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いちにちひとつぶ2  作者: おじぃ
福島のなつやすみ編

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28/52

風評被害で

 夜まで祐紀さんのお店で過ごし、叔母さんに迎えに来てもらって親戚宅で寝泊まり。


 翌日、月曜の朝になって親戚宅の家族が出払うと、俺は20分くらい歩いて祐紀さんのお店の周辺にあるお札になった偉人の記念館や世界のガラス細工を展示したり販売している館を一人で見て回った。


 記念館にある偉人のロボットが恐ろしいくらいリアルで、顔や肌の色のみでなく、首を動かしたり瞬きしたり、質問ボタンを押すと身振り手振りをしながら答えてくれたりして面白い。百聞は一見にしかずなので、気になったらぜひ生で体感して欲しい。


 ランチは祐紀さんのお店で頂く予定だが、昼時は周辺施設の観光客や従業員が押し寄せて忙しそうなので、一旦バスで駅に出てから歩き、スーパーマーケットにテナント入りしているTSUTAYAで漫画の単行本を買い、再びバスで戻った。このバスは湖畔を走るので雄大な湖を見渡せる。


 記念館前のバス停で降りて、祐紀さんの店に入った。


「おーす広視くーん! 今日も来てくれたんだねー!」


「こんちはー! 今日はソースカツ丼ご馳走になりに来ましたー!」


 ご馳走になりに来たとはいえ当然お金は払うぞ。


「はいよー!」


 言って、祐紀さんは俺にお冷やを注いでから厨房に入り、調理を始めた。厨房では祐紀さんのご両親が昼時が終わってオフピークの皿洗いに追われている。接客は殆ど祐紀さんに任せているようだが、俺は昨日ご両親とも挨拶をしている。


「こーんにちはー! ってありゃ? 広視くん、きのうぶりー」


 接客担当が誰も居ない中で美里さんの登場。


「こんちはー! 祐紀さんは今、調理中です〜」


「あややー、じゃあ座って待ってるか!」


「あらあら美里ちゃんに広視くん、お冷や入れるからね〜」


「こんちは!」

「こんにちは! いや〜、今日も暑いね〜」


「こんにちは。ホント暑いわねぇ。いまトマト切るからちょっと待っててね」


「ありがとー」

「ありがとうございます」


 祐紀さんは美里さんの来店に気付いていないようで、代わりにお母さんが出て来た。輪切りにして塩を振り掛けたトマトは昨日もサービスでご馳走になった。夏はこれが美味いんだな〜。


「あとおばちゃん、私はかき氷のイチゴにミルク掛けたのお願いね〜」


「はいよー!」


 おばちゃんが厨房へトマトを用意しに引っ込むと、美里さんは俺の正面に着席した。


 美里さんのかき氷はトマトと一緒におばちゃんがすぐに用意してくれた。


「おーす美里ー! 広視くんお待たせー!」


「おーす!」

「いただきまーす!」


 数分後、俺と美里さんが出してくれたトマトをかじりながら談笑していると、祐紀さんがソースカツ丼を運んで来てくれた。白菜のお新香とみそ汁がセットになっていて、丼のサイズは牛丼チェーンによくある並サイズで、ソースがどっぷり掛かっておらず、空腹で標準的な胃袋の成人女性でも食べ切れそうな量だ。


「うん、衣がサクサクして美味い!」


 昨日も思ったが、食堂の看板娘とあって料理上手だよな。


「ありがとう!」


「祐紀んは繁盛してるよね〜」


「だね〜。お客さん、少しずつ戻って来てくれた。震災直後は風評被害でどうなるかと思ったけど、何とか持ち直してきたよ。ってかあんだけ揺れてこの古い家よく潰れなかったわ」


「大黒柱が守ってくれたんだね〜」


 この場合の大黒柱とは、一家の主ではなく直接的な意味だ。


 風評被害か〜。確かに例年よりは観光客少ないもんな。実際のところ、このお店も大変なんだろうな。


 東日本大震災で、この辺りでは震度6強を記録。俺が住む神奈川県では震度5強、または弱を観測した。当時、俺は学校で授業を受けていたのだが、揺れている時間が長かったので目眩がした。学校は海の目の前なので、全校生徒、職員は海から離れた線路の向こうにある公園へ急いで避難したのは記憶に新しい。湘南では津波が砂浜まで押し寄せたものの、街までは被害が及ばなかった。

 あの時恐怖を引き立てたのは、大きな揺れよりも悲鳴だった。男子は冷静に机の下へ潜ったり、教室の自動ドアを手動モードに切り換えて開けたりしていたが、普段から騒がしい女子たちがキャーキャー騒いで、こちらの胸までざわめいた。


 一生忘れないあの悲劇。復興への道はまだまだずっと先まで続いている。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 物語はのんびり進行しておりますが、福島県での夏休みではいくつかイベントのようなものを考えております。

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