九十七話 尻尾
俺と了斎たちは事件現場の蕎麦屋にやってきた。
俺「ここって・・・・俺たちが前に来たところだよな?」
春日「え・・」
久遠「オレもよくここに来ていた。遺体はどこに?」
兵士「ついてきてください」
奥には、遺体が転がっていた。しかも頭部は持ち去られている。
了斎「これは・・店主か?」
兵士「周囲を探しましたが店主は見つかりませんでしたので、おそらくこの方が店主だと思われます」
俺「そうか・・・・」
春日「細かく調べるのは華城が来てからにするけど、頭部が持ち去られてるっていうのは一つの情報だね・・」
他の場所の遺体も頭部が持ち去られていたら、同じ犯人もしくは同じ組織の可能性が高まる。
久遠「事件発生時の情報はあるか?」
兵士「はい。事件発生時刻は二日前の夜九時頃。閉店時刻間際になり、店主が片付けをしている際の犯行かと」
俺「二日前って、祭りの真っ最中じゃねぇか」
兵士「街中の人々が祭りに参加し、人が減っている所を狙ったのでしょう」
翔斗「祭りに参加を諦めてまで任務を果たす意識の高さは称賛に値するが、殺人事件は少しいただけないな」
俺「店主の身辺調査はしたか?」
兵士「しました。店主は客からの評判もよく、周りの人に好かれていました。怨恨が理由の殺人ではないのではないでしょうか」
久遠「そうだな。手際の良さ的にも殺し屋が仕事としてやったように思える」
*
蒼月「ここでござるか?」
兵士「はい。遺体は入り口のそばですので気をつけてください」
俺「入り口のそばで殺されたのか・・?」
普通、殺人事件って見られにくい場所とかで起こるものなんじゃないのか。
獅電「死体発見による騒ぎを起こすことも目的だったんだろう。殺しに相当な自信があるから目立つことを優先した、ってことじゃないか?」
茜「んで、その作戦は大成功だったと。きっしょ」
遺体を見ると、頭部は持ち去られていた。
兵士「他の事件現場の遺体も、頭部だけが持ちされているようです」
獅電「普通に考えて、やったのは同じ奴らだろうな」
将英「事件発生時刻は?」
兵士「二日前の夜十時頃、閉店間際の時間帯です」
祭りの最中か。ったく、嫌なタイミングで事件起こしやがって・・
*
僕は直政さんたちと共に事件現場へと向かった。
直政「ここが事件現場か」
僕「これ、この前来た銭湯だよね?」
直政「私が忠勝をおぶって連れてきたところだ」
雷煌「そんなこともありましたね・・」
兵士「今回の死者は銭湯の受付をしていた男性です。頭部と陰部は持ち去られているようです」
火蓮「陰部を持ち去ってどうするんじゃ」
直政「闇の業界ではそういったものも高く売れる。完全に殺し屋の仕事だ」
僕「はぁ・・・・」
店の奥から大きな音が聞こえた。
火蓮「何の音じゃ?」
直政「今、この戦闘は営業していないよね?」
兵士「はい。事件以降休業しています」
直政「じゃあ今の音は一体・・」
僕「見に行ってくる」
直政「一人で行くのは危ない」
僕「たぶん男湯の方から音が・・・・」
のれんをめくった瞬間、男が刃物を僕の首元に伸ばしてきた。
男「お前ら。声を出したらすぐにこれで首を掻っ切る」
直政「武器を持っているのはこちらも同じです。いざとなれば首を斬るのは私らの方ですが」
火蓮「何かあったかー?」
男「答えるな」
直政さんと目を合わせ、僕がのれんの方を向いた瞬間、直政さんが刀を抜いた。
僕「敵だ! 確保する! 今すぐこっちに!!」
言い終わる前に雷煌がこちらへやってきた。
直政「雷煌、男から刃物を取り上げるんだ」
雷煌「はい!」
雷煌が刃物を取ったので、僕が飛びついて男を捕まえた。
直政「忠勝の体躯では抑えきれない、私が代わる」
しれっと傷つくことを言われたけど・・仕方ない。適正があるもんね。
火蓮「それで、お主は何者なんじゃ?」
男「俺はっ・・この店のっ・・・・」
雷煌「この店の人なんですか!?!?」
直政「信じないように。でまかせを言っているだけです」
僕「まず、店の人が刃物を持って待ち構えるわけ無いじゃん」
雷煌「確かに・・」
火蓮「どうやって城まで運ぶ?」
兵士「一度、凜花さんを呼びましょう。拘束した状態で虎に乗せて城へ戻らせます」
僕「別に乗るのは馬でいいでしょ」
兵士「そうでした」
*
現場に向かった者たちが城へ戻ってきた。
一人おまけを連れて。
我「その男は?」
直政「事件現場の銭湯に潜んでいた。関係者の可能性が高い」
我「そうか。しかし・・何故事件から二日経った今、銭湯に居た?」
兵士「銭湯での事件のみ、発生時刻が昨晩です」
三か所とも同日ではないのか・・
獅電「何故銭湯のみ日にちが違う?」
宰川「今現在では分からないが・・その理由は何かを掴む手がかりになるかもしれん」
我「調査書を見ると、全ての死者は頭部が持ち去られており、銭湯での被害者は陰部までも切り取られていたとある」
清次「どうして陰部を?」
我「おそらく売却して金にするのだろう」
清次「チン棒って金になんのか」
我「臓器を売るのとおそらく同じようなものだ」
清次「勉強になるな」
いつ使う知識なのだろうか。
久遠「とにかく、手口が似ているということから同じ組織であると言えそうだな」
坂本「目撃情報とかはねぇのか?」
宰川「なんせ祭りの最中だからな。多少不思議な動きをしているものが居ても気にしない人が多いだろう」
清次「でも、昨日起こった事件なら少しは情報ありそうじゃねぇか?」
宰川「銭湯の従業員に聞いてみよう」
兵士「連れて参ります!!」
四人の授業員がやってきた。
我「昨日、事件が起こった時は何をしていた?」
従業員・一「館内清掃をしていました。受付のところへ戻ると死体があって、すぐに連絡をしました」
我「何時頃だ?」
従業員・一「閉店間際の夜十時です」
違和感のない証言だ。
我「では、四人の中でこの男が店に入るのを見たものは居ないか?」
従業員・三「あ、この人・・・・!」
霧島「見覚えあるのか!?」
従業員・三「はい。ここ最近、何回か店に来ていたんですが、受付の辺りをうろついて風呂に入らず帰っていくんです。私たちの間でも少し話に上がっていて・・・・」
清次「怪しすぎるなぁお前ぇ?」
正直真っ黒だ。こいつじゃないと思うほうが難しい。
我「絶対的な証拠がないのであれば、お前は近々処分されるがいいな?」
男「待て、殺したのは俺じゃない!」
坂本「あー。言っちまったな、『殺したのは』って」
宰川「殺す以外で何かしたということだな?」
男「そんなの言葉の揚げ足取りじゃねぇかよ・・」
我「何もなければそんな言い方はしないはずだ」
清次「小指を失いたくなければさっさと認めるんだな」
男「これでもし、俺じゃなかったらどうする?」
清次「どうもしねぇよ。お前と同じ組織のやつから犯人を見つける」
男「組織? 何の話だ?」
清次「しらばっくれんな」
我「まず、銭湯に入って風呂にも入らず出ていった理由は何だ?」
男「暑かったから・・涼もうと思って」
美咲「苦しい言い訳! 銭湯なんだから外より暑いに決まってんでしょ? それもわからないくらいの馬鹿ってこと? それとも、嘘ついてるの?」
清次「両方だろ。それも分からない馬鹿なんだよ」
宰川「この先、俺たちに情報を出すつもりは一切ないのだな?」
男「ああ」
清次「ってことは、情報を持って入るってことだな。よし、拷問開始!」
我「はぁ・・」
結局やるしかないのか。
我「春日、この男の手足を椅子に縛ってくれ」
春日「できた!」
我「じゃあ、拷問室に・・コホン、地下室に連れて行け」
兵士「はっ!」
伊海「これで情報が出なかったどういたしますか?」
清次「ていうか、多分情報はあいつから出てこねぇよな。引き続き現場や死体の調査をさせるしかない」
宰川「そうだ、華城。遙華に医学は教え終わったか?」
我「ああ。我が与えられる知識は全て与えた。既に遙華も生徒へ授業を始めている」
宰川「よし。そいつらを現場へ向かわせる。実習のようなものだ」
我「御意。凜花、華城塾へ行って連絡を頼む。遙華を中心に調査をさせろ」
凜花「了解です!」
久遠「こんなところで活きてくるとはな」
我「教育とは未来への投資だ。必ず思いがけないところで役に立つ」
清次「必ず、なのに思いがけねぇのか。だからやる気が出ないんだよな」
我「清次に勉強は必要ない・・というか、もう手遅れだ」
清次「ああ、俺もそう思う」
将英「拷問をするのは誰だ?」
拷問は二人で行うのが良いと思うが・・誰にするべきだろうか。
獅電「俺がやる」
我「できればもう一人欲しいところだが」
坂本「俺俺!!」
我「わかった。ではその二人に頼もう」
宰川「ああ」
*
?「首領。死体が幕府に見つかったようです。そして一人が確保され、現在拷問を受けているとのことです」
影王「そうか。しかし、私たちに辿り着くことは不可能だろう。もし何か情報を出すようなことがあれば・・」
?「まぁ、僕が殺すので大丈夫です」
?「おい、殺すのは俺様だぜ!」
?「別に誰がやったっていいでしょ・・張り合わないと気がすまないわけ?」
影王「まぁいい。幕府との決戦を始める準備はできている。私たちの存在にもっと早く気づいてくれると思っていたのだが・・寂しいものだ」




