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大丈夫


…えー、わざわざ直接言い残したってことは、本当に嫌われてないってことでいいのか?


もう、わけわからん。


少し安心はしたけど、デートの付き添いは大丈夫なのだろうか。


嫌われていないにしても、日野とオレが仲が良いってことはないのだし。


普通に話せるのかとても不安だ。

会話が続けばいいのだけど…。


頭の中がぐちゃぐちゃで目が回りそうだ。


そうして席に座ったままでいると、



「おい、日野ちゃんとおまえ、手紙まわしてたろー」


「ずりーぞ碧!」


「ねえ、なに話してたのさ?」



オレと日野との手紙のやりとりを見ていたらしい男子たちが寄ってくる。


そうだ、デートの付き添いのことで頭がいっぱいだったせいで忘れてた。


日野は美人でモテる皆のマドンナ。


そんな子と手紙でやりとりなんかしていたら、そりゃあ男子たちは黙っちゃいない。


ていうか、日野と二人きりでないにしても一緒に遊びに行くなんてバレたら大変だ。


なんとかしてごまかさないと。



「いや、そんなたいした話してないから」


「えー嘘だー」


「ほんとほんと。ほら、次移動だぞ。早く行かねーと」


「あ、やっべー。教科書ロッカーだわ」



周りに群がっていた男子たちが廊下に出ていく。


なんとか話をそらすことができた。


しかし、出かけることを言わなくても目撃されたらやばい。


その場で見つかってしまえば言い逃れできないぞ。

変装でもしていくか?


――いや、それはおかしいだろ。


また悩みが増えてしまった。



「おーい、いつまで座ってんだよ!早く行くぞー」



ことの元凶が廊下から顔を出してオレを呼ぶ。


あーもう!



「今いくからー!」



やけくそになって叫び、思い切り席を立ったのだった。





*





「日曜日、栗本と楓のデートに沙依と付き添いで行くんだって?」



風呂からあがって部屋に入ると、灯夏が勉強机に向かいながら聞いてきた。


よく知ってるな…。

まあ、あの二人と仲良いんだし知ってて当然か。



「日曜なのかはよくわからんが、行くみたいだな」


「なーによ、他人事みたいにー」



灯夏はそう言いながら、いすごとくるっとこちらへ身体を向ける。


その顔は眉をひそめ少しむっとしていた。


うっ、こういう顔をするということは、機嫌を損ねてしまったようだ。



「いや、別に他人事っていうか…なんというか、ほんとに大丈夫なのかなーって」


「なにが?」


「オレなんかと日野が、あいつらのデートに付き添って大丈夫なのかって」



どかっと床に座って、首にかけていたタオルで頭をわしゃわしゃとふきながら続ける。



「嫌いじゃないって言ってくれたけどさ、やっぱ不安だわ」


「嫌いじゃないって言われたなら、」



こちらに近付き、オレの正面に灯夏が座る。


そして真っ直ぐな目でオレを見つめ、微笑んだ。



「大丈夫だよ。きっと、大丈夫。沙依は本当に嫌いだったら何も言わないよ」



小さい子に言い聞かせるかのように、優しく丁寧に言う。


こういう時、灯夏って姉っぽいかもしれないなんて思う。



「そういうもんなのかなあ」


「そういうもんなの。あの子、嘘つくの苦手だから」


「よくわかってんのな、日野のこと」


「もっちろん!大親友だからねっ」



いつもの調子に戻り、にかっと歯を出して笑う。


…灯夏が言うなら大丈夫そうだな。

こいつの言うことは信用できる。


たまに嘘を言うときもあるけど、本当に悩んでいたり不安になっているときはいつも、安心できる言葉を言ってくれる。


欲しい言葉を言ってくれる。


血が繋がっていない双子だとしても、10年以上一緒に暮らしているんだし自分より自分のことをわかってくれている。



「まあ、また何か困ったことでもあったら言ってよ」


「ああ。ありがとな」


「じゃあ、あたし風呂入ってくるわー」



そう言って灯夏は部屋を出ていった。


よし、灯夏の心強い保証も貰ったことだし頑張っていこう!



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