気掛りな噺
2013/07/01
診断結果
牙声さんは『滴る』と『タイムリミット』と『死神』と『深紅』を使ってSSを書いてください!!頑張ってね(・ω・)ノ
ブログ【夏休みのはなし。】(http://ameblo.jp/kisei728/entry-11564507965.html)にて公開。加筆修正済。
月光の下、視界に入るものは何処も赤に染まっていて、鉄のような臭いが鼻腔を刺激する。吐き気がする程濃い死の匂い。此処に在るのは赤の海と死だけ。
目の前には夜闇を纏う死神、その手に持った大きな鎌から滴る深紅はきっと――。
麻痺した思考で辿り着いたのは死の恐怖よりも一人残したあの子の事。抗えぬまま、私もあの赤の海に沈むのだろう。あの子を独り置いて逝くのだろう。
タイムリミットが、近付く。
振り下ろされる刃が月光に煌いた。それはまるでスローモーションの様にゆっくりと、確実に私の骨を砕き断ち斬る嫌な音が耳に響く。
広がる赤に暗転する視界。
ごめんね、もう一緒に居てあげられないや。
ごめん、ごめんなさい。寂しがり屋のあの子の事だから、きっと独り泣くのでしょう。本当はまだ見守っていてあげたかった。本当はもっとずっと、一緒に居てあげたかった。
あの子の泣く声が、遠くで聴こえたような気がした――――。




