雨宿り
大会用の読み切りです。
ホラー作品
今回のテーマは『水』という事で 構想5分。執筆1時間くらいで 自分なりの『水』を表現してみました。
それでは ご覧下さい 『雨宿り』
とある土砂降りの日
時刻は0時をまわったところ
会社の宴会から荷物を抱えた男が 帰り道を歩いていた
「なんでこんなに荷物の多い日に天気が荒れるんだ...」
しかも この男 上司に酒をすすめられ 酔いがまわっているのか 顔が真っ赤に染まり 目も半分しか開いていない状態で ふらふらの状態だ
両手が塞がっていたので 傘もまともにさせず 濡れて帰るしかなかった
状況は とても最悪である
雨風に揺られながらしばらく歩いていると 公園が見えてきた
「あの公園 確かドーム型の遊具があったよな...」
男は迷わず ドーム型の遊具を目掛けて 出来る限りの速度で走っていった
「ここ 意外と中が広い...ん?」
ドームの遊具内には 男の他に ずぶ濡れになった女子高生が うずくまって座っていた
「お嬢さん大丈夫か?」
男が聞くと 女子高生は下を向いたまま 1度だけ頷いた
男はタオルを持っていた事を思い出し カバンの中を探し タオルを取り出し 女子高生の頭を拭いてあげた
「おじさん 身体なんて拭いてあげたら捕まってしまうだろうから 自分で拭いてもらえると助かる」
男は タオルを女子高生の腕に そっと掛けた
「ありがと...ございます」
...と 酔っ払っていた男の記憶はここまで
おそらく 自分でもどうやって帰ってきたのかは憶えていないが 無事に帰宅
足もふらつき 荷物も多く 雨宿りに時間を費やしてしまった為 時刻は 1時を過ぎていた
とにかく 意識はもうろうとしていた為 持ち帰ってきた荷物を 開封し しまい込むことにした
「えと...この大きい箱は...あ..そうだ ビンゴで当てた 1968年物のワインだ...こんな金 どこから出てくるんだか。 それで...この小さい袋は?...あぁ 会社の女の子達が配ってたお菓子...寝る前に1つつまんでみようかな...。この箱は....お、部長が なんでか知らんがくれたおつまみセット...ワインに合いそうだな...」
男は順調に 荷物をわけて収納した
「おや?この大きい袋はなんだったかな?」
男は 虚ろな目で大きな袋を開け 中を見た
「お これはいかん。最初に開けるもんだった...ナマモノはすぐに腐ってしまうから」
そう思い 冷蔵庫を開けると 中は既にいっぱいになっていた
冷凍庫も同様である
男は考えた
「仕方がない...」
男は袋のまま ナマモノをお風呂に運び 浴室に運んだ
そして 浴槽に水を張り 氷を入れ そこにナマモノを放り込 浴槽の蓋を閉めた
「これで良し...このまま今日は シャワーで済まして寝よう」
男は 衣服を脱ぎ シャワーを浴びながら ずぶ濡れになっていた女子高生の事を考えていた
「そういや あの子...ちゃんと家に帰ったんだろうか...?」
そんなこんなで シャワーを浴び終わり 男は浴室から出て 足拭きマットで足についていた水分を拭き取り 鏡の前でドライヤーを使い 髪の毛を乾かしていた
ぴちゃっ
「ん?」
ドライヤーの音がうるさかったので 微かにしか聴こえなかったが 浴槽の中から まるで 水に足をついた様な音が聴こえた気がした
男はドライヤーを止め 耳を澄ました
ぴちゃっ
シャァァァ
「ん?なんでシャワーの音がするんだ?」
男は 気になり 浴室の扉に手をかけた
「さっき ちゃんと止めたよな...?」
男は勇気を出して 扉を開けた
男は目を疑った
シャワーから 水が出ている
ぴしゃっ
ぴちゃっ
ぴしゃっ
水の音が 男を横切るように 移動している
男は 音を追う様に 床を見た
「濡れている...なにかいるのか?」
男はキッチンに向かった
音は消え キッチンは どこも濡れていない
「いったいどうなっている?酔いすぎて変なものが見えたのか?しかし シャワー...んん?ダメだ...頭が回らない」
とりあえず 男は 洗面所に行き 歯を磨いて 顔を洗った
「ありがとう...ございます」
あの女子高生のひと言が 男の脳裏をよぎった
男は少し黙り...トイレで用を足し 寝床についた
1時間くらい経った頃 男は目を覚まし またトイレに向かった
ジャー
「ん?トイレの水が流れている?」
男は トイレの扉を開けた
トイレのタンクの水が流れていた
「これも何かの偶然か?確かに ここのトイレは 引っ越してきた頃から 調子はおかしかったが...」
男は 少し不気味に思ったが そのままトイレを済ませた
「絶対何かおかしい...」
男は再び眠りについた
「ありがとう...ございます」
男の夢の中に あの子が現れお礼を言ってきた
下を向いたまま
翌朝
男は 目を覚まし キッチンに向かった
「あ!そうだ!」
男は 何を思い立ったのか そこから真っ直ぐ 浴室に向かった
すると 男は浴槽の蓋を開いた
「ハァ....」
男は安堵の表情を浮かべた
浴槽の中には 刃物に刺され 血に染った女子高生が浮かんでいた
男は言った
「...良かったね。ちゃんと雨宿りが出来て...」
いかがでしたでしょうか?
個人的にホラーは好きなジャンルのひとつなんですけど サイコパスも好きなので 2つの要素を取り入れてみました
最後の方の説明っぽいものを付けようか迷ったんですけど そこは読者も察せるのでは?と思い あえて 1人歩きした状態で終わらせてみました。