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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
幕府編

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九十五話 夏祭り

 天下統一から二ヶ月半。夏祭りの準備も終盤に差し掛かっていた。

今、俺たちは爲田城の大広間で雑談をしている。


霧島「ここでいっちょ、屋台の発表といきますか」


俺「そうだな! 正直、俺の店の完成度は馬鹿にならないぞ」


翔斗「楽しみだな」


華城「時計回りに発表しよう。まずは我から」

華城、どんな店をやるんだろうな・・

ていうか、屋台に立っている華城を想像できない。お祭りとは程遠い男だ。


華城「我の考えた究極の楽しくて可愛くて素晴らしい店。その名も『金魚すくい』だ」


霧島「金魚・・すくい?」


華城「金魚は知っていると思うが、それを、この『ポイ』と呼ばれるものですくうんだ。獲得した金魚はそのまま持ち帰って飼うことが出来る」


雷煌「ポイ・・可愛いですね」


俺「それ、どうやって手に入れたんだ?」


華城「この前訪れた町の商人に頼んで調達してもらった。もちろん金は失神するほど渡した」

どういう人脈なんだ・・? 

まぁ、老中に頼まれたらやるしかないか・・金ももらえるし。


了斎「わしは『射的屋』をやろうと思ってる」


全「おー」


了斎「以前、花火づくりのときに出会った職人に威力の弱い銃を作ってもらった。じゃじゃーん」

しょぼい銃が出てきた。


霧島「こんなんじゃ人を殺せねぇぞ」


了斎「これは殺しの道具じゃない! 見ろこれ」

紐のようなもので撃っても弾が飛んでいかないようになっている。


了斎「これで繰り返し撃つことが出来る。そして、景品に当てて落とすことが出来たら獲得だ」

面白そうだな。


剛斗「風刃術でイカサマしようぜ!!!」


了斎「不正が発覚した場合、店主が処刑すると看板に書いておく」

やりすぎだ。


俺「俺は『削氷屋』をやる」


翔斗「削氷って・・あの高級な?」


俺「それだ。どうだ? 想像するだけでよだれが出てくるだろ」


了斎「ちょっと、翔斗。よだれ垂れすぎ」

食いしん坊め。


華城「あれをどうやって大量生産する?」


俺「彰の氷槍術を活用するんだよ。氷槍についた氷を削ぎ落として削ることで作るんだ。天才的だろ?」


霧島「なんか汚いな」


俺「大丈夫、新品かつ洗った槍を使う」


霧島「そういう問題じゃねぇけど」

食ってみれば分かるさ。削氷の素晴らしさ。

何度か味見で食べているが、その度に気絶しそうになっている。頭痛で。


将英「オレは『空を飛んでみよう』という体験会のような店をやる」


全「え・・・・」


将英「どうした?」


俺「悪い、もう一回聞いていいか?」


将英「『空を飛んでみよう』だ」

聞き間違えじゃなかったか・・・・


俺「んで・・内容は?」


将英「オレが持ち上げて辺りを走り回るんだ。子供に大人気になるに違いない」

可愛い発想だ。将英の優しさが滲み出ている。


火蓮「妾の店は所謂、風俗て」

華城が顔をひっぱたいた。そりゃあそうなる。


華城「子どもも参加するお祭りだ。今すぐに内容を変更するように」


火蓮「繁盛すると思ったんじゃが」


俺「そりゃあするだろうけど・・して嬉しいか?」


火蓮「全く」


俺「じゃあやるな」


翔斗「おいらは飯屋をやる。美味い飯をとことん提供するぞ」

翔斗らしいな。


俺「遊んでばっかだと腹減るもんな。そういう店も大事だ」


雷煌「僕は『武士体験』のお店をやります!」

武士体験・・前の祭りでもやってたな。


雷煌「子どもが興味を持ってくれるかなと思って・・竹刀を振って人形を倒す、みたいな感じにするつもりです。やり方は僕が教えます。僕も子どもなんですけど」

雷煌も客だと勘違いされそうだな。


霧島「楽しそうだな」


剛斗「最後はオレだな!!! オレは『漢の我慢比べ大会』を主催する!!!」

これまた一風変わったことを・・・・


俺「何で比べるんだ?」


剛斗「燃える炎のそばで最も熱さに耐えれた漢こそ最強の漢だ!!!!」

頭悪っ!!!


華城「競技自体は面白そうだが・・・・危険じゃないか?」


久遠「オレが協力して安全確保はバッチリだぞー」

遠くで宰川殿たちと談笑している久遠さんが言った。


俺「なら安心か」


剛斗「もちろんオレも参加する!!!」

すんなよ。剛斗が勝つじゃん。


俺「結構、面白い夏祭りになりそうだな。花火はどんな具合だ?」


華城「この前確認してみたが、正直、我も驚くほどの量とこだわりだった。楽しみにしておこう」


霧島「提案なんだが・・・・」


華城「どうした?」


霧島「花火が始まる前に店を閉めて、皆で一緒に花火見ねぇか?」

霧島らしからぬ提案だ。


華城「我は構わんが・・」


俺「俺もいいぞー」

皆が笑顔で頷いた。


華城「獅電殿たちも誘っておく。多ければ多いほど楽しいだろう?」


霧島「・・やったぜ」


一週間後の祭りが楽しみだな。


      *


 さてと・・・・

正直、昨晩は全く眠りにつけなかった。

祭りが楽しみすぎて。


俺「おはよー」


霧島「今日は早起きだな」


俺「流石に祭りの日はそわそわしちまうよな」


霧島「分かる」


華城「おっはよー」


俺「今日は朝から機嫌いいな~」


華城「そんなことない」


俺「今日は花火の時間になるまで別行動だからな。お互い頑張ろうぜ」


華城「ああ。売上での勝負も忘れないように」

きっと、俺が勝つだろうな。


全員が起きた後、朝飯を食べて浴衣に着替えた。


俺「おぉ・・・・」

一人ひとりに似合う浴衣を作ってもらったので、全く違和感がない。


了斎「霧島の浴衣、格好いいな」


霧島「了斎だって」


俺「剛斗のそれは・・浴衣と言えるのか?」


華城「はだけ過ぎだ」


俺「どうせなら美女にそういう浴衣を着て欲しい・・」

了斎に股間を蹴られた。


俺「ああっ!!!!!」

しばらく俺は床に倒れて悶え苦しんでいた。


将英「華城も似合っているな。大人っぽさが出ている」


華城「ありがとう」


 それぞれ、自分の店のところへ散った。

俺の削氷屋は店員を四人雇っている。

そして、削氷製造員の彰だ。


彰「今日はよろしくお願いします!」


俺「今日はかなり大変になると思うけど・・よろしくな」


店員「はい!」


俺「あ、あと金はしっかりと取れよ。『持ってないんです・・』とか抜かすやつは容赦なく帰らせろ。しぶといやつだった場合は俺は対応する」


店員「了解しました!」


祭りが始まるのは昼の一時。花火が始まるのは九時。

八時間の労働だ。立ちっぱなしはそこそこ疲れるな・・・・


店員「容器、足りますかね・・」

一応、千個程度の紙の容器を提供してもらった。

繁盛したら足りなくなる可能性は無きにしも非ず。

まぁ、そん時はそん時だ。


 現在十二時五十分。人通りも増えてきたな。


春日「こんちはー! 今、店やってますかー?」

能天気なアホが来た。


俺「まだ開店前だぞー」


春日「じゃあ、私もう並んどく。一人目の客は私ね!」


彰「ありがとうございます!」


開店時間になり、削氷を作り始めた。


店員「甘葛をかけて・・と。どうぞ!」


春日「ここで食べて良いー?」


俺「普通、祭りの時は歩きながら食べるんだよ・・・・」


春日「味の感想、清次に伝えたいし」

それは俺も聞いてみたい。


俺「食い終わるまでこっち居ていいぞ」

屋台の中に入れた。


春日「かーっ! 頭痛っ!!!」


俺「一気に食べるとそうなるんだ。大丈夫、すぐに治まる」


春日「それにしても、美味しいもの作るね~」

いきなり高評価だ。


彰「人気、出ると思いますか?」


春日「でるでる! 繁盛すると思うよ~!」


俺「んじゃ、祭り楽しんでこいよー」


春日「ありがと! また来る!」

もう一個食べるつもりなのか。


      *


 祭りは楽しみたかったので、俺たちは昨日、今日の分の仕事を済ませておいた。

俺・獅電・久遠・伊海・右京・坂本の六人でいろいろと巡ってみることにした。


久遠「とりあえず、同期組の店を見に行こう。結構みんな頑張って準備していたからな」


俺「そうだな」


坂本「結構並んでるな・・人気店なのか」


清次は削氷屋をやっているようだ。


俺「削氷を六つ頼む」


店員「削氷が六つですね・・六十刻になります」

六十????


久遠「高っ! 清次ー! これボッタクリじゃないかー?」


清次「どうせ金持ってんだからちゃんと払えよー! 少なくともこの価格で文句は言われない味だからな」


俺「釣りはいらない」


一人ひとつ削氷を受け取り、近くに腰掛ける場所があったので座って食べた。


獅電「美味い」


坂本「うんめぇなこれ」

削氷。初めて食べたが、これほど魅力的なものだったとは・・・・


伊海「確かに、これは多少高価でも納得できますね」


右京「この熱い中、どうやって氷を保管しているんだ?」


俺「彰が店の中に居た。おそらく氷槍術を使って氷を作っている」


右京「なるほど!」


了斎の射的屋は完全に獅電の一強だった。


了斎「何でそんな当たるんだ・・?」

店員も困惑する命中精度だった。


一人五発だったんだが、


俺「俺が景品なし、獅電は四つ、久遠も一つ、伊海は景品なし、右京も景品なし、坂本は不正発覚で景品なしか・・・・散々だな」


獅電「坂本以外には一つずつ分けるよ」


伊海「ありがとうございます!!」


 次は華城の金魚すくい?らしい。


華城「この紙は破れやすいから気をつけて」

小さな桶を受け取り、挑戦開始だ。


俺「あっ」


伊海「あぁ・・」


久遠「無理だこれ」


右京「これ、取れた人いるのか?」


坂本「取らせる気ねぇだろ!!」

不満の声が飛び交う中、獅電がどんどん金魚をすくい上げていた。


華城「獅電殿はやり方を理解しているようだ」


獅電「端の部分を使うんだ。真ん中は破れやすい」

なるほど・・・・


結局、獅電は十匹すくい上げた。


獅電「別に金魚は欲しくないから返却する。ありがとう、楽しかったよ」


店員「ありがとうございました!」


将英と剛斗と雷煌は店ではなく実践系だったので、軽く会話を交わして店を離れた。


久遠「噂によると、火蓮の店がなかなか攻めているらしい」


右京「嫌な予感が」


 火蓮のいる店を見つけたが、特に何も売られていなかった。


久遠「火蓮、ここは何をやってるんだ・・?」


火蓮「休憩所じゃ。くつろいでいいぞ」

攻めているとは?


坂本「何だそれ! 店やらないのか?」


火蓮「元々はやろうと思ってたんじゃが、先週になって華城たちに駄目と言われてしまった」


右京「そうだったのか。何をするつもりだったんだ?」


火蓮「風俗店じゃ」


俺「駄目と言われて当然だ」


火蓮「もう少し早く教えてほしかった・・さすがに一週間で新しい店は準備できんじゃろ」

それもそうだが。

足も疲れてきていたので少し休み、翔斗の店に向かった。


久遠「翔斗ー!」


翔斗「来てくれたのか! 好きなものを食べてっていいぞ~」

屋台っぽい飯を色々と売っているらしい。腹も減ってきていたし丁度いいな。


店員「ご注文は?」

各々好きなものを頼んだ。


翔斗「一応売上で勝負しているから、代金は頂いてもいいか?」


俺「もちろんだ」

お金を払い、俺たちは食べ歩きをしながら祭りを楽しんでいた。


獅電「あっという間に夕方か。城に戻って花火を見る用意でもするか?」


俺「そうだな。十分店も回ったし良いだろう」


 城に戻り、天守閣の最上階にやってきた。


久遠「ここに来たのは久しぶりだな・・相変わらずいい眺めだ」

見渡すと、祭りの規模の大きさを実感できる。


獅電「高さ的にも距離的にもここが良い。しかもこれは俺たちしか入れない特等席だ」


坂本「ありがてぇもんだ」


俺「精鋭のほとんどは店が終わり次第ここに集まる。飯や飲み物の準備もさせておこう」


花火を最大限楽しめる装備を整え、俺たちは夜が訪れるのを待った。


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