所持金10円
「「おつかれさまでしたー!!」」
夕方16時半頃、祭りが終わり、俺たちボランティアはその後片付けを終えて自治会や他のメンバー同士で集まり挨拶をして解散となった。
その後、俺と浸地は一日中露店で働き、全身汗だくになったので、浸地の提案で近所のスーパー銭湯で汗を流す事にした。替えのシャツはあるがトランクスは使い回しだ。
「浸地は替えの下着あんの?」
なに訊いてんだ俺。いくら幼なじみだからって、相手は22歳だぞ。でも浸地だからこそ、こういう事を自然に言える。
「ううん、無いからそこで買ってくる」
言って浸地が指差した先は、公園の斜め向かいにある大型ショッピングセンター。そこに行けば生活上必要な品は大抵揃うと、この街に住む同級生は言っていた。俺も下着を買おうかと財布を覗くと所持金10円。5円チョコ2個買えるじゃん!! 超リッチじゃね!? でも風呂上がりの牛乳買えねぇ!! Oh Shit!!
「広視も替えの下着買ってく?」
「いや俺は10円しか持ってないからいいや」
「プッ…」
「いま鼻で笑ったろ!!」
やべ、でかい声出したら周囲の視線を集めちまった…。
「うん」
「認めるのかよ!!」
「だってぇ、高校生で所持金10円はないでしょ!!」
「う、うるせぇ!!」
「まったくしょうがないなぁ、私が買ってあげるよ。お風呂入ってまた同じ下着穿きたくないもんね」
「マジで!? いいの!? サンキュー!!」
「うん、私も下着買いに行くからお金渡すね。じゃあまた後で」
言って浸地は俺に野口さんを二枚渡してくれた。そういや野口英世の家は福島県のばぁちゃん家の近くだよな。
「それとも私と一緒に下着選びに行く?」
マジで!? 俺が浸地の下着を一緒に選ぶ!? やべぇ、行きてぇ!!
「べ、別にお前の下着なんか興味ねぇよ」
でも素直に行きたいとか言ったらきっとドン引きされるよな。
「広視の下着を一緒に選ぼうか、って意味なんだけど。顔紅くしちゃって、かわいっ♪」
「うっ…」
こいつ、ハメやがった…。
小さい時から、俺はこの女性に頭が上がらない。