表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/22

天使

[天使]


使い物にならないと言われた天使の話をしよう。



あるか上空にある天使の都“シュマッツ”。

死んだ人間の中でも特に善行を積んだ者がなれる天使にも、位というものは存在する。


翼が大きく美しい者は地位が高く、小さく見苦しい者は地位が低い。

だが、全ての天使が“幸せ”と言われる生活が保障されているのがこの都。

それでも禁忌というものが存在する。


1.人間界に近づく事を禁ずる

2.同族に力を使う事を禁ずる

3.生命の創造、自然の破壊する事を禁ずる


この三点を守り生活すれば、生活には困らなかった。


だが、破った者がいた。

ピンクのウェーブのかかった髪に、優しげな目元。オレンジの瞳には、キラキラと光が差し込んでいる。その美人の翼は四枚で美しい。最上級に地位が高い天使の証だ。

彼女が破った禁忌は、

『1.人間界に近づく事を禁ずる』


彼女は人間界にひっそりと近づき、ある男をつけていた。それが大天使様にバレてしまい、近日中に処刑となったのであった。


そんな天使の過去の話をしよう。



彼女は一般的な人間であった。

シロツメグサが広がる小さな村にあるパン屋の看板娘で、天真爛漫な手の姿はとても人気だったという。


“よく笑う顔はとても可愛く、無邪気な姿は見ていても飽きなかった”

と周りの人々は口した。


そんな彼女には男の幼馴染がいた。

一つ年下で、よく彼女の後をつけて回るような子。

この地域では珍しい澄んだ緑の瞳をしている男の子。

そんな二人は家族のように仲が良くかたった。よく遊び、よく一緒にご飯を食べた。


そんな二人が付き合ったのは、彼女が十六歳頃であり、手を繋ぐだけで二人とも照れていたとか。



“二十歳になったら結婚しよう!”

と約束した。

そんな彼女だが、彼女は十九歳の時に人生のレールから足を踏み外した。


流行りの伝染病だったとか。



天使になった彼女は、水面越しに彼の事をよく見守っていた。

だが、いつしかそのままの姿を見たいと強く願うようになった。


ダメだとはわかっていた。

だけど、最後に見たかった。

彼の姿を……どのようになっていても。



彼女は、人間界に降りて生まれ育った故郷に戻った。

何も変わらないシロツメグサが広がる風景にホッと息を吐く。そして、辺りを見回りて、彼の姿を探す。ニコニコと笑う彼の顔を見ると彼女は頬を緩めた。

仄かに白目が赤く染まり、キラキラと瞳が輝いた気がした。


「お疲れ!」

彼は手を振りながら、ある人物の元へ駆け寄った。

茶色のロングの髪に、丸く可愛い大きな瞳。見たことのない顔。

説明されなくてもわかる。“彼女”なのだと。


だってあれ程幸せそうに笑っていたのだから。

だってあれ程優しく笑っているのだから


その日の夕方、彼女は死刑を言い渡された。

大天使様の口によって。



どうだっただろうか?

これが、使い物にならないと言われた天使の過去だ。



『処刑寸前のに……天使に取材ですか?それも人間が、わざわざ上界パスポートまで取って。

えぇ、いいですよ。どうせ短い命です。ふふっそんな事ですか。

はい。後悔なんてしていません。

彼に新しい人ができたことについてですがね、幸せにしていてくれて安心しました。私の事を引きずってなくて……。

えぇ、安心しましたよ。』


No.6 ただただ一途な天使


ー追記


彼女が死んだ後の墓には、シオンの花束と結婚式の招待状が添えられていた。

コレを見たのは、彼女が死んでから丁度三年後だった。

シオンの花言葉。

ー 一生貴方を忘れません。

  遠くにいる貴方を思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ