『髪風船』
『髪風船』
「これは誰かからの伝言」
ーー匿名
危険度:低
出現頻度:高
髪の毛が一本風船本体の中央から生えている風船。
風船の色・形・大きさは様々だが、一般的な楕円形・逆さの涙滴型の形をしていることが多い。
髪の毛は色・長さは様々だが、如何なる手段を用いても切断、分離は出来ない。
持ち手の紐の部分はただの凧紐。この紐は切断可能である。
先述の通り、髪の毛の部分は髪の毛としてはありえないほどの強度を誇り、ごく軽い物であればくくりつけて飛ばすことが出来る。
「風船」が存在しない世界にもどこからともなく現れ、どこへともなく飛んでいく。
また、風船を知らない者もこの怪異の存在を違和感なく受け入れる。
物理的に閉鎖された部屋、侵入が困難な空間にも現れ、手を離すとあっという間にどこかへと飛んでいく。
柱に紐や髪の毛をくくりつける、箱の中に密閉するなどの手段を用いても、『髪風船』をとどめておくことは出来ない。いつの間にか姿を消している。
解析によると意思のようなものは無いとされているが、〈隠者〉はかつて「郵便屋さん」と評した。
追記:『無限地獄』などの脱出が極めて困難な怪異にも侵入が可能であり、また脱出の手助けとなり得る物品を届けたことがある。本当に自我が無いのか要検証。
*
「意味不明ですね」
「怪異ってそんなもんだよ」
「まあそうですけど……で、今回は何を持ってきたんですかこれ」
「なんだろ。飴ちゃん?」
「……食べて大丈夫な奴ですかこれ」
「多分ね。あと、役目を終えたならそれはもう飛ばしてあげて」
「はい……何かくくりつけますか?」
「くくりつけられる物は残念ながらないなあ」
「そうですか……はい、飛ばしました」
「うん」
「……ここ、屋根ありますよね」
「そうだね」
「というかこの建物、世界の狭間にあるとかなんとか言ってませんでした?」
「そうだね」
「あれ、どこから来てどこへ行くんですか?」
「さあ。ゴーギャンもわからないみたいだし僕もわからないなあ」
「茶化さないでください……」
「真面目に答えると、発信器、追跡の魔術その他の追跡手段は全て無効化されるからわかんないよ」
「謎ばっかり増えた」
一応書いておくと『無限地獄』は誤字ではないです。そういう怪異。変換する度にパソコンちゃんに怒られる。
ちょいちょいこういう報告書+αみたいな形式の話を書いていこうと思います。ポップコーンみたいに気軽につまんでいただければ。
後半の会話文部分は、報告書を読みながらか実物と相対しながら、カイと誰かが喋るという形になる予定。