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嫌いじゃない




和真と倉沢が付き合い始めてから数日後。



2人は家が反対方向だから、和真が時間があって送る以外では一緒に帰ってはいなかった。



なので周りには全然2人のことは知られていない。



そんなある日。



オレは和真からしつこくつきまとわれていた。




「なあ、お願いだよ」



「オレじゃなくてもいいだろ」



「一番仲良い友達っていったらおまえなの!」




なにをお願いされているかというと…




「だからってオレと日野がおまえたちのデートに付き合う必要ねえだろ」




そう、オレは和真と倉沢のデートに日野と付き添うよう頼まれていたのだった。




「もうほんとさ、俺二人っきりじゃあ恥ずかしくて死んじゃうよ」


「別に付き添うのは構わないんだけどさ、日野が嫌がるんじゃね?」


「え?なんで?…ああ、嫌われてるかもーとか言ってたなあ、おまえ」



そう言うと和真は、あれ?と首を傾げ、ぶつぶつと何か言い始めた。


なんなんだ。


顔をしかめていると、和真は納得がいかないけどいいやって感じな顔でまた話し始めた。



「じゃあ、日野がいいって言ったらおまえも来るんだな?」


「まあ、うーん…いいけど」


「よっし!今の言葉忘れんなよっ」



和真は顔を輝かせながら、倉沢の席で倉沢と話している日野のもとへ向かった。


どうせいいなんて言わないだろう。


あまり話さない人と、ダブルデートのようなことなんてしたくないだろうし…。


もし行くことになったら本当に辛そうだ。


隣でぶすっとしている日野と、冷や汗垂らしているオレ。

その間に続く沈黙。


…これはだめだろう。絶対だめ。


しばらくして和真が戻ってきた。


すごく嬉しそうな顔をしている。まさか…



「日野、いいってよ!」


「……まじで?」


「まじまじ!大まじ!よし、決まりなー!」


「いや、ちょ、待てよ、はあ?え?」





*





何かの間違いだろう。


オレを嫌っているはずの日野が、オレと一緒に遊びにいくなんてありえない。


倉沢もいるけど、あっちは恋人同士で…。


もうなにがなんだかよくわからなくなってきた。

頭をかかえ、悶々とする。


…もういっそのこと、本人に直接聞けばいいんじゃないか。


今は保健の時間で、先生は教科書を見ながら淡々と喋っている。


隣を見ると日野が暇そうにしていた。

これなら多分大丈夫だろう。


オレはルーズリーフを1枚取り出す。



『デートの付き添い、オレと一緒に行っていいの?』



なんか文章な気がして仕方なく、何度も何度も読み直したが他の言葉は思い付かない。

もういいや、これで。


先生の目を盗みながら四つおりにした紙を日野に渡す。


こちらに気付くと目を大きく見開き、すぐにきっと目をつりあげる。

そして紙を開いた。


…って、ずっと見られてるのも嫌だろうし見ているのはやめよう。


オレは教科書に目を落とした。


すると、すぐに返事が返ってきた。



『うん』



2文字だけ…。

これ、大丈夫なのか?



『本当にいいのか?』


『いいよ』


『なんで?』


『ひまだし。楓のためだし。』


『おれのこと、嫌いなんじゃないの?』



…ついに書いてしまった。


てかよく考えてみれば、本人に嫌いなんて言うか?



―オレだったら絶対言わない。

あーなんかもう恥ずかしくなってきた。


やっぱいい、と紙を日野から戻そうとしたとき、もう返事を書いたらしく紙を渡されてしまった。


そーっと紙を開く。



『嫌ってなんかない。どうして?』



…ですよね。

普通嫌いなんて書かねーよな。


でも今までで一番文章が長い。


しかもこちらに疑問系で返してくれている。


話題が話題だけど、少しは進歩している気がしなくもない。



『いつも睨んでくるし』


『私もともと目付き悪いし、目が悪いから睨んでるように見えるだけだよ』


『おれのこと、避けてない?』


『避けてない』


『あんまり話もしてきれないし』



返事を書き紙を渡すと、チャイムがなってしまった。


号令がかかり、あいさつを終える。


皆が動き出すと、日野がすぐにこちらを向いた。



「とにかくっ」



少し大きめの声で、口を尖らせて言う。



「あんたのこと、嫌いじゃないから」



そしてさっさと倉沢のもとへ行ってしまった。




テストがありなかなか更新できませんでした^^;


一気にばーっと更新することもあれば、このように間が空くこともあるので気長に読んでもらえると嬉しいです。

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