秘書 ー捜査難航
[秘書]
全知全能と言われた秘書の話をしよう。
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大都市“ナトゥール”と常日頃から一二を争っている大都市“オスト”。
そこの王家の秘書は、どの国を探しても見つからないと言われるほどの有能秘書であった。
薄いピンクの髪を一つに束ね、翡翠の瞳がはまった秘書は、黒いタキシードがよく似合う秘書。
味方にいればどんなに強靭な敵でも戦略により殺せる、といわれる程の頭脳を持ち、決してそれを無駄なことに使う事はない。
全ては王族の命によって使われていた。
世に出回っている情報は、たかがこれっポッチであった。
世界一の頭脳を持つ秘書がいる“オスト”。
そこの秘書は、どのような性格なのか、男なのか女なのかも何もわからない。
謎のベールに包まれた秘書は、沢山の記者達が暴こうとしている人物の一人だ。
そんな秘書の過去の話をしよう。
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王室秘書となった時から完璧な人間であったと言われている。勿論それは、試験の時から完璧であったが。
低い位置で結ばれたピンクの髪に、スラリとした体型。ニコッと笑う顔。
そいつは、本当にできた人間であった。仕事も完璧、意見交換も王室の人間と意見交換もできる頭と思考力を持っている。
まさに全知全能のようだと王家の人間は語った。
秘書の仕事はテキパキと片付き、マナーまで完璧になっている。本当に一般市民の出かと疑うほどであったという。
まさに送られてきた履歴書がおかしいのかた思うほどだった。
まさに完璧を絵に描いたかのような人間。
この人間は、どこの家系の人間だ!
どこでこのような知識を入れたのか!と王家は調べ上げたとか。
だが、秘書の過去は王家でもわからない程隠されていた。それはもう突如として現れた人間かのように……。
そして、王家の人間は口を揃えてこう言った。
“秘書が敵に居なくてよかったと心から思うよ”と。
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『はい。よくここまで入ってこれましたね。えぇ、私にインタビューですか。いいですよ、主人様が許可を出したならば。
私は幸せですよ。それはもう世界一と胸を張って言えるほどね。主人様に仕えられて、主人様に命じられる立場で……、本当にね。
はい。私の過去ですか……ほぼ言えないですが、言える範囲で答えましょう。
私は過去一回、主人様にあったことがあるのですよ。本当に、六歳くらいの頃ですかね。
私の父は王家の秘密調査官でして、王家の図書室にいけたのでよく通ってましたしね。
そこにいた彼は神様のような、本当に神々しい主人様でした。
もお、本当に素晴らしい程の美形でした。あぁ勿論今もですよ。
私は主人様の近くにいるために全ての時間を使って勉強に励みました。主人様の邪魔にならないように……ね。
だって、神の近くに居られるのですよ! 私は前世どのような善行を積んだのでしょうね。
本当に信じられない。あれは、人間ですかね?
これ以上私の過去は話せません。
貴方が敵の差し金かもしれませんしね。要件が済んだのなら早急にお帰りください。
主人様の邪魔にはならないでくださいね。
全ては主人様の為に……、いいえ主人様の為に。』
No.12 正体不明の秘書
追記ー
秘書は神々しい者を見るかのように、主人を思い描いていた。
右手には白い手袋、左手には黒い手袋。
彼の過去へ足を踏め込めなかった。これ以上は見てはならないモノのようであったからだ。
彼の取材や、過去調べは進むことを知らなかった。
まさに秘密に包まれた秘書。
分かった事は、主人に対してあり得ないほどの信仰心、そして狂気的で歪んだ愛……のようなモノがあると言う事であった。