害悪的下等人種
日曜日の昼前、私は小田原の実家から広視にメールを送った。
『これから会わない?』
手が自然に、そう打ち込んでいた。
メールのやり取りはよくするけれど、最近の広視は、明らかに元気がない。
どうにか元気づけたいけど、私も元気がない。
小学校の教員をしている私。受け持っている1年3組でイジメがあった。家庭訪問をしたとき、イジメている側の親に「うちの子がそんなことするわけないでしょ! それにね、イジメっていうのは、イジメられるほうにも原因があるのよ! みんなと仲良くできる子を育てるのが教師でしょ!」などと怒鳴られ追い返された。
それから、学校には嫌がらせの電話が毎日。そんな中で、テスト問題の作成、採点、成績判定などなど、通常業務もこなさなければならない。
教育者なんて、なるものじゃない。
自分が小学生のときだって、イジメられたじゃないか。
それを、大人になった私なら、なんとかできる、あの頃の自分のような子を、一人でも減らす。
そんな想いで教師になったけど、現実はあまりにも過酷。
そんな私が良かれと思って広視に手を差し伸べて、見当違いな方向へ導いてしまったらどうしよう。
そんな言い訳を内心でしつつ、保育士をしている親友の未砂記も同じような境遇にいて、相談しづらい。
私も、もう限界だ。
自分の思い通りにならない相手を攻撃する、未知の相手を攻撃する、幸せそうな人を妬んで攻撃する。
なんで攻撃する?
心が満たされていないから。
それは、環境だったり、我儘だったり、他者との思想の違いだったり。
人間なんて解かり合えない生きもの。
それを一緒くたにしようなんてほうが、どうかしている。
みんな違っていい。
認め合わなくてもいい。
それぞれの世界で幸せに生きていられれば、それでいい。
なんでそれが、わからないかなぁ、害悪的下等人種め。