とある湖の噺
2013/06/25
診断結果
牙声さんは『垂らす』と『未来』と『風邪』と『蒼』を使ってSSを書いてください!!頑張ってね(・ω・)ノ
ブログ【服と食べ物のはなし。】(http://ameblo.jp/kisei728/entry-11560432780.html)にて公開。加筆修正済。
もう夏も近いと言うのに、此処だけは変わらず冷たい風が吹き抜けていた。目の前に広がる湖の周囲には濃い霧が立ち込め、ほんの数メートル程先はぼんやりとしか確認する事は出来ない。水気を含んだ濃密な空気が体に纏わりついて、何とも言えない倦怠感に襲われた。
吸い寄せられるかのようにその湖へと近付く。ふと、何かの気配を感じて目線を落とした。水辺には湖の色を写した蒼い花が頭を垂らす。まるで先を見る事を拒絶するかの様に。
今の私と同じね。
そっと湖に足を入れた。此処まで裸足のまま歩いてきた所為で足は傷だらけ、冷たい水は刺す様に痛む。そんな事は気にも留めず、ゆっくり確実に湖の奥深くへと向かう。
これで良いんだ。馬鹿な事をするなと、風邪を引いたらどうするんだと、そう声を掛けてくれたあの人はもう居ないのだから。
あの日思い描いた未来は、何処へ。
もう此処に無いのは確かで、なら私が此処に居る意味が無いのも確かで。
だから、あの人の元へ。また一緒に居たらきっと、あの未来が待っている気がして。あの日夢見た幸せな世界が待っている気がして。
腰の辺りまで水に浸かり、それでもまだ歩みは止めない。一歩、踏み出した瞬間水に呑まれた。
深くなった湖の底、薄れゆく意識の中であの人の面影を見た。




