脱衣所にて
「後ろ向かないでね」
「なるべく」
まさかの脱衣所共同かよ!! 大人二人用の風呂だから有り得ない話じゃないけど、いや有り得ないか? どっちにしろ困るんだよ。さっきから俺の息子暴れたくてうずうずしてるんだよー!!
あぁ、見たいけど見れねぇ。見たらボコられるならまだしも、小さい時にウシガエルで顔面パンチしてきた女だ。大人になった今となれば、家にクマとかワニとかライオンなんか送り込まれるかもしれん。いや、地味にヘビとかタランチュラとかだろうか。
「広視、もうこっち見ていいよ」
タオル巻き終わったのか。
「おう」
素っ気ない返事をしながら、内心ドキドキワクワクで振り向くと、浸地は少し頬を紅く染めて、背を向けたまま、顔だけこちらを向いていた。
うわぁ、すっげぇ綺麗だ。
ごくり。胴だけ白い絹一枚に包まれた浸地の白い柔肌と曲線美、すらりと伸びた脚と華奢な腕に見惚れて思わず唾を飲み込んだ。やばい、見返り美人を前に理性が崩れ落ちそうだ。
「だっせ~、両手半分日焼けして赤くなってやがる!」
「もう、それはお互いさまでしょ」
素直に「綺麗」と言えず茶化す俺に、浸地は頬を紅に染めたまま言い返した。
小さい頃から知ってた。浸地は凄く可愛い女の子だと。
でもそんなこと、口には出せなかった。