壁を壊す噺
2013/06/11
診断結果
牙声さんは『揺らす』と『地』と『苦無』と『茶』を使ってSSを書いてください!!頑張ってね(・ω・)ノ
ブログ【本日のにゃんこのはなし。】(http://ameblo.jp/kisei728/entry-11549986494.html
全て夢なんじゃないかと思った。でも目の前に突き付けられる現実は残酷で。こんな茶番なんて早く終わってほしい、だなんてただの戯言でしかなく、未だ終わりの見えない戦いは続く。
右手に握り締めた苦無だけでは心許無くて。容赦無く立ちはだかる何処までも高い壁に足が竦んだ。
俺がやらなければ。俺の為にも、諦めて去った仲間の為にも。
握り締めた剣に想いを託し立ち上がる。震える躰を叱咤して走り出した。
裂帛の気合いを叫びに、強く握った右手を振り下ろす。
一度じゃ壊せないけれど、何度もやれば壊せるかもしれない。こんな所で止まれない。俺は前に進みたいんだ。
どんなに己が傷付こうと、手にした苦無の歯が零れようと、決して手を止めない。やめない。諦めない。
拡大していく亀裂が、仲間の想いが、背中を押してくれるような気がして。
何度も何度も数えきれない程腕を振り下ろし、疲れ果て手が止まりそうになる。
俺も、ここまでなのか。こんな所で終わるのか。次々と減っていく仲間から『お前だけは諦めないでくれ』と託された想いに、俺だけは諦めてなるものかとここまで来たのに。
――そうだ、こんな所で終われない。
動けなくなるまでやってやろう。後一回、後一回くらいなら出来る筈だ。
最後の力を小さな剣に、高い壁へとぶつけた。
瞬間、今まで散々壊そうとしても壊れなかった壁が音を立てて崩れる。地を揺らすその轟音と破片の向こうに見えたのは、ずっと求めていた光だった――。
本当に夢を叶えられるのは一握りしか居ないから、諦めていく人なんて数えきれない程居るんだと思った。それでも諦めなかった人が夢を叶えられるのかもしれない。




