黄泉の夢をみる噺
2013/06/20
診断結果
牙声さんは『離さない』と『川』と『足跡』と『蒼』を使ってSSを書いてください!!頑張ってね(・ω・)ノ
ブログ【ふりーだむなはなし。】(http://ameblo.jp/kisei728/entry-11556739548.html)にて公開。加筆修正済。
俺が死ぬまで後どのくらいだろう。俺は後何日生きられるのだろう。
病室から眺める景色はいつもと何ら変わりは無く、ただ淡々と時間だけが過ぎていく。何一つ変わらないその景色が羨ましくて、憎かった。
もう長くない、そう告げられたのはつい1ヵ月程前の事。そんな事、言われずとも気付いていた。日に日に弱っていく体が何よりの証拠だ。まだ若いのに、残念ね、幾つもの同情の言葉を浴びた。そんな事微塵も思っていない癖に。口先だけならどうとでも言える。
ベッドの脇のテーブルに置かれた元気だった頃の自分と友人が写った写真が視界に入って溜息を吐く。俺も周りも、あの時から随分変わってしまった。
俺が消えた所で、誰も哀しむ人なんて居ないんだ。
その夜、ひとつの夢をみた。
ゆっくりと目を開ける。視界に入ったのは紫紺の空に散らばる光と何処までも続く草原。頬を撫でる少し冷たい風が心地良い。裸足のまま、見えない“何か”に導かれるかの様に足を踏み出した。
立ち止まった視線の先、見付けたのは小さな川。空の蒼が水面に映る。そんな中に映り込んだ自分の顔は、あの写真のままで。もしやここが天国なのか、と思うと同時に恐怖が湧いて、思わず今来た方を振り返った。草を踏み分け歩いてきた跡がゆっくりと、確実に消えている。
足跡が消える。俺の歩いてきた証明が消える。
――俺の生きた証が、消えていく。
恐怖で体が震える。綺麗で残酷なその光景は俺の心を掴んで離さない。それでも目を逸らしてはいけない気がして、目を逸らせば俺が俺自身を否定してしまう様な気がして。
その軌跡が消えるのをずっと見ていた。
最後の一つが消え、自分の体が足元から光の粒子になって消えていく。風に攫われ四散した光はすぐに闇へと消えた。その光は徐々に上半身にも浸蝕し、視線を落とした両手すらも光に呑まれる。
ここはもう黄泉の国だったのだと、俺はもう死んでいたのだと、今更気付いても遅かった。




