九十四話 蒼い空
朝起きると、俺は自分の部屋の布団で寝ていた。
俺「ん・・??」
城で飯を食った後、そのまま大広間で寝たはずだ。どうして俺の部屋に・・?
酒なんて飲んでないから記憶がないわけでもあるまいし。
とりあえず広間に行ってみるか・・
広間に戻ると、霧島が一人であぐらをかいてくつろいでいた。
俺「おはよう」
霧島「おはよ。なぁ、俺たちって家に帰ってきてたか?」
俺「きてないはずだ。城でそのまま寝たよな・・?」
霧島「おう・・」
華城「皆が寝たあと、久遠殿が大広間でがっちりと吐いた。掃除のために我らは家まで運ばれたんだ」
霧島「なるほど・・もうあの人に酒を飲ませるのやめないか?」
華城「伊海殿が数時間、待機室に連れ込んで説教したらしい。流石に懲りただろう」
あの伊海にしっかりと怒られるって・・よっぽどだぞ久遠さん。
俺「がっちりとって・・具体的にどんな感じだった?」
霧島「おい、そんなこと聞くな。気味悪い」
華城「歩きながら吐いてたからな・・量というよりは範囲が常軌を逸していた」
霧島「おい・・想像しちまったじゃねぇか」
霧島が口を押さえた。
俺「今日は朝飯抜きでいいわ。昨晩いっぱい食べたし」
華城「同感だ」
全員が起床して広間に集まると、時刻は八時を回っていた。
華城「今日は十時に城へ集合だ。まだ時間に余裕はある」
翔斗「どうする?」
華城「蹴鞠でもするか?」
雷煌「貴族じゃないんですから・・」
結局、俺たちは近場の銭湯に行くことにした。
将英「金は持ったか?」
了斎「わしが持ってるー」
俺「せっかくだから忠勝たちも誘おうぜ」
将英「急では迷惑じゃないか?」
俺「良いじゃん、裸の付き合いだよ」
道場の隣に二人は暮らしているらしいので、そこへ寄ってから戦闘に行くことになった。
忠勝「朝から何ー?」
俺「銭湯に行こう」
忠勝「えー・・歩くの面倒くさいし、遠慮しとくよ」
俺「俺がおんぶするから」
忠勝「片腕しかないのに無理があるでしょ」
直政「おはよう、用事か?」
俺「直政さんがおんぶして、忠勝を銭湯まで連れて行こうっていう話でさ」
直政「良いね、行こうか」
霧島「通るのかよ・・」
忠勝「やったー」
十一人で銭湯まで来た。
受付「やあ、何人だい?」
将英「男子が十人と・・女子が一人」
雷煌「火蓮さん、良いんですか? 一人になっちゃいますけど」
火蓮「一人でゆっくりと入るのも良いものじゃ。気にしないで良い」
春日とか羽音も誘うべきだったな・・一人で入らせてしまって申し訳ない。
美月が居なくなって、同期組の女性は火蓮のみになってしまった。
火蓮も身体が女性というだけだが・・このあたりは少し複雑だな。
了斎「これで足りますか?」
受付「はい、毎度あり」
服を脱ぎ、俺たちは風呂に入った。
俺「俺たち以外に人居ねぇな・・」
将英「まぁ、時間も時間だからな。朝風呂とも言えない中途半端な時間だ」
現在時刻は九時。確かに朝とも昼とも言えない。
直政「癒やされる~・・」
直政の顔が緩んでいる、初めて見たかもしれない!
霧島「おい雷煌、風呂の中に電気流したらどうなるんだ?」
華城「やめろ、全員が感電するだけだ馬鹿」
雷煌「やってみますか?」
華城「やめっ・・」
全「うぁぁ!!!」
体に鈍い痛みが走った。
俺「何でやったんだよ!!」
雷煌「まあ、それほど強くない電気にしたので・・大丈夫かなぁって」
こいつ・・・・
翔斗「華城ー?」
華城「話しかけないでくれ」
怒っちゃったじゃん。
雷煌「ごめんなさい華城さん」
華城の方を向き、上目遣いで言った。
罪なやつだな・・自分が容姿端麗であることを自覚している。
華城「・・いいよっ」
直政「華城ってすごい知的だしずっと真剣な感じだけど、普段はこういう立ち位置なの?」
了斎「霧島と清次がいじり過ぎってだけだ」
俺「愛の鞭だって!」
直政「もちろん、それは理解しているが・・意外だな。なんとなく華城は近寄りがたい雰囲気があったんだ」
確かに、基本静かだし怖いし頭いいしな・・
住んでいる世界が違うのかもしれないと思うことは多々ある。
俺「華城、すげぇ良いやつなんだよな。実は仲間思いだし・・」
華城「そろそろ上がるか。気持ちよかったな。お風呂」
将英「ああ」
忠勝「あれ、照れ隠し?」
耳打ちしてきた。
俺「華城は褒められるといつもこうなんだ」
少し長居してしまったので急いで城に向かって移動を開始したが、結局・・・・・・
獅電「お前ら、現在時刻を言ってみろ」
あー・・絶対怒られるな~・・
俺「十時十二分です」
獅電「遅れた理由は?」
俺「皆で銭湯に行ってました」
獅電「何故俺たちを誘わなかった?」
そこじゃなく無いですか?獅電さん。
霧島「獅電さんたちは忙しいと思って」
久遠「今回の遅刻は許そう。しかし、銭湯などの外出をする場合は必ずオレや獅電も誘うように」
えぇ・・?
遅刻組「はい!」
俺「久遠さん、ここで吐いたって本当ですか?」
久遠「えっ・・」
全「あっ」
宰川「伊海からこっぴどく叱られた上に、久遠は三ヶ月禁酒をすることに決まった。そのことは忘れてやれ」
俺「はい!」
自業自得だ。久遠さん。
それぞれ自席につき、普段通り大広間での会議の形になった。
今日集まったのは、宰川軍幹部・忠勝・直政・濃霧衆・坂本・京夏だ。
ちなみに、真栄田軍や伊海軍は宰川軍に含まれている。
宰川「早速会議を始めよう。国を作るにあたって決めることが山ほどあるから、テキパキと進めていくぞ」
獅電「まず国名」
華城「国と言っていたが、武家政権のため、この地や政庁は幕府となる。幕府名は『蒼天幕府』とさせてもらう。意味が気になるものはこの後我に聞いてくれ」
あとで聞くと、『蒼天』は洗練潔白の印象を与え、高い権威を示すと言っていた。
まぁ、名前が格好いいから俺は大賛成だ。
宰川「久遠、助かった。ここにあまり時間をかけたくなかったからな・・次に、各役職の任命を行う。ちなみに役職は過去の武家政権の役職をなぞって設置する予定だ」
ついにだな・・
宰川「まず、征夷大将軍はこの俺、宰川上午とする。しかし、宰川軍総大将であることに変わりはなく基本的には今まで通りだ」
拍手が起こった。
まぁ、王になったからと言って宰川殿がふんぞり返ることはないだろう。
宰川「そして老中。政治全般を担い、幕府の政務を統括する最高職だ。これは華城・伊海・直政・右京・獅電が務める」
異議なしだ。しかし、華城はこの若さで最高職とは・・・・やはり化け物だ。
体だけが心配だな・・あまり働き詰めないで欲しい。
華城「もちろん軍の参謀だから作戦の立案は今まで通り行うよ」
過労死するぞ・・
宰川「幕府直属の軍は、宰川軍・伊海軍・坂本軍の三つだ。真栄田軍や梶田軍が独立していない理由は色々とあるんだが今回は割愛する。宰川軍に含まれているということは覚えておけ」
宰川「次に若年寄。主に老中を補佐する役職だ。これも忙しいものになるが、坂本・京夏・忠勝・久遠が務める」
納得だ。坂本も手腕だけは確かだから頼りになるだろうな。
宰川「三奉行など他の役職は豪の兵士やその他実績のある兵士たちに凜花が伝える。この場にいる者の役職は以上だ」
俺「俺たちは引き続き軍の幹部って扱いなのか?」
宰川「ああ。お前たちに仕事を任せることは少ないだろう。事務などはやっぱり年齢の高い者がやるべきだ」
華城「幕府となったことでまた組織が増えてややこしくなったが、あまり気にしないでくれ。兵士の数も馬鹿にならないから一人あたりの仕事量はさほど多くないと思われる」
宰川「何より、俺たちの頭がこんがらがってしまうんだよな・・」
しっかりしてくれよ・・征夷大将軍って役職の責任は今までとはワケが違うだろう。
獅電「星武の乱はいつ仕掛けるつもりだ?」
宰川「まだだ。武器や場所等諸々準備が整ってから話をしに行く」
その後も会議は数時間続き、今後の日程や仕事内容など眠たくなる話が行われた。
宰川「では、国を作るというのはこれで一段落となる」
伊海「皆様、本当にお疲れ様でした」
ほんとに疲れたな・・戦はこれで一旦やめるって感じか。
もちろん鍛錬は続けるけど。
宰川「そして良いお知らせがあってな・・」
俺「何だ!?!?」
霧島「お前、そこだけ食いつくな・・」
宰川「旧与根川軍防衛戦のあと、祭典を行うと言っていただろ?」
まさか!?
宰川「ここで一つなにか催し物をしたいと思い、華城や獅電と相談していた。そして・・六月に、最大規模の祭りを開催する」
全「うおおおおおおおおお!!!!!」
獅電「俺たちと祭典は切っても切れない関係だろう?」
全「うおおおおおお!!!!」
待ってました!!!!
六月ってことは・・今度はしっかりと夏祭りだな。既に楽しみで仕方ない。
華城「五月に入ったら花火や屋台など、たくさんの兵士に協力してもらい、祭典の準備を進めていく予定だ。楽しみなのは我らも同じだが、あまり浮かれすぎず、仕事はしっかりとこなすように」
全「はっ!!!」
会議が終わったあと、俺たちはそわそわしながら家に帰った。
普段着に着替えて広間に戻ってくると華城が
華城「ちなみにだが、お前らも祭りを楽しめると思うなよ。我らは運営する側だ」
全「えっ?」
俺「霧島、自決用の刀あるか?」
華城「早まるな。運営側も面白いものだぞ。我ら同期九人で屋台を一つずつ開き、最も人を集めたら勝ちだ」
全「乗った!」
どうしようかな・・この前聞いた削氷ってやつをやってみるか・・?
削氷は貴族しか食べられないような高級品らしいが、彰の氷槍術を活用すれば大量生産も出来そうだ。
よし、もう俺の勝ちは決まったようなものだな・・
※削氷=かき氷
将英「まぁ、実際に祭りの準備が始まるのはもっと先だ。それまでになんとなく店の構想を立てておこう」
火蓮「そうじゃな」
今度、彰に相談してみるか。
霧島「んで、どうなんだ? ちゃんと経済は回ってんのか?」
霧島がそういう真面目な事を言うと違和感がある。
華城「多少我らが手を加えただけで、元々経済はうまく回っていた。飢饉が起きたり、税負担への不満などが募らない限り社会不安は起こらないだろう」
霧島「だったら良いけどな・・」
*
僕「さっき手紙が届きました。宰川軍が天下統一を達成して幕府を作ったそうです」
星武の乱も近づいてきた感じがする。
レオナード「そうか。まぁ、彼らなら成し遂げると思っていたよ」
ストーンハート「アイツらと戦いたくねぇな・・絶対強いし、負ける気してきたわ・・」
僕「元も子もないこと言いますけど、僕たち宰川軍と戦う必要あります? 正直今の敵対していない関係が一番だと思っているんですけど」
レオナード「それは・・あちらの出方次第だ」
ディーゼル「逃げれば一つ、進めば二つだ。宰川軍に勝つことで得られるものもたくさんあるだろう」




