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いちにちひとつぶ2  作者: おじぃ
福島のなつやすみ編
24/52

いちごいちえ

 マムシの脅威から美里さんを救った(?)俺は、そのまま二人でサイクリングロードの終点、野口英世のぐちひでよ記念館方面へと自転車を押しながらゆっくり歩いている。


「広視くんは何処から来たの? レンタサイクル乗ってるって事は地元の人じゃないよね?」


「神奈川っす」


「へぇ、遠い所からよく来たね。なんで福島に来たの?」


「親戚の家がこっちにあって、そこで顔見せとばぁちゃんの墓参りを兼ねて…」


 知り合って間もない女の子との会話、ましてや二人っきりなんて激レアなシーンに困惑し、緊張でぎこちない口調になってしまう。と、思いきや…。


「そして」


「そして?」


 美里さんは俺の顔を覗き込む格好で首を(かし)げる。


「素敵な出会いを求めに来たのさ!!」


 キリッ! 俺は高らかに声を上げて美里さんの方を向いた。荘厳な磐梯山を背景に、広大な田園風景が命の雄叫びを拡散させてゆく。


 何やってんだ俺。フラれておかしくなったのか? と頭の片隅で思いつつ、引くに引けずテンションを保つ。


「わ~お、それは素晴らしいね! そうそう、私ね、きょう素敵な出会いがあったよ!」


 何ぃーっ!? それって!? まさか、まさか!? バカな事でも言ってみるもんだな!


「それはね、広視くんと出会えたこと!」


 キターッ!! ズドドドドカーン!!  マイハート、イズ、銃撃により爆発炎上!! こんな嬉しい事言われたら頭に血が上って顔が紅潮しちまうじゃねぇか!!


「一期一会を大切にね!」


「え? 一期一会?」


(いちご)じゃないよ?」


 えぇ、解ってますとも。


 マイハート、イズ、クールダーウン。


 そうですよね、一期一会ですよね…。えぇ、一期一会を大切に。おっしゃる通りでございます。がくっ。心が折れた。


「どうしたの? 疲れちゃった? お腹空いた? 顔色悪いよ」


「ええ、ちょっと。夏バテですかね」


 一期一会と言われた俺はショックを隠しきれない。一を十にも百にもしたい気分になっていたのは自分だけだろうかと心は沈み込んだ。


「そうかぁ、暑いもんね。じゃあうちでご飯食べて涼んでいきなよ!」


「え!? まさか手料理を!?」


「うん! 私、料理得意なんだぁ♪♪」


 にこっと笑む美里さん。俺は手料理に期待しつつ、あどけなさと色気を併せ持つ笑顔に再び心奪われ、テンションは再びグツグツと沸騰しそうなくらい上昇してきた。


 ◇◇◇


 ああ、やばいよ、あっという間に惚れちゃったよおいおいっ! まだ出会って30分くらいしか経ってないのにいきなりお家に招待されて手料理食わせてくれるって♪♪


「広視くん、キャベツ欲しいから八百屋さん寄っていい?」


「どうぞどうぞ! いくらでも!」


 サイクリングロードを抜けて国道沿いにある八百屋さんに到着。


「あっ、ユウガオ」


 店頭に大小様々な形状のものがズラリと並ぶユウガオは、冬瓜のような見た目だけど渋味がなく、水を使わずにそれに含まれる水分のみで煮物に調理出来るとても水分豊富な根菜。やわらかくてやさしい、この地方のお袋の味。


「広視くん、ユウガオ好きなの?」


 美里さんは俺がユウガオに視線をやっているのに気付いたようだ。


「ユウガオは煮物にすると最高っすね!」


「そうか~、おじちゃん、ユウガオちょうだい! この丸くて大きいの」


「はいよ、150円ね」


「えっ、買ってくれるんすか!?」


「うん! もし良かったら煮物つくってあげるよ」


「マジっすか!? ありがとうございます!!」


「どういたしまして~」


 えへへ~、と照れたような笑顔で言う美里さんに、俺は一瞬口をぎゅっと閉じ、胸を詰まらせ、ジリジリとセミの声が響き渡る夏の街で、次第に焦がれてゆく心を、確かに感じていた。


 けど、この気持ちは少し仕舞っておこう。じゃないと中二病の症状で変に格好つけたり暴走して、本来の俺を保てなくなる。まずは友達から始められたらいいな。


「美里ぉ!!」


 八百屋さんでの買い物を終えて歩き出した時、背後から美里さんを呼ぶ黄色い声が聞こえてきた。



 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 キャラクターの心やご当地の雰囲気を少しでも感じていただければ幸いです!

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