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絶望


「……これは、どういう事ですか?」


「はっはっは。まぁ姉妹仲良くいいじゃないか? 萌黄……そこで俺達が交わるところを見ているがいい」


「妹に、寝取られたって事を散々自覚するといいわ」


「一体何をするおつもりですか。わ、私は失礼します!」


「私達の言うことを聞かなければ明日、折檻が待ってるわよ!? そこで見てろって言ってんの!」


「折檻されようと、このような仕打ちを黙って我慢することなどできませぬ! お二人でお好きになさってくださいませ……!」


 萌黄は、普段は優しく温厚で控えめだ。

 だが、萌黄を大層かわいがってくれた祖父は気が強く曲がった事が大嫌いな職人気質だった。

 それを引き継いで、萌黄も芯の気は強いのだ。


「馬鹿な女だね! ……じゃあ、もうしちゃおうよ。陸一郎……」


「ふふ……そう急くな。萌黄……拒否した事を後悔するんだな」


 濃厚な口づけを始めて、陸一郎が真白の身体を抱き寄せた。


「し、失礼いたします!」


 萌黄は、身震いを抑えながら部屋を出る。

 部屋の前にいたメイドがなにか叫んでいたが、止まることなく部屋へ戻って鍵をかけた。


「……なに、どういうこと……怖い……狂ってるわ」


 震えが止まらない。

 あの時の真白の憎しみが籠もった瞳。


 妹は、陸一郎を愛していて、姉を憎んだのだろうか?

 それならば、真白のいつものワガママで自分が陸一郎と結婚すればよかった話だ。

 何故?

 とりあえず、ここは地獄屋敷だ。

 萌黄は震えながら、一睡もできずに朝を迎えた。

 

「この屋敷から、逃げなくては……」


 萌黄はネグリジェを脱ぎ捨てて、自分の古着ワンピースに着替える。

 

 萌黄が実家から持ってきた荷物は、本当に少しだった。

 両親は萌黄には、古着を何年も着させて、何も与えない。

 祖父から譲り受けた物と、数冊の本、そして少しの金。

 両親はまだ帝都にいるが、助けを求めても無駄に感じた。


 ならば、片道切符でも、どこかへ逃げ延びることができれば……。

 だが、支度をしている萌黄の部屋の扉が開かれた。


「何をしているんだい!?」


 メイドに恫喝され、萌黄が硬直してしまう。

 

「使用人の集合時間だよ! さっさとおいで!」


「私が……使用人……?」


 真白が言っていた折檻とは、この事なのか……?

 


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