機械職人
[機械職人]
原始的だと言われた機械職人の話をしよう。
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魔法を一切使わずに、手作業だけで最高品質の昔ながらのロボットを作るをつくる職人。
手についた傷は勲章、手にできた豆は名誉として指先に刻まれていた。
大きな手に、白い髪。鋭い目つきはから覗くのはキツめの紫をした小さな瞳。正に頑固親父と言わざるおえない風貌だ。
誰もが憧れ、誰もが手にする事を望むそのロボット。それは少しの機械仕掛けに、目を引くようなスチームパンクな見た目をしていた。色とりどりのバリエーションに、沢山の装飾品。
見たら思わず欲しいと思ってしまうだろう。
だがそのロボットの完成は、予約から少なくとも半年はかかるらしい。
丹精込めて、丁寧にゆっくりと仕上げていくのだ。
そんな機械職人の過去の話をしよう。
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時は、戦いが終わり平和が戻った大都市“オスト”。剣の都市は戦いに勝ち抜き、多大なる発展を遂げていた。
そんなオストから外れた大きな木造の一軒家、彼の家はそこだった。お世辞にも綺麗とは言えない外観、所々煉瓦がかけた壁、ドアに至ってはバカになったかのか半開き状態。その場に不具合な、わいわいと賑わう子供の声が建物から漏れている。
その建物のドアの上、申し訳程度にある標識には『グリュック孤児院』と木彫りで示されていた。
そこで生まれ育った彼の夢はただ一つ。
『おもちゃが欲しい、しかも自分の新品の』
いつも誰かとわけて使うおもちゃじゃなくて、誰かのお下がりのおもちゃじゃなくて自分専用の、新品のおもちゃ。それに彼は焦がれていた。
だけど彼は、我儘を言える性格ではなかった。頼まれたら断れない、そんな性格。だからか、孤児院の職員たちは、彼のことをこう評価していた。
“とても優しい、手のかからない子”と。
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僕の腕の中には、一つの壊れかけのロボット。黄色で色づけられたロボットは、所々破損し色は剥げ落ちていた。
これはいつかの僕の誕生日、職員の誰かがくれたプレゼントだ。
だけど小さい子の前で渡すもんだから、みんながコレを使いたいと泣いて結局はみんなで使うものになった。
僕だって使いたかったさ。だけど、それが願わない。職員は貸してあげて、と言ってくるし、子供はなんで貸してくれないの! と泣き喚く。
バースデーケーキだって、僕の分はみんなより何故か小さかった。僕の誕生日はきっと、みんなにとってのお楽しみ会の日になっていたのだろう。
だからだろうか?
どんどん、自分だけのおもちゃが欲しいと言う欲望が、僕の中で渦巻いていった。
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それから何回もの誕生日を過ごして、僕の独り立ちの日がやってきた。16歳の誕生日だ。
ワクワクと楽しみにしている自分を押し殺し、悲しい表情を浮かべて別れの挨拶を言って回る。
遂に1人で歩くことが願った街は、キラキラと輝いていた。
向かう先はただ一つ、街で一番のおもちゃ屋さんだ。浮き立つ足取りは背中に羽が生えたように軽かった。
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どうだっただろうか?
これが原始的だと言われた機械職人の過去だ。
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『なんだ! ワシは作業に忙しい。お前ら弟子を取る時間なんて……おお? エライ別嬪さんじゃないか。どうした? 流石に弟子志願ではないだろう。
ハッ!取材ィ、そんなのワシじゃなくても、よかろうに。まぁいいじゃろう、お前さんの顔に免じてな。
フーム、難しい事を聞くな。
ワシの育った孤児院は、天国とは言い難い。だが地獄とも言い難いなァ。楽しいこともあったさ。だけど、それ以上に辛い事もあった。もしもワシを育ててくれたのが、普通の親だったら俺はきっと幸せだったよ。少なくとも小さい時は。
だけど、今のこの幸せを越せることはないだろうな。
今がとても楽しいさ。少年少女、はたまた老若男女が目を輝かせてロボットを見て、笑顔になる様を見るのはな!
そいう言う意味での後悔は、無いと思う。いいや、無いと思いたいよ。』
No.22 自分の物を求めた機械職人。
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