥から手を放し、遥に目を向ける。
そしてなにか言いたそうに、頬を赤くしてむくれている壱弥を見る。
「裕さんっこいつっ青龍だっっ見覚えあるだろっ」
「ああ・・・生まれる前にあった雰囲気にスゲー似てる・・・。」
遥は困ったような表情になる。
「深衣菜ちゃんのお兄さんとは初対面のはずだけどなぁ・・・」
「兄貴も壱弥もっ先輩に失礼だよっっ!」
深衣菜は壱弥と裕の腕を掴む。
「先輩っあたし達用事があるので失礼しますっっ」
(このままだと先輩も巻き込まれる!阻止しなきゃ!)
ずるずると引きずっていく。
そんな壱弥に遥は笑顔で手を振る。
「今の試合で大活躍した壱弥君はよろず同好会!よろず同好会の部員ですよ!運動部の依頼は遠慮なくよろしく~~っ」
しっかりと宣伝も忘れてない。
「ちょっとまった。」
裕は深衣菜から離れると、遥の方に駆けていく。
「君も一緒に来るんだ。」
「え」
裕は状況を把握していない遥を引っ張りながら戻ってきた。
「兄貴っっなんで先輩まで!」
「だってどう考えても青龍なんだよ。これからお前たちは特別な特訓をするけど、なにか見て思い出すかもしれないだろ。」
「特訓てなにっ!?っていうか!もし違ってたらどうするの!!」
「そんときは手品でしたで済ませるさ!」
「あのぉ・・・」
言い争いをしている深衣菜と裕に、恐る恐るというふうに遥が声をだす。
「よくわからないけど、今日は特に予定ないから付き合うよ。」
そして壱弥までも遥を連れて行くことに賛成し、深衣菜は渋々承諾することとなる。
荷物を取りに部室に行った後、校門へと向かう。
(兄貴が門のとこで待たせている人ってどんな人だろう?)
裕は皇丘の学生を一人連れてきているらしい。
どうやら裕が陰陽の力を使うことを知っているらしい。
(ただ者じゃないみたいだけど・・・ん?)
校門に人だかり。
なぜか女子ばかり。
「あっっあいつ!また!!」
裕が人だかり目指してダッシュ!
「またって・・相手はひとくせありそうね。」
「うわぁ・・ヤな予感してきた。」
「女の子ばかりっていうのがねぇ・・・」
人だかりの中、目立つ金髪ひとつ。
そこにめがけて裕が叫ぶ。
「燎ぉぉっ!!ナンパしてんじゃねぇぇぇぇっっ!!」
すると、女子の間から金髪の皇丘学園の制服を着た男が姿を現し、「よっ」と言いながら笑顔を見せる。
相手を掴んで引きずり出す・・・はずだったが交わされ、逆に手首を掴まれる。
「おいおいっ女の子に怪我させたらどうっべふっっ!!」
裕の左手でビンタを食らう。
「なあ、あの人兄貴を軽々とよけたよね」
「うん、次にビンタ食らわなきゃカッコよかったけどさ。」
「お前の動きはわかってんだよっほらっ来い!!」
金髪の男を女子の輪から引っ張りだす。
引きずられながらも、男は女子たちに笑顔で手を振るのを忘れない。
(うーん、すごい人だか軽い人だかわからないなぁ)
「三人とも待たせたな。こいつは俺と同じ高校の火澄燎だ。」
「君たちのことは裕に聞いてるよっよろしくっ」
エリート校と言われる皇丘の制服を着崩し、腰まで伸びた金髪は首のあたりでまとめ、両耳にピアス。
(壱弥とは違った意味でチャラ男・・・や、同類?)
燎は笑顔で挨拶し、深衣菜の目の前に来ると、優しく微笑む。
「君が妹の深衣菜ちゃんだね。話できいたよりもずっと可愛いね。」
「なっ「誰でもナンパしてんじゃねぇっっ!!」
壱弥よりも早く裕が叫び燎の頭に容赦なく拳を落とす。
「ぎゃふっっ!!しょうがねぇじゃんっっ女の子が目の前にいたらナンパするのが常識だろっっ!!」
「そりゃお前だけだっオラオラッとっとと連れて行きやがれッッ」
「人使いあらぁ~~いっっ」
文句を言いながらも校門の近くに停めてある白い車に向かう。
その後を深衣菜たちもついていく。
「ね、兄貴、もしかしてあの高級車に乗るの?」
「ああ。あいつの家に行くんだ。」
高級車といっても、燎にとっては親が使用していた車を練習用にと貰ったらしい。
燎は一見軽そうに見えるがセレブである。
「なぁ、練習用にって・・・?」
「あいつ免許取立てだからな。安心しろ死んだらまた転生しようぜ!」
「そうだなっ。」
「じゃあ俺もついでに」
「軽いノリで言うなっっ」
渋々と燎が運転する車に乗る。
意外にも安定していてほっとした深衣菜であった。




