【丑三つ時の出会い】01
『災暦1496年2月4日』
雪が降り積もった深夜の山道、走るのをやめて立ち止まる。
空気は澄んでいて、空には雲ひとつ無く、満点の星空が広がっていた。
今、俺は日課のランニングをしている最中だ。
日課とは言っても毎日走っているわけではないのだが――
まぁ、その話は、今は置いておいて。
空を見上げていた視線を下に落とし、立ち止まったその理由を凝視する。
「…………」
異様なモノがそこにあった。
いや『あった』ではなく『いた』と言った方が正しいだろう。
そう、そこには異様な者がいた。
可愛らしい少女が、体を半ば雪に埋もれるようにして、そこに眠っていた。
……声をかけるべきなのか、そっとしておくべきなのか。
少女はおそらく龍人だ。
着物姿の黒髪に、日本人寄りの容姿ともなれば間違いない。
そんなことを言えば、自分はどうなのだ? と言われそうだが、言葉にしてはいないので言いっこ無しだ。
もう一度少女のことを見る。
少女は白い振袖に、埋もれた状態でわかり辛いが紫色の袴を履き。背は低く、その黒髪はおかっぱに切り揃えられ、中学生にいそうな容姿から見るに、年齢は十四前後といったところだろう。
「グースカピー」
「…………」
「グースカピー」
気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。
俺が少女に声をかけるべきなのか迷う理由の一つだ。
いったいどうすりゃいいんだ……。
基本的に龍人の里の人々は深夜、里から出ることは決して無く、その出入りも出来ないのだとカイさんに聞いていたのだが……。
とりあえず、少女がこんな時刻に、このような場所にいる理由を考える。
今いるこの場所は、里から十㎞ほど離れた、カラギ達に拘束されたダンジョンの入り口付近の草原だ。
そんな場所に少女が一人、気持ちよさそうにではあるが雪に埋まって眠っている……。
可能性として家の事情などで追い出されたことや、家出など、最悪な場合、里で何かが起きたと言う可能性もあるが。
……いや、違うな。
仮に何の事情が無くても、こんな時刻の寒空の下で眠る少女を一人放っておいていいはずがない。
声をかけるべきか悩んだが、初めから俺に声をかけないなんて選択肢は無かったのだ。
「ねぇ。君、大丈夫?」
少女に近づいて声をかける。
「んぅぅ〜」
すると少女はまだ眠そうな唸り声を上げながら、うっすらと目を開け、座った状態で起き上がった。
急に起こされた少女は眠そうな目で周囲を見渡すと、目の前にいた俺と目を合わせ。
「――っあ!」
少女が驚いたように、何かに気づいたように声を上げた。
「あなた……呪いの人間?」
「……別に呪われてないけど、その人間で合ってるよ」
嫌な呼ばれ方だが、認めるほかない。
呪われた人間とは――先日のシュウヤとの試合内容を、誰かが言いふらした結果ついた俺の蔑称だ。
誰か、とは言ったが、言いふらした人物には見当がついている。
それは話の内容を聞けば明らかだ。
神社でセン様の酒を盗もうとしていた俺をシュウヤが止めようとしたが、卑劣な手によって逃げられてしまった。
話の内容はまちまちだが、大体の内容が隠し持った毒を使っただの、呪術を使っただのと言われ、どれもシュウヤが正義で俺が悪と言った内容ばかり。
シュウヤの顔が頭に浮かぶが、今はそんなことよりも目の前の少女の方が重要だ。
「里で何かあったの?」
「何もないけど……どうして?」
どうしてって……。
「今の時間龍人の里は出入り禁止でしょ?」
「っあ、忘れてた……」
質問した理由を伝えると少女は呆然としながらそう言った。
「忘れてたって……」
少女の回答にこっちまで呆然としてしまう。
天然なのか、寝ぼけているのか――少女のことを危うく感じつつも、俺は自分の心配が杞憂でよかったと心の奥でホッとした。
「ねぇ、あなたの名前ってたしかカズだよね?」
「そうだけど……」
「お姉ちゃんが言ってたより変な人じゃなさそうだね」
お姉ちゃん――
その口ぶりからはその人物が俺のことをまるで知っているようで、俺と面識がある女性の龍人と言えば――先生を除けば、俺を拘束した四人組の一人と……。
カイさんからカナデが三人兄妹だと言う話を聞いたことを思い出す。
「君って、カナデの妹さん?」
俺の質問に少女が頷いた。
確かにカナデの妹だと思って見てみれば、顔の作りがどことなく――と言うよりも瓜二つだ。
カナデは髪が長く背が高いのでこの少女と印象が違うが、目元などまんまカナデだ。
「私カナミって言うの、そう呼んで」
「わかった……」
まるで何かを求めているように、カナミが俺を見つめ……そしておぶって欲しそうに、両手を前に突き出してきた。
「おぶろっか……?」
「――おねがい」
即答だった。
カナミは俺におぶってもらうためか、突き出していた腕を引っ込め自ら立ち上がると、俺の後ろへ――ッサっと回り込み『ぽんぽん』と、しゃがんでとでも言いたそうに腰あたりを叩いてくる。
変わった龍人の少女だ……。
少女の要求に従いしゃがみながら――
「君は俺が怖くないの?」
聞いてみることにする。
彼女たち龍人は人間に対して、怨みや憎しみ、恐怖といった感情を抱いているのが普通なのだが……。
カナミからはそれをまったく感じない。
「あなたは私のこと押し倒して襲うの?」
「――いやいや、襲わないよ⁈」
突然この少女は何を言い出すんだ⁉︎
「じゃぁ、何で怖がる必要があるの?」
「それは、そうだけど……」
「里のみんな、貴方が災の種だって言ってたけど、話してる限り私はそんなこと思わないし、魔物と違ってみんな同じ人なんだから、別に怖がったり――嫌がったりする必要ないんだと思うんだけど……。私が言ってることって変かな?」
おぶった背中から顔だけ出して、俺の顔を覗き込みながら聞いてくるカナミの目は、その言葉を本心から言っていて……。
「変じゃないよ……全然変じゃない」
純粋で、優しい子なのだとわかった。
だから言えなかった。
人間達の大半が亜人を魔物と同じものだと認識している事実を、純粋なこの少女に俺は教えることができなかった。
里の入り口が見える場所まで連れてくるとカナミは俺の背中から自ら降りると。
「――っあ、そうだ」
何かを思い出したようにカナミが声を上げた。
「アビくんが里に戻ってきたから、セン様に伝えておいてくれる?」
アビ――それは俺以外にいる先生のもう一人の弟子の名前だったはず。
カイさんの話では一時的に里帰りしているそうで、先生の元に今までいなかったが。
そうか、帰ってきたのか。
「――ねぇ、聞いてる?」
「あぁ、ごめん。聞いてるよ。先生に伝えとく」
「うん。じゃぁ、送ってくれてありがとね」
「ああ」
何故だかわからないが、カナミからフィーやクリスさんに似た何かを感じ――
「――ドス」
似てないな……。
積もった雪に足を取られ躓き、雪の中にダイブするカナミの姿に、俺は勘違いだと首を振った。
ゆっくりと何事もなかったようにカナミは起き上がると、恥ずかしそうに一度だけ俺のことをチラリと見て、顔を真っ赤にさせながらそそくさと里の中へと姿を消していった。
少し――いや、かなり変わっている少女ではあったが、久しぶりにあんな純粋で、綺麗な心を持つ人に出会った。
あの子のような考え方を、この世界の全ての人ができたのなら……本当に、どれほどいい世界になっていたことか――
空を見上げ、理想の世界と現実との差を思い。
俺は大きなため息を吐くのだった。
●○●○●○
「カナミ! お前こんな時間までどこ行ってたんだ!」
真夜中の静まり返った里に、男の怒号が響き渡る。
声を大にして怒る男は、短い黒髪を後ろへ流し、切れ長で常に怒っているような目をさらにつり上げてこちらを睨み。真っ白な武道袴を着るその首元には手作りの青色のマフラーが巻かれていた。
「ごめんごめん――っで、お姉ちゃんと進展あった?」
「――っな⁉︎ いや、俺は別に、カナデとは何も……」
私の質問に顔を赤くさせ、目を泳がせてるこの男の名前はアビ。
お姉ちゃんと好き合っているアビくんだ。
せっかく二ヶ月半ぶりの再会をゆっくりと過ごさせてあげたと言うのに、実に度胸のない男である。
まぁ、度胸はないけど、セン様の元へ弟子入りしてから化け物じみて強くなったのは認めているが、だからこそ少しはその強さを度胸へと回して欲しいところで。
――あれ? そう言えば。
「アビくん、お姉ちゃんは一緒じゃないの?」
「アビくんって……俺はお前より五つ年上なんだけどな……」
私の言葉にアビくんはやれやれといった表情を浮かべ。
「カナデならお前がいつ帰ってきてもいいように家で待ってるぞ」
「怒ってた?」
「そりゃもうカンカンに」
お姉ちゃんの怒り具合を表現するため、アビくんは自分の頭の上にツノを作って怖い顔をした。
あとでお姉ちゃんにこのことを伝えれば、いくらか私への怒りがアビくんへと分散するはずだ。
なんて私が考えていると。
「――ってかお前、俺たちのこと気遣って家出てたのか?」
「感謝してる?」
「まぁ、少しはな……」
アビくんが頬を照れくさそうに掻いている。
よくこんな女々しい男が、セン様の弟子になれたものだ。
いや、それを言うのならアビくんが国の王子で、次期国王だと言うことの方が驚きだが。こんな男が次期国王なのだと思うと、アビくんを支えていくことになる家臣や国民は、相当苦労するに違いない。
「どうしたんだよ。俺の顔じっと見て、顔になんかついてるか?」
「ううん。ただアビくんが女々しいなと思って見てただけで、別に何もついてないよ」
「――は⁉︎ 俺のどこが女々しいって言うんんだよ⁉︎」
「どこもかしこもだよ?」
「――っな⁉︎」
久しぶりにアビくんをイジってみたが、やっぱりいい反応を返してくれて実に面白い。
「そんなことよりも、早く家に帰ろうよ。お姉ちゃんが心配しちゃう」
「お前なぁ……まったく。背負うか?」
「いい」
私は首を横に振って、お姉ちゃんが待つ家に向かって歩き始めた。
「そう言えばアビくん、弟弟子の話聞いた?」
先ほど出会った人物について聞いてみることにする。
「……聞いたよ。人間なんだってな、それも異世界のーー」
アビくんの声色がよろしくない。人間の話は嫌なのだろうか?
「アビくんって人間嫌いだっけ?」
「――嫌いだよ」
アビくんにしては珍しく一切迷いがない即答だった。
「なんで?」
「人間の存在がカナデを苦しめてる」
結局はお姉ちゃんか、呆れてものも言えない。
そこまで好きなのならさっさと結婚してしまえばいいのに――お姉ちゃんもお姉ちゃんで、セン様に料理を作らなきゃいけないからと言って、アビくんの里帰りについて行かなかったし……。
まったく。
二人とも不器用なんだか、意気地がないのか、よくわからない関係だ。
「どうしたんだよ? お前らしくもないこと聞いてきて」
前を歩いていたはずなのに、気づけば真横にいるアビくんが眉を寄せて私の顔を覗き込んでくる。
まったく……誰のせいで悩まされているのか気づいて欲しいものだ。
「さっきアビくんの弟弟子のカズって人に会ったんだよ。上月山のダンジョンの近くから里まで背負ってもらってきた」
「おま、里の外に行ってたのかよ……何もされなかったよな?」
「何もされなかったよ。と言うか、私のことすごい心配してたみたい。あの人みんなが言うような悪い人じゃないと思うよ」
「……それはカナデにも聞いたよ。変な奴ではあるけど害はないってな」
アビくんはそう言うと私に再度視線を向け真剣な表情で。
「それでも、里の人達にとっては人間の存在自体が害だ。それはお前もわかってるはずだろ?」
「わかってるけど……」
「けどじゃ済まないんだよ。人間って生き物は、お前が思っている以上に俺らとは別の生き物だ。だから変なことに首突っ込んでカナデに心配かけさせんなよ」
そう言って、アビくんは私の頭の上に手を置いてきた。
アビくんは私のことを心配してくれている。
だけど、それ以上に心配しているのは、私に何かあった時にお姉ちゃんが悲しむこと。
そんなに心配なのなら、もっとお姉ちゃんのそばにいてあげればいいと言うのに。
まったく……もう少し攻めの姿勢をとって欲しいものだ。
まぁ、今更アビくんが攻めの姿勢をとったところで、お姉ちゃんがこれ以上アビくんを好きになることは無い。
だってもう、お姉ちゃんもこれ以上ないほどアビくんのことが大好きなのだから――
「汚れちゃうから触らないで」
「――ッ⁈」
私の頭に置かれていた手を振り払うと、アビくんが言葉のショックからか立ち止まり。少し距離が離れたところで再び私の横に駆け寄ってきた。
「さっさとお姉ちゃんに結婚申し込まないと、シュウヤの馬鹿に横取りされるかもしれないよ?」
「あいつにそんな度胸はねぇよ」
まったくそんな悠長なことを言ってるから関係が進展して行かないのだ。
アビくんがそんな態度を取るのなら私にも考えがある。
「――え⁉︎ もしかしてシュウヤのことお姉ちゃんから聞いてないの⁈」
まるで驚きを隠せないと言うように、大袈裟な表情を浮かべる。
「何の話だよ……?」
「お姉ちゃんから何も聞いてないのなら、私からは何も言えないよ……」
別に大した話ではない。
シュウヤがアビくんの弟弟子に試合で負けたと言うだけの話だ。
里のみんなは何故だかシュウヤのホラ話を間に受け、アビくんの弟弟子が泥棒扱いになっているが――お姉ちゃんから聞いた話ではそれはでまかせで、実際にはシュウヤとアビくんの弟弟子が試合をして、シュウヤが負けたというだけの話。
それにシュウヤがお姉ちゃんに気があるのは事実なので、まるっきり嘘を言っているわけではない。
実際問題アビくんが里にいない間に、なんどかシュウヤがお姉ちゃんに告白しようとしていたのも事実なので、私からのいじりをアビくんは嘘だと見抜けないだろう。
「アビくん。お姉ちゃんのこと大切にしてよ?」
「――ったく。わぁってるよ、んなこと」
私が笑っている様子に、アビくんも自分がいじり遊ばれていることに気付いたようだ。自分の額を押さえて、やれやれと困った表情を浮かべている。
本当にアビくんは面白い。
そして、思い出されるのは私たちのような黒髪を無造作に伸ばして、何を考えているのだかわからない表情で困ったように笑うアビくんの弟弟子……。
あのカズと言う名の青年も、なかなかいじりがいがあり面白かった。
また会う機会があれば、もう少し踏み込んで、彼のことを知ってみるのも面白そうだ。
そんなことを考えながら私がクスクスと笑っていると、隣からアビくんが眉を顰め。
「お前、またなんか企んでるだろ」
確信をもって聞いてきた。
「どうでしょうねぇ〜」
「まったく、お前はほんと初めて会った時から変わらないよな……」
「アビくんは随分と変わったよね」
「……まぁ、な」
私からの言葉に、アビくんは過去を思い出したのか後ろ髪を掻いた。
アビくんが里に初めてきたのは今から六年前――アビくんとお兄ちゃんが十三で、お姉ちゃんが十歳で、私が八歳の時だった。
あの時の私から見たアビくんの第一印象は無口で無表情の面白みのない青年――当時の私はアビくんの事情など知らず。うちに居候している根暗な青年が、ただただ嫌いだった。
いつの日からか、私はそんな彼に悪戯をするようになった。
悪戯と言っても可愛いものだ。そして私がやったとわかるように痕跡をしっかりと残して、いつ怒られてもいいように覚悟もしていた。
悪戯をするのだからそれに対して怒られる覚悟はもちろんする。
誰がやったのかわからないようにする悪戯は、悪戯じゃない……いじめだ。
いじめは嫌いだ……それも結局は私の価値観での話でしかないのだけれど……今は私の話ではなく、アビくんの話だった。
結局アビくんに悪戯をし続ける日々は一年近く続き。
私の悪戯にお兄ちゃんが気づき叱られたことは何度となくあったが、ついぞアビくんが私に対して怒ることは一度たりとてなかった。
いつまで経っても何も言ってこないアビくんにあの頃の私は一人で苛立ち、ある時我慢の限界がきて直接聞くことにした。
嫌じゃないのかと、怒りは湧いてこないのかと……アビくんからの答えは言葉ではなく、困ったように笑うと言った、今でも理解に苦しむ反応であった……。
あれ以降、私はアビくんに悪戯することをやめて、言葉でいじることにした。
そんな私の幼稚な行為はアビくんに何の変化も与えることはできなかったが、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいい相談相手になってくれたのだろう。根暗で苛立ちを覚えるような青年が、今では恋に悶える子羊へと成長した。
今思えば、私が人をいじるのが好きになった原因はアビくんにある。
悪戯に対して何も言わなかったアビくんが、いじりには過剰に反応して、その反応が面白かったせいで私は人をいじるのが好きになってしまった。
もしこの性癖のせいで婚約者が見つからないようなことがあったのなら、迷うことは無い。アビくんに面白い男性でも紹介してもらうことにしよう。
「お前さっきから何変な顔して考え込んでんだよ、少し気持ち悪いぞ……」
「うるさいなぁ、ちょっと将来のこと考えてただけだよ」
「将来って、お前まだ――あ、そうか……」
「そうだよアビくん。私は今年で十五歳、来年からは花嫁修行が始まるの……。それもお姉ちゃんの……」
「まぁ、その……頑張れ、応援してる」
アビくんが何かを察して目を逸らしながら苦笑する。
お姉ちゃんはすごく優しく、家事全般全て得意で、魔術に関しては多少苦手だが、実戦戦闘なら里の若い衆にもかなう相手はいないほど強く、シュウヤなんて相手にもならない。
……そんな、自慢のお姉ちゃんではあるのだけど、一つだけ致命的な欠点がある。
「私、寝る時間あるかなぁ……」
お姉ちゃんは人に物を教える時だけ異常なほど厳しく、感情的になってしまい。
アビくんはその姿を見て『先生と瓜二つだ』と言っていた。
何度かアビくんの修行風景を見せてもらったことがあったが、確かにセン様にはお姉ちゃんと似ている要素があった。
私はそんなお姉ちゃんに花嫁修行をつけてもらうのだが……そうなれば、体力面にそれほど自信がない私はいったいどうなってしまうのか、今考えるだけでも嫌になる。
「流石に寝る時間ぐらいはあるだろ……さすがにさ……」
横にいるアビくんの顔を見ようとするが、頑なに目を合わせようとはしてくれない。
アビくんも自分の言葉に自信が持てないようで、申し訳なさそうな表情がその横顔から伺えた。
流石に一切眠らせてくれないなんてことは起こらないだろうが、それでも遊ぶ時間がなくなるのは覚悟しなければならないだろう。
「はぁ〜〜」
そう思えばこそ大きなため息が出る。
この残りの一年間、後悔がないように自堕落な生活に浸ることを、私は心の底から決意するのだった。
意見大歓迎です、評価も待ってます!
誤字脱字わからない表現があれば教えてください。
読んでいただきありがとうございました。