【授業前の衝突】02
俺からの返答にアビはやれやれと息を吐くと、俺が装備できる武器でなければ魔装を纏えない理由を説明し始める。
「普通、魔装は魔力を放出して、放出した魔力を操作して任意の場所に固定した上で、魔力属性にもよるが、強化・硬化・特化する――流石にそれは知ってるよな?」
「はい……特化のことについては授業では習いませんが、私や一部の生徒は知っています」
その一部の生徒の中に、エリザは含まれていなかったのだろう。
ユイの言葉を聞いたエリザが、この話を自分が聞いてもいいのだろうかと、不安げな表情を浮かべ。
そんなエリザの様子などお構いなしに、アビは説明を続けていく。
「魔術と違って魔装は技術。知力が高いに越したこたねぇが、知力が低かろうが魔力さえ知覚できりゃ、あとは努力次第で魔装は扱える――ってのが、一般的な考えなんだが……」
そこまで言うとアビは俺の方へと視線を向け。
「世の中には知力がねぇくせに、魔力が膨大にある『馬鹿』が、いやがりやがる」
――と、その『馬鹿』が俺であることをユイとエリザに認識させた。
「俺もこの馬鹿に出会うまで知らなかったことだが、普通敏捷値がある程度ありゃ魔力を知覚できる。それこそ、その大馬鹿は敏捷値が三桁以上あるから、魔力の探知も簡単にやってのけるんだが……。その大馬鹿野郎は魔力量が多いくせに体から魔力が一切漏れ出てねぇせいで、体内の魔力濃度が高すぎて、他人の魔力は知覚できるってのに自分の魔力を一切知覚できねぇんだ」
なんだか先ほどから俺への悪態が酷くなってきている気がするが、アビの説明に間違いはなく。
多少呼ばれ方に文句を言いたい気持ちはあったが、刀のこともあり、俺は出かけた文句を飲み込むことにした。
「結果、こいつの体質じゃどう足掻いても魔装を自力で纏う事が不可能だって判断した先……神が、魔力を食わせることで擬似的な魔装が纏える宝珠をこいつに渡したんだ。ただ、宝珠の魔装対象は使用者自身と、使用者が保有する認証盤が認める装備品って制限があるせいで、こいつの魔装は装備できる武器じゃなきゃ纏えねぇんだ」
「「…………」」
話を聞き終えた二人はお互いに無言で、エルザはそうなんだと納得したように頷き。
ユイの方は何か希望に、可能性を見出したような表情を浮かべながら、その口を開いた。
「魔力を食べさせると魔装が纏える宝珠って――そんな物が存在するんですか? もしそんな物があるんだったら」
「勘違いさせたようでわりぃが、宝珠の複製や、複製したとしても使用するなんて不可能だからな」
「……それは、なぜですか?」
「まず第一に、こいつが持ってる宝珠は英雄フリークの遺作、そん中でも魔力を際限なく食い潰すくせに魔力効率が絶望的な失敗作。そもそもこいつの異常な魔力量が無けりゃ、使おうとした瞬間に秒で意識を無くすか、激痛で悶え苦しむことになっちまう駄作だ」
アビの説明通り、この宝珠を扱えるのは今の所俺ぐらいしかいないらしく。
興味本位で使おうとしたアビは、宝珠を発動した途端、激痛に襲われて倒れ、五秒と持たずに意識を失い。
先生ですら『私にゃあ扱えん、お前のためにあるような代物だ』なんて、呆れたように言っていた。
先日見たアビの魔力量は340。
そもそも能力値が常人より高いアビが宝珠を扱えないという時点で、普通の人が宝珠を扱うのは不可能であり。
「カズさんの魔力量はどのくらいなんですか?」
そんなことを知らないユイが、その疑問に至るのは至極当然のことだった。
ユイはこの宝珠の機能に何か可能性を見出している。
それも、希望に満ちたようなそんな可能性を。
そんな思いを抱いているからこそ、ただ単純に魔力量が多くないと扱えないなんて大雑把な説明ではユイも納得できるはずなく。
そんなユイに、俺自身の魔力量について教えてあげたい気持ちもあったが、流石に魔力量が5000あるなんて言えず。
俺が口を噤む様子に、回答がえられないのを察したユイはアビへと視線を移すが――能力値の秘匿性に、人一倍慎重なアビが俺の能力値を言うはずもなく。
そんな沈黙的な状況が十秒ほど流れ終える前に――
「勧めはしねぇが、魔力量に自信があんのなら一瞬だけ宝珠に触れてみりゃ俺の説明に納得できるはずだぜ?」
自身がそうであったように、アビが一番手っ取り早い方法を提示した。
一瞬か……。
確かに一瞬だけならば苦痛が伴う事があったとしても気を失う事はないだろうが……アビの言う通りお勧めできる方法ではない。
が、当のユイはすでにやる気満々といった表情で俺へと視線を向け、そんな相手に辞めた方がいいなんて俺に言うことができるはずもなかった。
仕方ない……。
「ユイさんがどうしてもと言うのなら止めませんが、大丈夫だと思っても触れるのは一瞬だけにしてください」
「わかりました」
ユイが頷きを返すのを確認して、俺は左手の袖を捲り、認証盤に施された宝珠――竜胆を腕ごとユイの目の前に突きだした。
「師範と同じ認証盤……」
ユイはそう小さく呟くと、そのまま自身の手を竜胆へと伸ばしーー
「――ッ⁉︎」
ユイの中指が竜胆へと触れた瞬間、手を引いてユイと竜胆を引き離した。
だが、その一瞬でも厳しかったのだろう。
ユイは体を上下に揺らしながら、息を整えるのに必死なようで。
「大丈夫ユイさん⁈」
心配そうに声をかけるエリザの声にも、微かに頷きを返すだけで声を出すこともできず、その顔を見れば脂汗が浮かび、誰がどう見ても大丈夫とは言えない状態であった。
「魔力量に自信があったんだろうが、今のお前の状態が魔力欠乏症の症状だってことぐらい理解できるだろ?」
アビの言葉にユイは再度頷き。
そんなユイの状態を見兼ねてか、アビは自身の認証盤から赤い液体が入った、俺にも身に覚えがある赤い液体が入った瓶を取り出すと、机の上に置いから滑らすようにユイへ投げ渡した。
「特級薬師が造った一級品の万能薬だ。それでも飲んどきゃ直ぐに吐き気は治るぜ」
アビの言葉を聞いてユイは直ぐにその瓶を手に取り栓を抜くと、我慢の限界だったのだろう、躊躇う様子も無く瓶の中身を飲み干した。
空になった瓶をユイが無言で見つめ、その表情が穏やかなものになっていく
――が、その表情とは対照的に、空瓶を見つめるユイの視線は訝しげで……。
恐る恐るというように、ユイはアビに質問した。
「これは……一体なんですか?」
「さっきも言ったろ、それは特級薬師の一級品の万能役。効能は魔力の回復から免疫向上、挙げ句の果てに粗方の毒の解毒ができるっていうだけの、ただの万能薬さ」
そう、あの薬は特級薬師である神主のカイさんが創った薬であり。
「でもこれ、血ですよね……?」
「ああ、原料はカズの血だ」
この薬は俺の血を元に造られていた。
まぁ、俺の血とは言っても一瓶に含まれている量としては三滴程度で、俺が死んだ際に俺自身の細胞などは消失しているはずなので、瓶の中身の液体は俺の血に似せて作られた、魔力と抗体を保管するための人工血液でしかないのだが。
その液体の見た目、匂い、味はまんま俺の血と同じものらしく。
とんでもない物を飲まされたとでも言いたげにユイが俺へと視線を向けてきた。
向けられた視線から顔を背けるとエリザと目が会い、エリザは何か俺に言葉をかけようとしていたが、かける言葉が思い浮かばなかったのか口を噤み。
「おいおい文句は言うなよ?」
アビがユイに言う。
「こいつの血が入ってて確かに気持ちわりぃかもしれねぇが、市場に出しゃ軽く見積もっても一本三万は超える薬だからな」
――え? 三万って、三万G⁉︎
「これそんなすんの⁉︎」
黙って聞いているつもりだったが、唐突に知った薬の価値に驚きアビに聞き返す。
「ああ、まぁ万能すぎて市場に流したら、作り手のカイさんと素材のお前はまず間違い無く飼い殺しに遭うから、簡単に現金化は出来ねぇけどな」
そう……だったのか、流石にそこまで価値のある物だとは思ってもみなかった。
そもそもこの薬を創ることになったのは、カイさんのちょっとした好奇心が理由であり、製造期間も三日、造ったのも百本程度という小規模なもので、確かに効能だけを見れば高価そうではあるが、造った薬の七割を俺にくれたカイさんの様子から、そう大した物ではないと思っていたのだが……。
――あれ?
そこで思い出す。
「そう言えばお前、俺からこの薬二十本ぐらい持っていかなかったか?」
思い出したのは、カイさんからこの薬を受け取った時に『貰ってくぞ?』と言って、十本入った薬の木箱二つを自身の認証盤の中に蔵っていたアビの姿。
『面倒な事に気づかれた』とでも言いたげに顔を歪ませているアビの様子からも、初めからこの薬の価値に気づいていたのは間違いないらしく。
そう言えば先生にも薬を三箱持っていかれたような……。
と、当時のアビと先生の姿が頭に浮かび上がってきた。
どのみち俺が自分にこの薬を使う事はないし、価値がいくらだろうが欲しいと言われたら普通に渡していたはずなので特に思うことはないのだがーー。
この際ちょうどいい。
「とりあえず今までとこれからの刀は、これでチャラだからな?」
「わーってるよ、もともとそのつもりだ」
アビはそう言うと『バレちゃ仕方ねぇな』とでも言いたげに、両手を顔の横に上げて諦めたポーズを一度取ると、上げた両手を頭の後ろで組み。
俺は俺で多少負い目を感じていた刀の件を気にする必要がなくなったため清々しい気分で。
俺達は揃って、未だ不満げなユイへと視線を戻すことにした。
ただ、ユイも薬の価値を知ったからか、これ以上何かを言う気を失ったようで、渋々と言いたげに口を開くと。
「カズさんが持つ宝珠の件は納得しました……ですが今後こういった薬を提供してくださる場合は、一般的な物でないのなら事前に説明をお願いします」
そう俺達に、特に俺へと言ってきた。
そもそも薬を渡したのは俺ではないので、初めから俺が責められる言われはないはずなのだが……これ以上は話の掘り返しになると思い。
俺はとりあえず、ユイの言葉に頷きを返すことにした。
「それと後言いになってしまいましたが、授業では闘気や魔装も厳禁ですので、魔装が纏えなくとも大丈夫です――なので授業用の武具をどうするか教えてもらってもいいですか?」
「「…………」」
どっと疲れた気分だ。
今までの説明は一体何だったのだろう……。
そもそも論の問題に、俺どころかアビまで黙り込んでしまった。
アビに横目で助けを求めても、返ってくるのは哀れみの視線だけ。
一体どうすればいいというのだ……。
それが規則だと言うのなら、どうすることもできないと、わかってはいるが……そうなると本当に俺が授業に出る意味がなくなってしまったように思える。
「――もちろん、授業中の使用は禁止ですが授業外は別ですよ!」
俺達の、特に俺の様子に何か危機感を感じたのか――
「それこそ青年団に入れば魔装や闘気を習得する機会も色々ありますし、望む様でしたら私からも多少教えられる事はあると思います」
安心してくださいとでも言うように、ユイが俺に言ってくる。
おそらくだがユイは俺が魔装を自身で扱えないように、闘気も扱えないのだと思っているようで、その辺の話はキッドさんから聞いていなかったようだ。
「はぁ〜あ――たく。習得の手伝いって……」
アビが落胆の息を吐き、鋭くユイを睨み。
その冷たい声に、ユイとエリザが『ビクリ』と肩を震わせる。
「あのババアといい、お前の兄貴といい、ここの連中は俺らのことを舐めすぎだろ」
「そんなつもりはなかったのですが……」
「つもりは無くても十分軽視してんだよ」
次の瞬間――
このバカ、いくら何でも順序があんだろ!
――突然、アビが魔装を纏って威圧を放ち。
「アビ!」
突然のアビの行動に訳がわからないながらも、まずいと思い止めようとするが。
「――そもそもの原因はテメェだ!」
アビの威圧が俺へと向く。
「お前は他種族に甘すぎんだよ。配慮や贖罪のつもりか? そうだと思ってんのならお前もここの連中と同じだろうが!」
「――ッ⁉︎」
闘気を身に纏ったアビが、認証盤から生身の刀を取り出して突然斬りかかってきた。
――一体何のつもりだよ、訳がわからないにも程がある!
咄嗟に俺も闘気を身に纏い、椅子から倒れるようにしてアビの一太刀を避け――二太刀目を繰り出される前に、俺も刀を取り出しながら認証盤の竜胆に触れて魔装を纏い。
次の瞬間『――ッバン!』っと、重鉄鋼がぶつかり合う轟音が食堂中に響き渡った。
「「キャ――――‼︎」」
近くにいた生徒達が叫び声を上げて食堂中が騒ぎだす。
が――
「お前なぁ……」
そんな生徒達の叫び声とは裏腹にアビは刀を蔵い、魔装と闘気も解除して何事もなかったように椅子へと座り。
本当に何がしたいんだよ……。
そんなアビの様子に俺も刀を蔵って、闘気と魔装を解除しながら倒れた椅子を立たせて座り直した。
「意味がわかったか?」
「はい……」
アビの言葉に焦った表情でユイが返事を返し。
隣に座っているエリザは、突如起きた出来事に対して驚いてしまったのか放心状態といった表情のまま固まっていた。
「――何事だ‼︎」
騒ぎを聞きつけたレオが、怒りの形相で食堂に入ってくる。
生徒達の様子からこちらへと迫り来るレオと目が合い、その睨みつけてくる視線からは怒りと鬱憤が見て取れた。
あぁ、めんどくさくなりそうだ……。
こちらに向かってくるレオから目線を外して、未だ食べ終えていなかった味のしない朝食を口の中へと掻き込むと。
アビも俺のそんな様子を見て、同じように朝食を掻き込み始めた。
「さっきの音は何だ!」
目の前まで来て怒鳴り声をあげるレオを俺とアビはシカトする。
「答えんか‼︎」
「――ッチ」
アビから怒りの感情が垣間見えるが、舌打ち以外の反応は示す気はないらしく。
「何だお前らのその態度は‼︎」
アビ以上に我慢の限界だったのか、レオはそう言うと同時に俺の耳元。
鬢をいきなり掴むと、そのまま俺を立たせようとでもするように力ずくで引っ張り上げた。
体格の割には髪を掴み上げる力が入っているように思えないので、多少手加減はしてくれているのだろうが。
だからなんだと言う話で――
何の返答も返さない俺達の様子に痺れを切らしたのか、髪を吊り上げるレオの力は段々と強くなり――その力は数秒で、俺を強制的に立たせるまでに至った。
「なぜ黙っている‼︎」
「先生やめてください!」
俺が力尽くで立たされる様子にユイが声を上げるが、レオが力を緩めるような気配は無く。
いつの間にか隣にいるアビには見向きもせずに、レオの大きは瞳は俺ただ一人を睨んでいた。
はぁ……本当に面倒くさい。
なぜ俺が注意を受けなければならないのか。
状況を把握していないくせに、なぜこうも自分が正しいと言いたげな態度を取ってくるのだろうか……。
俺も人のことは言えないと重々承知してはいる。
だが、それにしたって教師だからという理由だけでこうも理不尽な対応をしてもいいのだろうか?
苛立ちは感じないが、今後の対応を考えると面倒くさい。
ユイが止めてくれても止まらないコイツの様子からして、何らかの反省の色を見せなければこの状態から解放してはくれなさそうだ。
こんなことなら髪を掴み上げられてすぐ『痛い痛い痛い!』とでも言っとけばよかった。
睨んでくるレオの瞳を見つめ。
「そろそろ離してもらっていいですかね?」
冷静な声で言葉をかけると、レオの目がより一層鋭くなり。
「教師に向かってその態度は何だ! ふざけてるつもりか‼︎」
俺を吊り上げる手とは反対の腕を勢いよく振り上げた。
短気で単調な、扱いやすい奴だ。
これで面倒な説明などをせず、この無駄な時間は終わってくれそうだ。
「――もうやめてください‼︎」
レオからの一撃を待っていると、エリザが震えるような声で、今にも泣き出しそうになりながら大声を上げ――
必死なエリザの静止の声が効いたのか、レオは振り上げた腕を止めて、エリザとユイを一度見ると、振り上げたその腕を下へと下ろした。
不満げな表情だ。
「この事はキッドに伝える。何らかの処分は覚悟しろ」
睨んできながら、レオはそう言い俺の髪から手を離すと、ユイに何か目配せを送り。
そして、周囲を一度見渡すと、そのまま食堂から出て行った。
「大丈夫ですか⁈」
食堂にいる生徒達の目線など気にもせず、エリザが俺の側へと駆け寄ってくる。
「大丈夫だから気にしないで」
「でもさっき――」
エリザが今にも泣きそうな眼差しで、先ほど俺が掴まれていた髪に手を伸ばし、心配そうに触れてくる。
「本当に大丈夫だから気にしないで」
微笑みながら大丈夫だと、触れてきたエリザの手に触れて伝えると。
謝る必要なんて微塵もないというのに、ユイが深々と頭を下げてくる。
「私が止めなければいけなかったのに、申し訳ありませんでした――」
「いやいや、元はと言えばこのバカが原因なんで気にしないでください」
隣で太々しく座っているアビに指を差す。
「誰がバカだって?」
「オメェだよ!」
この後に及んで自分には一切の日がないとでも言いたいのかこのバカは――
はぁ……。
耳元に手を触れているエリザの手をそっと離し、食堂でこちらを見てくる生徒達に視線を向けながら、謝罪の意を込めて俺は頭を下げることにする。
彼らから感じる感情は様々ではあったが、大半の生徒は騒ぎの終結を理解したのかこちらへの興味をなくしたらしく。
一部の生徒の苛立ちと恐怖心を感じはしたが、そんな生徒の特定などはぜず。
「あっ――」
食器を片付け食堂から立ち去ろうとした俺に、エリザが悲しげな声を上げた。
どうやら先ほどのやりとりのせいで、俺がもう授業に出席しないのでは? などと思っているようだ。
確かにあのやりとりの後で、午後からの武術授業の顧問であるレオの授業に出席したいとは思わないが――レオ自身の口から授業に出るなとでも言われない限り、俺はどの授業にも出席するつもりではいるのでそんな心配は必要ない。
……それにしてもエリザから感じる感情の波が過敏過ぎる。
エリザの思いは先日の告白からもわかってはいるが、だからと言ってカナミと同じような返答をすれば彼女は泣いてしまうだろうし――少なくとも彼女の不安定なその感情に、返す言葉は俺に無い。
「少し気分転換に走ってきます。一限目に遅れるかもしれませんが、授業には出席するつもりなので気にしないでくださいね」
「……わかりました。そのように伝えておきます」
心なしかユイがホッとした表情を浮かべた。
エリザと同じように、ユイも俺が授業に出席しないとでも思っていたのだろう。
とりあえず、伝えることは伝え終えた。
最後にアビに視線を向けて、先ほどの行為は一体何だったのかと聞こうかとも思ったが。
あれ以降、視線を向けてこないアビの様子に俺も視線を送るのはやめることにし。
これ以上は話すことはないと思った俺は、一足先に食堂から出て行くことにした。
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誤字脱字わからない表現があれば教えてください。
読んでいただきありがとうございました。




