【獅子殺し】03
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「キッド、お前本気で言ってるのか⁈」
「何がだい?」
試合を行うために、カズさんが道場の中心へと向かって歩いて行く姿を見守っていると、先ほどから怒りを溜め込んでいたであろうレオ先生が、不満の声を師範へと漏らす。
――だが、そんなレオ先生に師範は何事もないような表情のまま視線すら傾けず。
そんな様子の師範に対して、レオ先生はさらに怒りを露わにさせた。
「何がじゃねぇだろ、何がハンデだ! ハンデが必要なのは向こうだろうが!」
レオ先生の怒りはもっともだ。
この学園屈指の武闘派であるレオ先生が相手だというのに、師範はレオ先生にではなく、スキルや魔術を扱えないカズさんに制限を設けた。
何故そんなことをしたのだろうか……?
私にはその理由が全く持ってわからないし、フェルト叔母様を見ても、私と同じ心境なのは、その困惑した表情からも汲み取れた。
不思議なのは、この状況で師範同様に落ち着いているカズさんとアビさんの二人だ。
アビさんの落ち着きについてはわからなくもない。
アビさんは強い、叔母様とどちらが強いかまではわからないが、同程度であるのはまず間違いないだろう。
ただ……こう言っては失礼だが、カズさんはそうではない。
確かに、昨朝見たカズさんの反応速度と魔装、そして闘気には確かな強さを感じえたが……正直に言ってその程度。
カズさんの魔装や闘気からは圧迫感を感じなかった。
だと言うのに……。
二人の表情に現れる自信は、いったい何処から来ているのだろうか……。
「この試合に意図があるのなら聞かせてくれないかい? 私にはあんたの考えがちっともわからない。そもそも次世代の戦神の弟子が何だってんだい? 確かに戦神の弟子って称号はすごいさ、でもそれは戦神が凄いってだけで、弟子が全員お前みたいに強いって訳じゃ」
「――たく、ペラペラペラペラ、テメェら俺らを舐めすぎだろ?」
叔母様の言葉に、アビさんが昨朝のように怒りを露わにすると。
「――っぷはははは。いやぁ本当にね」
それに釣られた師範が、大笑いしながらアビさんの言葉を肯定した。
「いやぁ、それにしても時代の移り変わりって本当に怖いよ。百年前なら戦神の弟子を卑下する人なんてこの世界に居なかったのに、やっぱり一世紀って年月はそれだけ世界を変えるってことなんだろうね」
師範の言葉に誰も口出しすることはできなかった。
師範は不老の聖人――年齢は百三十を超え。
叔母様も八十半ばと高齢ではあるが、流石に一世紀も前の話を持ち出されては言い返すことなど出来るはずなく。
「カズくんを待たせるのも悪いし一つだけ教えてあげようか」
黙り込んでしまった私達の様子に、師範は仕方ないなとその口を開いた。
「戦神が弟子に取るのは元来二種類の人種だけ――人種って言っても種族のことじゃなくて気質のことだけど。先生が弟子にするのは龍人の里にある神社、そこに眠る御神体の守護者と――」
師範はそう言うと自身の左腕に着けられた、真っ黒の認証盤を見せながら。
「確実に十六天位に成ることが出来る資質を持つ者だけだ」
これが答えだと言うように師範はそう言い終えると、試合の開始を待つように視線をカズさんの方へと向けた。
「どうなっても知らんぞ――」
師範の言葉にレオ先生は不満げにそう答えると。
自身の上着を脱ぎ捨て、筋骨隆々の上半身を露わにさせながら、カズさんが待つ道場の中心部へ歩き出す。
レオ先生は獣人の中でも獣化が進んだ先祖返りであり、その恩恵と生まれ持った才能で、通常Bランクであるキメラの上位種――Aランク相当の魔物をたった一人で打倒した獅子殺しの異名を持つ英傑。
一部の生徒は陰で『獅子の見た目なのに獅子殺しって』などとバカにする者もいるが、本人に直接そのようなことを言える生徒はこの学園には一人としていないほど、レオ先生はこの学園でキッド師範に続き、フェルト叔母様と同等の力を持った絶対的存在なのだ。
「ねぇアビくん」
「何ですか?」
レオ先生がカズさんの目の前に立ち、試合の開始を待つように両者がこちらへと目線を送ってくる中、師範がアビさんに声をかける。
「大見え切って言った手前こんなこと聞くのはアレなんだけど……カズくんはレオに勝てそうかい?」
――師範⁉︎
その自信があったからこそ、こんな条件下で試合をさせようとしていたのではないかと私が――そして叔母様は同時に思い。
すぐさまこの試合の中止を進言しようとして、私が口を開こうとした瞬間。
「――っはは」
アビさんが不適な笑顔で少しだけ笑い――笑い堪えながら。
「おいおいキッドさん冗談きついぜ、さっき自分で言っただろうが」
そう口にするアビさんの物言いは、実に自信と強さに満ち溢れたものであり。
「彼奴は先生の弟子になって一年も経ってねぇ、一年も経ってねぇが――」
そう何かを言おうとしつつ、その言葉を飲み込むと。
「彼奴は負けねぇよ」
確信を持って、アビさんは師範にそう言い切った。
「そうか――」
アビさんの言葉に、師範は愚問だったかと笑い。
そして、視線を道場中央にいるレオ先生達へと視線を向けると。
「二人とも待たせたね、それじゃ試合開始だ!」
――と言いながら。
『――ッパン!』と、手を叩いて、試合の開始を合図した。
試合が始まってすぐ何方かが行動を起こすかとも思ったけれど、何方かが先に行動に移すということはなく。
二人はお互い見合ったまま、一歩一歩ゆっくりと距離を詰め始め――
両者の腕が――いや、腕の長いレオ先生の射程にカズさんが入った刹那。
『――バン!』と、言う破壊音が。
「――ダメ!」
と叫んだ私の声と共に道場内に轟いた。
そんな……。
道場の壁には凹みが出来、そこには先ほどまで道場の中央にいたカズさんが、レオ先生に殴り飛ばされ、壁に背を埋もらせて倒れている。
レオ先生に闘気を纏った様子はなかったが、今の衝撃は明らかにスキルを使用した攻撃で間違いなく。
カズさんを見れば、真っ白な胴着の左腹部に真っ赤な血が滲んでいた。
目にも止まらぬ速さだった。
注意して見ていたはずなのに、カズさんが殴り飛ばされるまで、レオ先生が攻撃したことに気づけなかった。
「師範! 今すぐ試合を――」
カズさんを医務室へ運ばなければと思い試合の終わりを求めようと口を開くが――私の言葉は最後まで言い切る前に師範の手によって制止され。
「驚いたね……」
そう口にした師範を見れば、驚きの表情で笑い。
「これは……いったい何をしたんだい……?」
そう言った叔母様を見れば、どうしてだか叔母様までも、驚愕したような表情を浮かべていた。
「あぁーあ、舐めてかかっからああなんだ」
アビさんがざまあみろとでも言いたげに笑う。
三人の反応の意味がわからず、もう一度カズさんを見ても、体を壁に打ち付けられた状態のまま動く様子はなく。
レオ先生を見れば――
「え……?」
片膝をついた状態で、自身の右拳を押さえながら、苦痛で顔を歪めていた。
状況がわからず困惑するが、そんな私をさらに混乱させるように――
「流石にもろに食らうと凄えー衝撃だな」
私の耳に聞こえてきたのは、そんなカズさんの声だった。
先ほど壁に打ち付けられていたはずのカズさんへ視線を戻せば、カズさんはすでに立ち上がり、服についた汚れを払っている最中で。
カズさんは自身の胴着に滲む真っ赤な血に気がつくと、帯を解いて胴着をその場へ脱ぎ落とし。
露わになったカズさんの肉体に、私は驚きのあまり声を出すことすらできなかった。
あれは、なに……。
胴着によって着痩せしていたと言うだけでは説明がつかない、その異質でありながらも完成された肉体に、私の目は奪われ心臓の鼓動が高鳴り。
「無傷だって⁉︎」
叔母様が動揺の声を上げるがそれもそのはずだ。
胴着を脱ぎ捨てたことで露わになったカズさんの肉体に傷は一つとしてなく、それが意味しているのは、胴着に滲んでいた血はカズさんのものではなく。
試合を見守る全員の視線がレオ先生の――その砕け流血する拳へと集まった。
「あの強度は、流石に異常だね……」
隣を見れば叔母様だけではなく、師範までもが驚愕の表情を浮かべている。
「アビくん、説明してもらってもいいかい?」
師範からの質問にアビさんは眉を顰めると、どうしてか私と叔母様の方を見て『――ッチ』と舌打ちをした後、師範に向かってその口を開いた。
「彼奴の能力値を見たキッドさんならわかるだろうが、彼奴のあの肉体はスキルや魔術によるものじゃなく、彼奴自身の努力と特性によって出来たもんだ」
「あの力が関係してるのかい?」
カズさんの力……?
師範とアビさんの会話を聞きながら、それは一体どのような力なのだろうと考えているとアビさんと目が合い。
アビさんはまるで目が合った私にでも言うように、そして私の隣にいる叔母様に言うかのように――
「ああ、だから詳しくは今この場では言えねぇが、彼奴を舐めてると痛い目見るってのはこれで全員理解できたろ?」
私に対しては昨朝の話の続きだとでも言うように、叔母様に対しては皮肉気にアビさんはそう言うと、視線をカズさんの方へと戻してしまった。
カズさんについて、師範に聞きたいことが山ほどあるが、今の師範に聞いたとしても何も答えてはくれないだろう。
それほどまでに今、カズさんを見る師範の表情は真剣なもので――
いつの間にか私の目も、吸われるようにカズさんの方へと向いていた。
膝をついていたレオ先生が立ち上がりながら、右手から血をポタポタと流しながらカズさんに質問する。
「お前は何だ……?」
「何だって言われても、俺はただの人間だよ」
「ただの人間だと?」
「ああ、俺はただの――有象無象にいる、ただの人間の一人だよ」
カズさんの言葉には感情がなく、まるでその言葉は自分自身にでも言い聞かせているようにも聞こえ。
「――それで、負けを認めるか?」
普段のカズさんとは違う、その無感情でいて冷淡な質問に。
『――はは』と、レオ先生は、カズさんを睨みつけながら静かに笑い、こちらにいる師範へと視線を向けてくる。
「俺が舐めてるか、確かに舐めてたみたいだな!」
――ッ‼︎
言葉を言い終わるのと当時に、レオ先生から尋常ではない圧迫感を、闘気による圧が放たれた。
本気なのだとわかった。
レオ先生は今から本気で戦う気だ。
そして本気で――
「お前を舐めていたのは認める。だが多少硬いだけなら砕いてしまえば問題ない」
レオ先生は本気でカズさんを壊すつもりなのだ。
ニヤリと笑うレオ先生のその顔は、教師とは思えないほど凶悪なものであり。
「さっさと纏え――」
まるで最後の慈悲だとでも言うように。
「お前の強さを舐めてたことについては謝ろう。だからこそ本気でこい――その上でお前を屈服させる」
「本気、本気ねぇ……」
レオ先生の言葉に動揺している様子はないが、このまま戦闘が再開されれば闘気を纏っていないカズさんの体はいくら強靭だといえ耐えられるはずなく。
そう思ったからこそ、私は声を大にして叫んだ。
「ガズさん! 闘気を纏ってください‼︎」
ただ、そう言葉をかけた私へと向けるカズさんの表情は思っていたものとは違い。
困ったような、複雑そうな弱々しい笑顔を一度だけ私へ向け、静かにレオ先生の方へと向き直った。
闘気を纏うことなく、カズさんがレオ先生に近づいていき。
そして、レオ先生の目の前まで近づくと、まるで握手を求めるように、その左手をレオ先生へと差し出した。
「……何のつもりだ?」
「握ればわかるさ」
カズさんの無感情な、不変的な態度に対し、レオ先生は苛立ちを感じている様子ではあったが、自身の右手を気遣われて差し出されたその左手に、レオ先生はその手を握った。
「――ッ‼︎」
次の瞬間レオ先生の表情が豹変し、突然怪我をしている右手でカズさんの首元に掴み掛かろうとする――が、その右手をカズさんも自身の右手で掴み止めると、二人は取っ組み合いのような形になり。
何が行われているのかわからないながらも、レオ先生が焦っていることだけは傍目からも察することができ。
「闘気を纏ったレオと同等か――」
師範がぼそりと呟いた言葉に、私はどう反応すればいいのかわからなかった。
同等……同等って……。
何が同等なのだろうか……なんて、そんな馬鹿な疑問は、この光景を見れば出てこない。
「ヴゥゥー!」
獣と区別がつかないレオ先生の唸り声は、離れた場所にいる私にも聞こえ。
二人の、その力任せの取っ組み合いは拮抗して……拮抗してはいたが――
「ヴォォォー!」
闘気を纏い、身体強化系統のスキルを複数使用しているはずのレオ先生の、その全力に対して、カズさんの顔には未だ焦りの色は見えず。
「降参するか?」
カズさんの言葉と共に、レオ先生の両膝が上半身ごと、土下座をするように畳の上へ崩れ落ちた。
二人の力は確かに拮抗していた。
だが、持久力ではカズさんが圧倒し。
「まだだぁ!」
「そうかよ――」
激昂したレオ先生の返答に、カズさんは呆れるように返事を返すと。
レオ先生の両手を解放して、そのまま容赦無く、その二〇〇㎏以上ある巨体を四メートル以上蹴り飛ばした。
「アビくん……」
「なんですか?」
「カズくんから感情の波や気迫を感じないのも特性なのかい?」
私や叔母様が感じていた違和感を師範がアビさんに聞いた。
そう、そうなのだ。
人は誰しも感情によって生まれた気配がある。
怒っている人には怒りの、怖がっている人には恐怖の、そして力ある人にはそれ相応の気迫があるはずだというのに――カズさんからはそう言った気配を試合が始まってから、一切と言っていいほど感じ取ることが出来ないのだ。
「相手に興味がねぇんだよ」
「――え?」
しまった……。
アビさんの言葉につい声が漏れてしまい、急いで謝罪しようとすると。
「わりぃ、今のは言い方が悪かった……」
私が謝罪する前に、何故かアビさんの方が謝罪した。
「彼奴は……。大切な女を失った責任を常に感じてるんだよ」
今朝も言っていたカズさんの過去。
それを語るアビさんの表情は自分のことを話しているかのように辛そうで――
「彼奴は人だ。ちゃんと人の心を持ってる。だからこそ大切な女を失った責任を自分のせいにして――彼奴は自分を殺したいほど憎んでやがるんだ。そのせいで彼奴は自分の感情を、特に他者への嫌悪や悲しみなんて感情を自分の腹の中に溜め込んで、そういった感情を全部自分への怒りとごちゃ混ぜにしてやがる。だから、彼奴からは覇気を感じないし、技量と知力も無いせいで、間接的に自分の力を相手に伝える手段もねぇんだよ」
アビさんの話に私は何も言葉を返す事も出来ず押し黙り。
だからカズさんからは、感情の波を感じなかったのだと知った私は、カズさんに対して憐れみや可哀想だと思う気持ちを抱いてはいないはずだと言うのに、今すぐにでも泣いてしまいたくて……。
胸の内が握られたような感覚が走り――。
これはだめだ……。
と、瞬時にこの感情が抱いたらいけないものなのだと気がついた。
……だが、気づいた時にはもう手遅れだった。
この感情はアビさんに感じた恐怖ではない。
この感情は両親を亡くした悲しみでもない。
この感情はメイたちと過ごす喜びでもなく。
……今まで私が師範に抱いていた感情は恋心などではなく、敬愛の感情なのだと気づき。
その瞬間、私は初めて感じたこの感情の正体について、理解してはいけなかったこの感情を人生で初めて…………。
私はカズさんに恋をした。
恋をしてしまった。
恋をしたのだと理解してしまった。
嫌だった。
カズさんを好きになったことがではない。
大切な友人であるエリザの想い人を、好きになってしまった自分自身が――
とてつもなく嫌だと思った。
「大丈夫かい?」
師範が私の異変に気づき声をかけてくるので、咄嗟に頷きを返して大丈夫だと師範に伝えながら。
今までであれば嬉しいと思っていたはずの師範からの気遣いに、今は何も感じていない自身の薄情さに私は嫌悪感を感じつつ。
私の心はカズさんへの想いが膨らむ心地よさと、エリザに対して膨らんでいく罪悪感に侵され始めた。
……私の胸の内とは関係なくカズさんの試合は続いていく。
蹴り飛ばされたレオ先生は即座に立ち上がると、殺気を込めた視線をカズさんへと向けたが、そんな身も竦むような視線を正面から受け止めてもカズさんは動揺する素振りすらなく。
「来るなら来いよ?」
それどころか挑発した。
挑発によってレオ先生の殺気と闘気による重圧が一層に増した。
どうやら、挑発に乗ったようだ。
レオ先生は背を曲げて四肢を畳に着くと、獣の形相でカズさんを鋭く睨み、腕と腿に力が込められ膨張した次の瞬間には――
獣が獲物に襲いかかるようにレオ先生は飛び出した。
その速度は先ほど私が捉えきれなかった攻撃に匹敵する速度で、そんな速度から繰り出される攻撃が私に捉えられるはずがなく――捉えられるはずはなかったが。
カズさんがそんなレオ先生の攻撃を目前で横へと飛んで避けたのはわかり。
右に避けたカズさんを、さらに狙ったレオ先生の鋭い鉤爪を、カズさんは体をそらして避け――避けられるのも想定の内だという勢いで、レオ先生が体当たりしにくると。
カズさんは、そんなレオ先生の右腕に左手を添えながら体当たりを避け――避けながら、レオ先生の右腕を左脇に挟むようにして抱え。
次の瞬間『――ッバキ!』と躊躇することもなく、丸太のようなその太腕を押し潰す様にして砕き折ってしまった。
「認めるか?」
「――ウォォォ‼︎」
折った腕を解放し、カズさんは再三の確認を行うが。
意地なのだろうか、それとも理性を失っているのか、その最終勧告にレオ先生は雄叫びを上げ。
「そうかよ――」
そんなレオ先生の様子に、カズさんはもう何も聞くことは無いと、そう言葉を吐き捨てた。
カズさんが次の瞬間瞬時にレオ先生との距離を詰め――突然飛び込んできたカズさんに、レオ先生は蹴りを繰り出すが、先ほどよりも数段遅い蹴りが当たるはずもなく。
空振ったレオ先生の左足を左手でカズさんは掴み取ると、無防備になったレオ先生のその顔面に右手の拳を叩き込み。
さらに体勢を崩して仰向けに倒れたレオ先生に覆い被さるようにして立つと――
カズさんは拳を振り上げ、意識を刈り取るその一撃をレオ先生の顔面に『――ッガン』と音を立てて捩じ込んだ。
「――そこまで!」
師範が試合の終了を宣言する。
圧巻だった。
こんな戦闘を、レオ先生が力勝負で一方的に破れる姿を初めて見た。
「お疲れさん」
こちらへと向かってくるカズさんに、アビさんが拳を突き出し。
「おう、交代だ」
その拳にカズさんが拳を合わせる。
そんな二人の友情に横槍を入れるわけにはいかないと思いつつも。
「カズさん、お疲れ様でした」
私は、そんな当たり障りのない労いの言葉をカズさんへ送り。
「ユイさん、昨日は色々とすいませんでした。これからもよろしくお願いします」
そう笑顔で右手を差し伸ばしてくれたカズさんの手を、私は握り返しながら。
ああ……もう私は……。
この感情から逃れることはできないんだ。
と、そう理解せざるを得ないのだった。
意見大歓迎です、評価も待ってます!
誤字脱字わからない表現があれば教えてください。
読んでいただきありがとうございました。




