変態道産子との出会い
俺たちが合宿しているのは温泉宿。温泉宿といえば露天風呂。露天風呂といえば、年頃の男子がする事はアレだ。
という事で、割り当てられた部屋に着き、荷物を置くとさっそく神太郎と隆盛に呼び掛けた。
「覗きは神への背徳。禁止領域故に我その理を犯さぬ」
「禁止領域? だからこそ突破するんだろ?」
「No! 神は今この瞬間も我らを見守っている! 故にいつ何時も背徳は許されぬ」
左手は親指と人差し指を鼻に当ててデルタを形成、右手は開いて前に出して、『ダメ』のポーズ。
よくもまぁここまでV系バンドに侵されるもんだ。ちなみに神太郎は無宗教らしい。
「広視よ、女子のカラダを拝見したい気持ちは解る。けどな、後に覗いた女子を愛してしまったら、想いを伝えても、『変態とは近付きたくない』の一言で終わってしまうのだよ」
「ビッグボディーのくせにそんな事心配してやがるのか。バレなきゃいいんだよバレなきゃ」
結局、俺は一人で覗きをする運びとなった。まぁ良い、ヘタレ男子どもよ、後悔しやがれ。俺は一人、勇敢にパラダイスを堪能してやる。
さて、先ずは脱衣所の下見だ。中に入って監視カメラを仕掛けるのは流石にまずいので、脱衣所の出入口に小型のセンサーカメラを仕掛ける。映像はワイヤレスネットワークで部屋から常時監視する。
早速、それを仕掛けるべく脱衣所の出入口に向かう。
「うっほうっほうっほほっ! うぅほほほーい!」
向かい側から一人、変な歌を口ずさむ赤いジャージを纏った男子の姿を捉えた。もう温泉入るのか。
と思いきや、彼は男用の脱衣所をスルーし、迷う事なく女用の脱衣所へ入っていった。
「おいおいっ! そっちは女湯だぞ!」
コイツ、入る所を間違えたのか!?
「温泉宿で漢がやる事といえば!?」
やたらハイテンションな彼に問われた。なるほどな。
「覗き」
理解した。けど、この方法は頂けない。
俺はつい先日の出来事を思い出す。
つい先日、浸地と一緒に混浴の入浴施設に行った日だ。俺はウハウハで浴室へ飛び込んだのだが、そこは俺にとってパラダイスとは程遠く、オバァさんたちのパラダイスだったのだ。そこで俺は、逆レイプをされそうになった。ここでも同様の事態が発生しかねない。
俺はその旨を彼に伝えた。
「なるほど。確かにバァさんには興味ないなぁ」
納得してくれたようなので、その流れでセンサーカメラを用いた作戦を伝えた。
「うおおおおっ! ワンダフォー!」
「よし、今から俺の部屋に来てくれないか。俺は磐城広視。神奈川から来てる二年生だ」
「俺は札幌から来た音威子府神威、一年っす!」
「よろしくな!」
「よろしくっす!」
俺と神威はガッチリと握手を交わし、部屋へ戻ってモニターを起動した。
同じ部屋のヘタレ二人は呆れた顔で俺たちの勇姿を見守っていた。
よっしゃ! パラダイスに向けて作戦開始だ!
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今回から登場した北海道札幌市出身の神威は、拙作『さつこい!』のメインキャラクターです。当作品の広視、アロハ、オハナは『さつこい!』にゲスト出演しております。