表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影工房の匠姫~最凶妹に寝取られた最悪初夜と、義弟の甘く優しい救いの手・この地獄から抜け出してみせます!~  作者: 兎森りんこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/20

真白堕ちる


「え……? その時……?」


「有能な娘だと思ったよ……我が家のために……いや、お前は器量よしで頭もよく……私に相応しい。だから決めたのだ。お前を私の花嫁にしようとな」


 陸一郎は、真白の企みなどではなく、萌黄が十歳の頃から目をつけていたのだ。


「ひっ……」


「二十歳頃の女が一番好きなのだ。長年私に想われ、さぞ嬉しいことだろう……」


 寒気しかしない。

 だがそれならば、と萌黄は反論する。


「り、陸一郎様は、真白がお好きなのでは? 私のことがお好きなのでしたら、あのような事はしないはずです……!」


「私は愛しい女が傷つくのが好きなのだ。嘆き哀しみ、発狂し、私のことだけ想えばいい」


「そんなの……おかしいです」


「私にとっては、それが真実の愛なのだ」

 

「では、真白は、貴方にとってなんなのですか?」


「真白は器量もよい、身体も良い。好んではいるが、妻はお前一人だけだと言っているだろう? して、あいつは海斗と婚約をしたのだ」


「海斗さんが?」


「さぁ、そろそろ嘆願しろ。私と籍を入れてくださいと」


「では、籍は……もしかして、まだ……」


「当たり前だろう。お前が私に泣いて懇願してから、破瓜させて……それからだ」


 籍はまだ入れられていなかった……!!

 萌黄は立ち上がる。


「お、お話はもう結構です。失礼致します……!」


「おい!? 待て萌黄……! 萌黄を拘束しろ!」


「私に触らないでっ!!」


 慌てて萌黄に掴みかかったメイド長を、萌黄は突き飛ばす。

 

 自分は自由だったのだ……!

 籍を入れてもいないのに一千万円の慰謝料など払う必要もない。

 それならば、陸一郎の言う事など聞くはずがない。

 誰が、陸一郎に懇願などするものか……!

 


 その時海斗は真白と対峙していた。

 真白を探し、影工房の前に立っていた真白をやっと見つけた海斗。

 

「真白さん! 婚約の話ですが!」


「ねぇ……海斗さんあの蔵……あれってどういうことなの……? 何がゴミだらけよ……私を騙したのね!?」


「何故それを……どうやって影工房の鍵を?」


「あははは! 庭師の男よ! ちょっと舐めてやったら貸してくれたの。馬鹿でしょ?」


 まさか旧知の友まで、この女に惑わされてしまったとは!

 真白の魅了の力に、海斗は恐怖すら覚えた。

 

「汚らわしい……! 俺は貴女と婚約などできない!!」


「じゃあ、こんなに私にぴったりな指輪を用意していたのは何故……? これって可愛くて愛しい私への贈り物でしょう?」


 真白の薬指には、なんと呪われた指輪が嵌められていた。


「それは……!! 駄目だ!! 贈り物なんかじゃない!!」


「ふふ……海斗さん、少し我儘が過ぎるわ……貴方はどうして私を拒絶するの? 塾の送別会でも、萌黄が好きだなんて嘘言って……あの時から萌黄が更に憎くてたまらない!」


「貴女が萌黄姉さんをそこまで憎んでいるのは……俺のせい?」


 送別会で、真白を拒絶する際に『匠姫がずっと好きなんです』と言った事を思い出した海斗。


「私を拒絶した貴方を絶対手に入れると決めたの……そのために陸一郎に近づいた。萌黄も絶対地獄に落とすって決めてたの」


 狂気を感じた。

 萌黄の結婚を決めたのも適当ではなく、寝取ったのも萌黄を地獄へ落とし、最後は海斗を手に入れるための計画だった。


「狂ってる! そんな計画を立てたところで、俺は貴女のものなどにならない! 萌黄姉さんも俺が守る!」


「狂ってるのは貴方よ。でも、そんなところも愛しいわ。萌黄は絶対に許さない」


「萌黄姉さんは何も悪くない! その指輪は危険だ! 離してください!」


「イヤよ、これは私の物……あなたも私のもの」


 真白は指輪を離そうとしない。

 そこへ萌黄の声が聴こえてくる。


「海斗さん……!」


「萌黄姉さん!?」


 萌黄は暗い影にいる真白の存在に気づかなかった。


「海斗さん……! 私、まだ未婚だったのです!」


「え!? では、まだ兄が籍を入れていなかった……!?」


「はい! 懇願せよと言われましたが……逃げてきてしまいました!」


「それで正解です! それで俺を探しに……?」


「はい……あの人の妻ではないとわかって……安心して……それで、海斗さんに言いたくて」


「萌黄姉さん……萌黄さん」


 二人の手が触れそうになった時、萌黄は暗闇の憎悪に気付く。


「萌黄~~~~!! やっぱりお前が海斗様を誘惑したんだなぁーーー!! 」 


「ま、真白……!?」


 憎しみに満ちた顔の真白が叫んだ。

 そして一気に邪気が溢れ出す。

 指輪と真白の心が共鳴してしまった。


「あはは!! なんだろう!! 憎くて憎くて、すごく気持ちがいいわぁ!!」

 

「ま、真白はどうしたんです!?」


「あの指輪を身に着けているんです! 外すんだ!」


「私のカイト様ヲ奪った! モエギをコロスチカラをちょうだい!!」


 真っ赤な光が、真白を包む。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ