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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
幕府編

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九十六話 伸るか反るか

俺「よし、八時半だ。容器も無くなりそうだしこの辺りで店を閉めるか・・」


店員「了解です!」


彰「花火は何処で見るんでしたっけ?」


俺「城の最上階だ。彰は幹部だから俺たちと一緒だぞ」


彰「最上階・・!!」

俺も最上階に行くのは今日が初めてだ。どんな眺めなんだろう・・まぁ、ある程度想像はできているが。


城に戻り、最上階へ行くと、同期組は揃っていた。


華城「清次も間に合ったか。よかった」


俺「花火はまだか?」


翔斗「もうしばらく待つみたいだ」

まぁ、ちょっと落ち着いてからのほうがちょうどいいな。


茜「うっわ、最上階ってこんな感じなんだ・・」

階段を登リ終えて言った。


彰「俺も初めてきました!!」


茜「うっさ」

相変わらず冷たいな。


坂本「まだ来てねぇのは?」


宰川「忠勝と直政だ。その二人以外は揃っている・・よな?」


久遠「ああ。京夏は今お菓子を用意させているらしい」

お菓子もあるのか。やったぜ。


俺「うわぁ・・・・」

柵から少し外に身を乗り出して、祭りの全体を見渡してみた。

綺麗だ。俺はこの景色を見るために生まれてきたのか、と錯覚してしまうほどに。


蒼月「夜の夏祭りは、幻想的な輝きに包まれた夜空が煌めく提灯と共に街を彩る。微風が運ぶ夏の香りが夜の祭り場に漂い、心を浮き立たせる。

縁日の賑やかな喧騒と、夜風に揺れる浴衣姿の人々が、一瞬の魔法に身を委ねているかのよう。

灯りに照らされた屋台の露店は、夜の祭りならではの魅力を放ち、そこで感じる温かな雰囲気は、何気ないひとときが大切な思い出に変わる予感を呼び起こす。夜の夏祭りは、時が止まったかのような幸福な瞬間を贈ってくれる」


久遠「お見事」

この場にいる全員から拍手が起こった。


宰川「さぁ、そろそろ花火が上がるぞ」


俺たちは何も言わず、夜空を見つめていた。

いや、花火を前に言葉などきっと必要ないだろう。


華城「おっ」

うちわで顔を扇ぎながら呟いた。

夏祭りの目玉、打ち上げ花火が始まった。


夜空に咲く花火の輝きに見入りながら、心の奥深くに眠る過去の思い出が、ふと目覚めるような感覚に包まれた。色とりどりの花火が舞う中、その一瞬一瞬に、懐かしい光景や温かな出来事が脳内を駆け巡る。

過ぎ去った日々の中には、喜びや悲しみ、希望や挫折が煌めき、花火の輝きを通してそれらの感情が今もなお心に灯りをともしていることを実感する。


約三十分にも渡る打ち上げ花火が終わった。


忠勝「僕、自分の人生大嫌いだったけど・・意外と悪くないのかも」


俺「良かったな」


忠勝「あのとき清次に殺されてたら、僕はこの花火も見れてなかったんだね」


俺「そりゃお互い様だ」

お互い殺される寸前で終わってるよなー。


京夏「このような機会を与えてくださり、ありがとうございます」

そんな俺たちにへりくだらないでいいだろ・・立場で言えば上だぞ?


宰川「気にするな。これからもよろしく頼むぞ」


伊海「何か困ったことがあればいつでもご相談ください。もちろん、私もまだまだ未熟ですが・・」


坂本「何か満足したら眠くなってきたな。このままここで寝ていいか?」


獅電「起きたら祭りのど真ん中にいるかもしれないが」


坂本「わかった。ちゃんと下で寝よう」

わかりやすい奴だよな、坂本も。

なんだか真栄田を思い出させるやつだ。口調も性格も似ている。

まぁ・・坂本の方が細身だし声も高いか。


霧島「俺たちは家に帰って寝ようぜ。明日はいよいよ売上対決の結果発表だ」


華城「今日は我も早めに帰ることにする。楽しい時間をありがとう」


久遠「おう! また明日な」


春日「気をつけて帰ってねー」


      *


 今日は宰川軍・・いや、蒼天幕府が夏祭りを開催しているらしい。

本当は参加したかったが・・流石にトラブルが起きそうだし、図々しいかと思って遠くから眺めるだけにしておく。


ストーンハート「こりゃあすげぇ・・」


パール「幕府はどのように経済を回しているのでしょうか・・かなりの余裕がないとこんなに大きな祭り、できませんよ!」


ウィリアム「負け知らずの軍だ。たんまり金や労働力があるのだろう」


私「羨ましい限りだ」


アストリア「別に僕たちも十分潤ってますよ・・」


ストーンハート「でも・・もっと金欲しいよなぁ」


アストリア「えぇ・・」


 打ち上げ花火が始まった。


ストーンハート「うおお!! きたぞ!!」


私「美しいな・・」


パール「カラフルですね・・現地で楽しんでる人たち良いなぁ~・・」


ストーンハート「お、乗り込むか?」


私「絶対にNGだ。ただでさえお互い意識しあっているタイミングなのだから余計な行動は控えよう」


ストーンハート「冗談だよ冗談・・」


私「そうだったか。すまない」


パール「団長ってなんか・・変ですよね」


アストリア「それ言っちゃうの!?」


パール「いや、本当に申し訳ないんですけど・・しっかりしてるのに何かふわふわしてるっていうか・・」


私「?」


ストーンハート「言いたいことは分かる。だが、それはコイツが居ない時に言おうぜ」


ディーゼル「団員に慕われている団長でも、近くに居れば綻びが見えてくる。人とは得てしてそういうものだ」

論理的だ。なんて返答すべきかわからない。


私「アハハハ」


ストーンハート「笑い事ではねぇだろ」


アストリア「父さんの悪いところですよ・・異常なお人好しで何でも笑って済ませちゃうの。組織のトップとしては完全アウトです」


リゲル「オレは人当たりの良さも大事だと思いますよ! 結局、トップは信頼が全てですから。『この人、いい人そう』って直感的に相手に思わせるのは一つの強みじゃないですか?」


私「リゲルは優しいな。ありがとう」


リゲル「頭撫でるのはナシです」

リゲルは二番隊隊長である。

元々はかなりの荒くれ者でしょっちゅう捕まっては解放されを繰り返していたが、最後のチャンスとしてパールが術を学ばせたところ、才能が開花した。

そして幸福なことに、リゲルは私たちをとても尊敬してくれている。

やはり人は成長していくものだ。成長するからこそ人と呼べるのかもしれない。

私もいい方向へ変化し続けなければ・・


 ラストの大きな花火が上がり、打ち上げ花火はフィナーレを迎えた。


アストリア「綺麗でしたね」


パール「それで、星武の乱はまだなんですかね?」


私「あれ以降話に出ていない。おそらくまだ近くには訪れないだろう」


ウィリアム「このまま()()()()になってしまうのは最悪のパターンだ。準備はこちらも絶やさず続けなければ」


ストーンハート「そうだな・・・・」

伸びをしながら言った。


私「勝つのはきっと私たちだ」


      *


 朝起きて広間でぼーっとしてると、とてつもない勢いで家の戸を叩かれた。


久遠「おーい!!」


俺「今開けるから!!」


久遠「至急、城に集合だ!」


俺「いっつも急すぎるって! 内容は!?」


久遠「街に殺人鬼が現れた! 以上! すぐに来い!!!」

戸を閉められた。


俺「ったく・・こういう日に限って真っ先に俺が起きるんだよな」


とりあえず剛斗を叩き起こした。


剛斗「何だ!」


俺「城へ今すぐに集合だとよ。皆を起こすのを手伝ってくれ」


剛斗「任せとけ!」

起きてすぐなのに元気だな・・・・


 皆に説明し、家を出発した。


華城「殺し屋か・・何人ほど殺しているか分からないが、気をつけるべき相手なことは間違いない」


俺「斬っちまえば終わりじゃないのか?」


華城「おそらく反社会的な組織の一部だ。他にも殺し屋は町にうじゃうじゃいるだろう」


俺「畜生・・」


霧島「元万引き常習犯が責めることはできないんじゃねぇか?」


俺「あれは・・やむを得なかった」


雷煌「その話はやめましょう。大事なのは今ですし、清次さんもきっと反省してます」


霧島「まぁな・・とりあえず、殺し屋こらしめて町に平和を取り戻すぞ」


将英「このまま町の秩序が乱れていくと全ての面に悪影響を及ぼす。早急に対処しよう」


 城に着くと、大広間で伊海が青ざめていた。

町はそんなにまずい状況なのか・・?


宰川「既に殺し屋が街に現れたことは伝わっていると思うが、伊海から詳細を手短に説明してもらう」


伊海「今回、ほぼ同時に五か所で遺体が発見されました。しかも全て民家ではなく店です」


久遠「店をやっている人を殺したほうが町や社会への影響は大きい。それも踏まえて、おそらく今回の事件は個人で行われたものではないな」


華城「やはり、何かしらの反社会的組織が動いている可能性が高い」

反社ねぇ・・・・存在を知ってはいたが、街中に武士がうじゃうじゃいる中、刀を持つことが許されてない連中が事を起こすのは容易ではないと踏んでいた。


俺「そんで、俺たちは何をするんだ? そいつらを殺すか?」


宰川「殺さない。身柄を拘束し、組織について情報を吐かせる」


坂本「そうやって簡単に言うけどよ、出来んのか? 反社とかそういう奴らって上下関係とかとんでもねぇし・・死んでも情報は言わないかもしれねぇぞ」


華城「であれば殺すだけだ。とにかく事件の起こった場所へ行こう」

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