女湯への降臨を許されし男とそうでない男
「須賀川くん、大丈夫? 降りられなくなっちゃったの?」
男湯と女湯の仕切りを跨ぎ、落下しないよう神経を集中しようとしても女子の視線やボコボコにされた磐城くんと音威子府くんが気になり、焦燥を抑制できずにいると、クラスメイトの白百合深雪さんが、自らのからだを覆い隠しながら、心配そうな表情で僕を見上げていた。
「あ、はい」
どう見ても覗きをしている僕は、その一言を発するのが精一杯で、声を掛けられた途端、頭にカアッと血が上り、頭皮から汗が噴き出してきた。
白百合さんは「ちょっと待ってて」と言い残し、脱衣所へ引っ込んだ。そのとき僕は思わず彼女の後ろ姿を見てしまい、ドクドクと脈動が高まってきた。それから他校の生徒を含む数人の女子も僕に「降りれる?」、「大丈夫?」などと声を掛けてくれた。みんな僕を心配してくれているのか、それとも降りた瞬間に襲撃しようと企んでいるのだろうか。安堵と不安が交錯する。
それから随分経過したように感じたが、実際は数分後だろうか。浴衣姿の白百合さんが一人、アルミ製の梯子を抱えて浴場へ戻り、僕の傍へそれを立て掛けてくれた。僕は「ごめんなさい、わざわざありがとう」と謝罪と礼をして梯子を下り、無事女湯の浴場に着地した。
「大丈夫? どこか怪我してない?」
肩までかかる黒髪は水が滴っており、浴衣は肩と膝下の部分が濡れてしまっているのも拘わらず、白百合さんは覗きをした愚かな僕を気遣ってくれている。その優しさに、本当に頭が上がらぬ思いだ。僕が全裸だからか、白百合さんはこちらを見ないが、数人の女子のチラチラという視線を感じて恥ずかしくなってきた。これが覗かれるという感覚かと納得しつつ、僕もあからさまに視線を逸らすのも失礼な気がして、彼女らのからだにチラチラと目を遣りつつ、羞恥と困惑に苛まれた。
「う、うん、大丈夫。僕は早くここを出ないとね。白百合さん、風邪引かないようにね。本当にありがとう」
そうだ、早くこの場を出なければ。脱衣所や廊下に人がいないか、ロッカーや壁に身を隠しながら念入りに確認をしつつ、やむなく気絶した二人を放置し、男湯へ戻った。
「お前らなに羨まけしからんことしてるんだ!」
彼らは攻撃的な女子により各校の教職員に突き出され、廊下には怒号が男性教諭の響き渡ったが、幸い退学処分には至らなかったようだ。
あけましておめでとうございます!
2015年最初の更新は本作となりました。後書き記述時現在2時32分、CDTVでSEKAI NO OWARIが熱唱中です!
本年もよろしくお願いいたします!