貧乏令嬢就活日記〜私の運命の御社はどこ!?〜
初めての作品です。
読みづらい点もあるかと思いますが、最後まで読んでくれるととても嬉しいです。
「アルバード嬢の益々のご活躍を期待しております…ですって!?
なら御社で活躍させなさいよ!!」
朝一番で郵便で届いた手紙を読み、私ディオラ・アルバードは思わず叫んでしまった。
ちらりと後ろを振り返ると、机の上には私の活躍を祈った手紙が山積みになっている。その数はゆうに30を超える。
「今回のところは筆記試験も面接も上手くいったと思ったのに…!面接官の方だって私と働けるのを楽しみにしているって言ってたじゃない…!」
ギリギリと歯を噛み締める。
落とすつもりなら期待させるようなこと言うんじゃないわよ!
「ディオラ、もしかしてまだ就職先が決まらないのかい?」
「お、お父様…。」
背後から声がして振り向くと笑顔だが目が笑っていない父が立っていた。
「言ったよね?我が男爵家はお金が無いんだ。
成人して働けるようになる半年後からは家を出てもらうよ、と。」
「もちろん!もちろん必死で就職先を探しておりますとも!きちんと半年後には家を出て立派に働きますわ!」
父の圧がすごすぎてちびりそう。あ、ちびりそうなんて言葉遣いをしたらまた怒られてしまうわね。
「本日も今から面接が控えているのです!ええ、ええ、私は最初からこの会社が第一志望だったのですわ!」
にっこりと笑ったつもりがどうやら引きつっていたようで、父がため息をついた。
「何もディアドラ社やフォンテックス社のような大手で働けと言っているのではないのだよ。
大体、ディオラは昔から…」
「あぁいけない!もう家を出ないと面接に遅れてしまいます!行ってきます、お父様!」
長々と続くであろう説教の気配を感じとり、私はすかさず家を出た。父の説教は一度始まると最低1時間は終わらないのだ。
家を出たはいいものの今から面接予定の会社に向かえば流石に到着が早くなりすぎてしまう。
「面接に伺うのは早くても5分前が鉄則って本に書いてあったものね…。」
時間を潰すために広場のベンチで座りながら面接対策を見直そうと決め、私は広場に向かった。
広場ではカップルや子ども達が楽しそうにそれぞれの時間を過ごしている。
その中で就活用の黒の地味なドレスを着た私は異質である。
しかし、そんなことを気にしていては半年後に路頭を迷うことになってしまう。
「さぁ、面接対策するわよ…。」
空いているベンチに腰掛け、両頬をぺちっと叩いて気合いを入れた。
「ねぇ君、もしかして就職活動してるの?」
不意に横から聞こえた声に驚き、声も出なかった。
慌てて横を見ると、いつの間にか金髪の男性がそこに座っていた。
歳は同じくらいに見えるけど金髪ってことは…この男はもう内定をもらってるってこと!?
「憎たらしい…。」
「えっ?」
「あ、ごめんなさい思わず心の声が…。それで私に何の用かしら?」
慌てて笑顔を取り繕うも、私の握りしめたこぶしを見て男性は顔を引きつらせた。
「ごめん、就職活動の話は禁句だった…のかな?
ジャック社の対策をしてるようだったから気になって。」
「どうして私がジャック社を受けるのが気になって…はっ!もしかしてあなた、ジャック社の御曹司!?」
「違う違う!どうしてそんな突飛な発想になるんだ!」
なんだ違うのか…御曹司なら社長に掛け合って内定をくれるように頼み込むつもりだったのに。
「御曹司だったら利用できたのにって顔だな…。そんなに感情が表情に出てて面接は大丈夫なのか?」
「うっ…私の弱点を見抜くなんて、あなたなかなかやるわね。」
「ははっやっぱり。まぁどちらにせよジャック社は受けない方が良いよ。受けても無駄だし。」
「は!?受けても無駄ってどういう意味よ!私じゃ受からないって言いたいわけ!?」
「違うよ、ジャック社がダメって意味さ。もうあそこは経営が傾いていていつ倒産するか分からないよ。」
さらっと言われた言葉にひどい衝撃を受けた。だってジャック社は色々な事業を手がけていて、大手とまではいかないが中小企業の中では大きい方の会社だ。倒産なんてとても信じられない。
「なんであなたがジャック社の経営状況なんて知ってるのよ?とてもじゃないけど信じられないわ。」
「信じてもらえない気持ちは分かるんだけど、本当のことだよ。ジャック社を受けるくらいならフォンテックス社を受けるべきだよ。」
「あの超大手のフォンテックス社!?面接36連敗中の私が受かるわけないでしょ!それこそ時間の無駄だわ!」
「君、36連敗もしてるのか…。」
可哀想な子を見る目で見られ、目を逸らした。
「仕方ないじゃない…面接だからって嘘をついたり見栄をはったりできないんだもの…。ってそんなことどうでも良いわ!そろそろ面接に行かないと!」
ベンチの上の書類を慌ただしく片付け、カバンを手に持ち立ち上がった。この男と話したせいで面接対策は万全とは言えないが、まぁ仕方ない。
公園の出口に足を進めると、後ろから男性の声が追いかけてきた。
「待ってさっきも言っただろ?ジャック社は受けても仕方ないんだって!信じて欲しい!」
私は足を止め、振り返った。
「たとえ1年後、2年後に倒産するとしても私は内定が欲しい。お父様を安心させたいもの。
それに、私が入社したら経営状況なんて一瞬で立て直してやるわよ!」
ニコッと笑ってそう言うと、呆然と突っ立っている男性を尻目に歩き始めた。
そうよ、どんな会社でも私が頑張って働いて経営を立ち直らせれば良いのよ。
そしたら貧乏な中私を育ててくださったお父様にも恩返しができるわ。
固い決意を胸に、私はジャック社へと足を進めた。
「いやいや聞いてないわよ、もう倒産してるなんて…。」
間抜けの殻となったビルのテナントの前でガックリと膝をついた。
私の他にも面接を受けに来た人が数人おり、皆同じように絶望した表情で目の前を見つめている。
「2時間前に倒産…?どんなお笑いよ…。」
あまりのことに目眩がしてきた。ここが最後の面接だったのだ。ここを逃せばまた悪夢の書類選考地獄が始まってしまう。
ふらふらとした足取りで家に向かって歩き出した。足取りは重い。お父様になんて説明すれば良いのかしら…。
「ちょっと…ちょっと待って!」
背後からすごい勢いで先ほど広場で出会った男性が走ってきた。汗すご、広場からここまで全力で走ってきたのかしら。
「僕…僕に、君の就職の手伝いをさせてくれないか?」
「就職の手伝い…?あなたが?なんで?」
つい先ほど少し話しただけの人の就職の手伝いをしたいだなんて意味が分からない。
「いやその…そう!僕は人材派遣をしてる会社への就職が決まってるんだ!
だから君のことを放っておけないというか!」
赤らんだ顔で焦りながら話す男性を見て思わず笑顔が溢れた。
「あなたお人好しなのね。さっきのジャック社についての忠告といい、今の提案といい…。
でも私、就職活動を手伝ってもらっても何もあげられないわよ?貧乏だもの。」
「何も貰わなくていいさ!僕の仕事の練習に付き合ってもらうみたいな感覚だし!」
「そう…あなたがそれで良いなら良いけど…。」
「もちろん良い!むしろこちらが頼む、君の就職活動の手伝いをさせてくれ!」
男性の必死な様子にますます笑いが込み上げた。
「なんであなたが頼むのよ、へんな人ね。」
「…あなたじゃなくて、名前で呼んでほしい。リチャードと。」
「リチャードね。さっきは忠告してくれたのに信じなくてごめんなさい。私はディオラ。これからよろしくね。」
握手のために右手を差し出すと、リチャードは慌てて両手で私の手を握りしめた。
「こちらこそよろしく。必ず君を、満足できるような会社に就職させると誓おう。」
「あら頼もしい、私の運命の会社はどこにあるのかしら。」
面接で36連敗したことや、今日面接を受ける予定だった会社が倒産したことなんて気にしてられない。
何となく、本当に何となくだけど、リチャードとなら内定を取れるような気がする。
そんな私の就職活動の物語。




