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いちにちひとつぶ2  作者: おじぃ
湘南での日々
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今すぐ逃げ出したい

 月曜日、アロハとオハナちゃんは学校に来なかった。メールをしても返事がない。担任いわく二人揃って風邪というが、俺は嘘だと思う。


 湘南台に引っ越してから通学手段が電車からバスに変わり、帰りのバスに揺られる40分間、このまま捜しに出かけてしまおうと考えていたが、闇雲に捜しても見つからないのはわかっているから帰宅した。


 住み慣れないコンクリートのマンション。未開封の段ボールが積まれた部屋の使い慣れたベッドの上で、俺はモヤモヤしていた。メールを送ろうか、捜しに行こうか。


 すると、ケータイのバイブが鳴った。20時だった。送り主はアロハだった。


『心配しないで。生きてる。オハナちゃんもいっしょ』


『どこにいる?』


 素早く返信した。


『県内のビジネスホテル。少し家族と距離を取りたいの』


 すぐに返信が来た。


『家には戻る?』


『母親と会うのがつらい。でも、お金がないからそう長くは外泊できない』


 家族と距離を取りたいからといって、子どもだけの暮らしは極めて困難な現実。


 神は乗り越えられない試練は与えないというが、今すぐに逃げ出したい現実を前に、目眩がして、呼吸が荒くなって、頭が重くなって、心臓が潰されそうになるあの感じを、俺はよく知っている。対象人物がずっと頭から離れなくて、次会ったときの恐怖感、いざ会ったときの『案ずるより産むが易し』なんてことは全然なくて、ただただ予想通りまたはそれ以上の苦痛が待ち受けている。


 逃げたい、今すぐこの現実から解放されたい、ただそれだけ。


 平穏に暮らしたい。ただそれだけなのに。

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