誰かいるんですけどオバケじゃないよね?
ーーガシャン! と背後で施錠されると、1本の燭台に照らされてそこに誰かがうずくまっている。
あたしは嫌な気配と恐怖に入口の鉄格子に背中をぶつける。
のそりと立ち上がり燭台の灯りに照らされペッタッペッタと近づいてくる。
あたしは近づいてくる人影と鉄格子を何度も交互に見つめ、意識が遠退いた。
……。
…………。
……。
♪~♪~♪~♪~♪~……。
すごく小さな音。
どこかで誰かがピアノを演奏しているのがわかる。
すごく心地よく、耳馴染みの良い曲だった。
♪~♪~♪♪~♪~♪♪
音色が徐々に小さくなるに連れて、あたしは覚醒する。
「おい、大丈夫こ?! 人の顔見て怖がって気絶するなんてないんじゃないか?」
あたしは牢獄に放り込まれ、次の瞬間にはそこにいた男の子を見て気絶したのだ。
でもフードを脱いで顔を晒す彼、よく見ると線が細くてあたしより頭一つ低い金髪、色白の童顔の男の子。
「俺はチェーリオ。 一応ここでは二十八号と名付けられてる」
どうやら彼はお化けや幽霊の類いではなく足のある人間だったようだ。
だって、頭からすっぽりとかぶった外套なんて着て、こんな場所にいるなら誰でもお化けだって間違えるわよ!
でも……、二十八号を、名乗る彼を見て気絶する直前にペタペタと足音がしたのを思い出す。
アハハハ~! と、カラ笑いしながらごめんね。と謝っておく。
「全く、ついてないぜ……。宝物庫に挑んだってのに、即見つかってこの通り。 あの宝物庫、危険物置き場なんて言われてかなりヤバイものがあるって聴いたケド、やっぱり一人で侵入は難しいのかなぁ? 」
そういって二十八号、チェーリオ君は壁際の簡易ベッドに足を伸ばして仰向けになる。
確かにチェーリオ君のいう通り、宝物庫にはかなり危ないものがわんさかしていた。
その中のごく一部があたしの胸の中に詰め込まれているんだけど……。
「あ~あぁ!一度でいいから宝物庫入ってみてぇなぁっ!」
チェーリオ君は悪態をついて静かになる。
「そぅよねぇ、確かに宝物庫にはいろんなものがああったはね。 金目になるものから、世界を終わらせるような武器や兵器、もちろんそれらから身を守る防具やアイテムも沢山あったわねぇ……。」
あたしは思わずボソリと口走ってしまった。
ガコーン!ガタガタッと
壁から吊るしていたベットから跳ね起きその場から一瞬であたしの正面に十六号が現れる。
「ホントかよ十六号! おまえ宝物庫に辿りついたのか?」
声を荒げてチェーリオ君が叫ぶ。
どうやらあたしはチェーリオ君の地雷を踏んでしまったようだ。
「なぁ、十六号!どうやって?! どうやって宝物庫に入った?!」
チェーリオ君があたしの肩を掴んで揺すってくる。
あうあうあうあう
肩を揺すられてそんな馬鹿な声はあげられないけど、それ以前に肩が痛い。
チェーリオ君の幼い顔立ちからまっすぐな瞳とその瞳に宿る炎を感じて、チェーリオ君の真剣味が伝わってくる。
あたしは、チェーリオ君の本気に気圧されてしまったけどチェーリオ君は
「やっぱり宝物庫侵入は男のロマンだからな!」
と、身も蓋もない事に、もっと凄い理由があると思ったけど、このくらいの男の子が抱く願望の類いにあたしは少しガッカリしたのだった。