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見張り台のおじさん

掲載日:2026/05/06

見張り台のおじさんの話。

叫んでるだけ。

見張り台の上で、おじさんが叫ぶ。


「敵が来るぞー!」


村人は誰も振り向かない。


畑を耕す音。水を汲む音。子どもの笑い声。

いつも通りの朝だ。


「敵が来るぞー!」


パンを焼いていた女が、ちらりと空を見る。


「はいはい」


それだけ言って、また手元に戻る。


道の向こうに、小さな影が見える。

やがて近づいて、ただの旅人だと分かる。


「ほらな」


誰かが言う。誰も責めない。


おじさんは、また次を待つ。


「敵が来るぞー!」


今度は商人の荷車だった。

牛がのんびり歩いている。


「はいはい」


昼になる。


「敵が来るぞー!」


誰も数えない回数を重ねる。


そして、午後。


遠くに、土煙が上がった。


いつもより大きい。速い。


「敵が来るぞー!」


声が、少しだけ違った。


畑の手が止まる。

水桶が揺れる。

子どもが黙る。


みんな、空を見る。


土煙は、近づいてくる。

音もする。数も多い。


誰かが立ち上がる。


誰かが道具を握る。


おじさんは、同じように叫ぶ。


「敵が来るぞー!」


やがて、姿が見えた。


旗が揺れている。荷が積まれている。

人が笑っている。


大きめの商人の一団だった。


少しだけの沈黙。


「……ほらな」


誰かが言った。


道具が置かれる。

畑に戻る。

水を汲む。


おじさんは、見張り台の上で次を待つ。


「敵が来るぞー!」


村は、今日も平和だった。


読んでくれてありがとうございます。

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