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いちにちひとつぶ2  作者: おじぃ
湘南のなつやすみ編
21/52

浸地から見た広視

 おととい、近隣の街で開催された祭にボランティアスタッフとして参加した私は、十年前の小学六年生の夏以来、五つ年下の男の子、広視(ひろし)と偶然の再会を果たした。


 彼もまた、祭のボランティアスタッフとして、私と同じハンバーガーの屋台を担当していたのだ。


 私と広視の母の実家が福島県の湖畔に位置する町にあり、お互いに神奈川県の東海道線(とうかいどうせん)沿線に住んでいながらも、会うのは夏休みの福島県のみという不思議な関係だった。


 別れ際、電車のドアが閉まる寸前、私はホームに立つ広視に透明のビニル袋に入ったビーズ手芸のセットを電車の乗降口からポイッと投げ渡した。


 ホームに残された彼は、突然のプレゼントを手に呆気に取られているように見えた。なんでビーズを渡されたのか、よく意味が解らなかったのだろう。当たり前だ。私だって、突然そのようなものを渡されても困ってしまう。


 ただこのビーズ、ちょっとした意味が込められているのだ。もちろん広視にはビーズの持つ意味を教えていない。


 ◇◇◇


 二日後、私は藤沢(ふじさわ)に住んでいる広視(ひろし)小田原(おだわら)の自宅に招待した。電車で30分前後の距離なので、そんなに遠くない。


 私は両親と同居しているが、二人とも仕事で留守にしていた。私は広視をもてなすために銀座や通販で購入可能なジンジャーシロップで作るジンジャーエールと、遊び心が働いてデスソースと呼ばれる一般的な液体スパイスより40倍辛いと言われるものをたっぷり仕込んだギョウザを食べさせた。


 広視が辛さのあまり悶えるものだから、追い討ちをかけるようにデスソースをたっぷり混ぜた水溶液を飲ませてみたら、案の定、更に悶絶した。


 そんなに凄いのかと気になって私もギョウザ食べて、水溶液を飲んでみたら、全身が噴火するように熱くなって、特に口から胃にかけては爆破されたような感覚に苛まれた。


 流石の私も悪いと思い、広視の言う事をなんでも一つ聞くと言ったら、なななんと愛の告白をされてしまいさぁ大変!


 生意気なくせに小心者のところは小さい頃から相変わらずだと思っていたけど、やる時は意外とやるみたい。


 ◇◇◇


 十年前、私が小学六年生、広視が一年生だった夏休み。福島県の祖父母宅に遊びに来ていた時のこと。


「うああああああん!!」


 広視の祖父母宅は私の祖父母宅の隣にあり、私が遊びに行くと、広視はよくお母さんに怒られて泣きわめいていた。


「ひ~ろしっ! あ~そぼ!」


「浸地ちゃんからも言ってあげて。この子、コーヒー零したのに謝らないの」


 見ると、氷の入ったグラスに少しだけコーヒーが入っていて、畳や座布団が濡れていた。冬は火燵(こたつ)になるテーブルの上には、キャップが開いたままのアイスコーヒーのペットボトル。


「わかった! 私からもキツ~く言っておくから、広視借りてくね!」


 私は返事を待たずに広視を手を引っ張って外へ連れ出した。

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