祭司
[祭司]
天才的だと言われた祭司の話をしよう。
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山に囲まれ四季彩りが素晴らしい街があった。住民は活気に溢れ、子どもたちが走り回る、そんな街の大広場。
そこで行われる祭りはとても評判だった。誰でも楽しめると、言われわざわざ外から人が来るほどの祭り。
その祭りの一切を取り仕切る祭司がいた。人懐っこい子犬のような笑顔、茶髪から金色に毛先が変わる髪をリボン型に編んでいる。太い眉に丸いハチミツのように輝く金色の瞳。
エルフ族なのだろうか、長い耳に顔につけ沢山のギラギラと輝くピアスをつけている。
その祭司はとても人気であり、それは人間としても彼の作る祭りもだ。活気的で、楽しい祭りは誰もが楽しみにするモノまで進化した。伝統的ではなくとも楽しめればいい、伝統は基盤として、最小限にそう言う考えの持ち主……それこそが人気の理由だろう。
そんな祭司の過去の話をしよう。
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産声は甲高く、主張するように上がった。産まれは祭りの生まれと言われる“サーリ帝国”。そこの中級市民として生まれた。優しい両親に恵まれ、ワクワクとした日常に満ち溢れている幼少期を過ごす。
そして生まれた頃から祭りが身近にあり、それをとても楽しんでいた。
人を楽しませるのが心から好きで、企画を考えるのを心から楽しんでいるそんな子ども。
魔法が使える選ばれた人間の彼は、将来に最初こそは期待されていた。そうそれは、最初だけ。それ以降は、「あの子は祭り馬鹿だ」と言われたとか。
外で遊ぶより、祭りの企画を考えて図書館に篭り勉強をする。それは人を楽しめるために。
周りはいつの間にか離れていき、異端児扱いされていた。だが祭司としての将来に期待する声も、チラチラと見受ける事ができたという。
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キラキラとした街に目を奪われる。
キラキラとした祭りは、僕の人生に彩りを加えたと言っても過言ではない。
祭りでワクワクと湧き立つ人々、それを見ると、とても嬉しい、楽しい気持ちになった。それでも楽しそうな人と、楽しんでいる人が居る。それが気がかりだった。
それを見て見ぬ振りをできるほど、僕は他人を気にしない事ができなかった。俗に言うお節介というヤツだ。
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そして僕は旅に出た。
少しのご飯と金貨を持って母親と父親に別れを告げる。悲しそうな両親を置いていくのは心苦しかったが、夢を諦める事はできなかった。そしてワクワクしながら足を進めた。それに僕には確信があったのだ。両親は笑顔で送り出してくれると。その通りに笑顔で送り出してくれた両親には、感謝の気持ちを覚えずにはいられなかった。
たくさんの人を見るために、帝国を出るその夢への第一歩が叶おうとしている。
絶対にある筈だ、全員が楽しむ方法が! ソレを僕は信じて疑わなかった。
帝国の門を越える。記念すべき第一歩を踏み出したその日は、限りなく晴れ渡った空が広がる快晴だった。まるで祝福をしているような、明るい空。
そしてある日、山を登って降っている時だ。周りから賑やかな、ハリのある声が聞こえてきた。その声に釣られるように、歩いた先には小さな村で祭りが行われている。小さな素朴な祭りだが、老若男女が楽しみニコニコと笑っていた。
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僕は目を疑ったよ。
こんなことがあり得るのかとね。楽しそうで、みんなが楽しんでいる。それがとても難しいことで、とても楽しいことだと僕は分かっていた。
僕はアリ地獄にハマった獲物のように、町に近づいた。近づく程ワクワクとして、楽しい雰囲気が溢れている。本当に素晴らしい。僕の望みはここにあったのだ。
この村の祭司はとても素晴らしい人であった。そして僕は弟子入りをした。祭りについて学ぶために、その素晴らしさを教えてもらうために。
そして、夢を叶えるために!
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どうだっただろうか?
これが天才的だと言われた祭司の過去だ。
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『あら? 初めましてですね。是非祭りを楽しんでいってください。オススメは……ええ? はい、そうじゃないですか。では何用ですかね? ええ!僕に用ですか、珍しい。
そうですね、僕は楽しいですよ。皆さんの笑顔が僕の生きがいですし。それに僕の第一の夢ですしね。
全員が笑う、なんて綺麗事と言う人がいますけど、それが叶った時どれだけ美しいか……。それはとっても美しいでしょうね。
それを叶えるのが僕の夢です。いいえ、叶えなくてはならない事です。
後悔なんてしないように、増やさないようにね。』
No.21 楽天地を作った祭司