ジャズとランチ
「「いらっしゃいませー!」」
俺たちはこんにちは~と会釈して、スレンダーな中年女性に「テーブル席へどうぞ」と案内された。
駅から徒歩15分、とりあえずランチをということで浸地に連れられたのは、レンガ造りの洒落た雑居ビルに店を構えるラーメン店。店内ではジャズが流れていて、内装は白を基調とし、各席には荷物を入れる籠が用意されている。ラーメン店というよりは落ち着いたバーといった雰囲気。窓は北のバス通りを向いているが、照明が点灯していなくても適度に明るく、むしろそれが落ち着いた雰囲気の隠し味になっている気もする。
夫婦で営んでいるその店は、旦那さんが調理を、奥さんが注文、会計などを担当し、役割分担がきっちりできている。
俺たちは店内中央の二人用テーブル席へ通された。他に出入り口付近にカウンター席が5席、奥に四人用テーブル席が一卓ある。カウンター席ではTシャツ短パンのラフな中年男性二人組が世界旅行の思い出話をしている。
「いらっしゃいませ~。お決まりになりましたらお呼びください」
着席すると間もなく、奥さんが欧米諸国の牛乳瓶のようなボトルにたっぷり入った飲料水と、底面にIKEAのロゴが刻まれたハードグラスに注がれた氷水を運んできてくれた。飲料水のボトルが各席に用意してくれるのは大変ありがたい。
「おお、けっこういろんなメニューがあるね」
「ほんとだ」
醤油、塩、味噌といった定番の麺からトムヤムクンらあめん、豆乳辛味噌らあめん、油そば、厚切りチャーシュー丼に明太子ライスなど、選択肢がたくさんある。
結局俺は醤油チャーシュー麺、浸地は豆乳辛味噌をチョイス。
調理の間、俺は何か会話を切り出そうとするも、気まずくてなかなか端を発せない。
お読みいただき誠にありがとうございます!
更新大変遅くなり申し訳ございません。次話の執筆は開始しております。